上 下
35 / 57

明かされる真実と直接対決

しおりを挟む
 俺は21時にある場所に向かう。予想通り、そこには人影があった。
「やっぱりか……エリス」
「…… やっぱりバレちゃったか。なんでわかったの?」
 いつも訓練に付き合っていた岡の上には、楽しそうなエリスがいた。

「まずミオ本人ではない誰かが動いているのは確実だ。ミオがそれほど上手く嘘をつける様子はないし、ミオ本人にしては行動や発言が不審すぎる。

 そして、今回の件では殺意は感じなかった。おそらく純粋に話しをしたかった、声をかけたかった、手紙を渡したかったという気持ちだけだろう。

 見た目はミオにそっくりだった。そこから候補はミオとそっくりなミオの姉達と考えていたわけだ。ただ、ミオの姉達は怪しげなミオ?に話しかけられた時点ではまだ会ったことはなかった。会話もしたことがない相手に話しかけられるとは思えないため、現実的に考えて選択肢にはないだろう。そして話をした感じもミオ?と一致しない。この時点で犯人ではないと判断した。

 そこで残る可能性は…… 変装だ。しかし本人にそっくりな変装をするなんて怪盗でもない限り難しいだろう。そこで俺は自身に掛けられている魔法「変身」を思い出したわけだ。可能性はアリエッサの魔法で変身したヘッズオブラウンジの4人。この中で話し下手という特徴と、「集合場所を指定できる」思い出の場所があるのはエリス一人だ。

 そしてエリスは最近サクラに戻ってきたのでタイミング的にも一致する。ということでアリエッサにエリスに変身魔法をかけたか聞いたらあっさり認めた、というわけさ」

「なるほど……。やっぱりカミトはすごいね。私の自慢の師匠だよ」
 エリスは嬉しそうだ。
「久しぶりに帰ってきたらカミトが別のチームに入って楽しそうにしていて…… しかも毎日カフェに入り浸って女の子と仲良くしてると聞いて嫉妬しちゃった……」
「まあ、楽しんでいるのは事実だが…… どっちのチームも俺にとっては大事だぞ。ヘッズオブドラゴンは俺のチームだよ」

「それがわかってよかったよ。…… それで今日のお願いは、わかってると思うけど久しぶりに本気で勝負がしたい。お互い魔法禁止で……どう?」
「ああ、そんなことだろうと思った。いいぞ」
 エリスから訓練用の剣を渡される。なんだかんだで忙しかったから久しぶりの対戦だ。LV10になってからは初めてか?

「じゃあ始めるね。まずは先手ということで……」
 自己加速魔法なしでエリスが弾丸の速さで突っ込んでくる。相変わらず凄まじいな。
 左を攻めたと思ったら右に切り替わり、突いたと思ったら後ろに逃げ、変幻自在な剣技を披露するエリス。厄介な点は、エリスの剣は決して軽くはないということだ。訓練用の剣とはいえ一撃でも喰らうとかなりの衝撃を受けることになる。そしてそれによって生じる隙をエリスは見逃してくれないだろう。

 魔法なしだと全ての攻撃に対応しないといけないので神経を使う。俺は一つ一つ確実に捌きながら前進する。

「相変わらず壁と戦っているみたい……」
「こっちは必死だけどな。さて、じゃあ次はこっちのターンだな」

 俺は攻撃にシフトする。リズムを刻みながら剣を振り下ろす。必死で防御するエリスに剣をふるい続ける。
「馬鹿力は変わらずね……」
「まあな。これが龍でも切れる剣さ」

 俺は隙を与えないように切りつけ続ける。しかし有効打はまだ与えられていない。
「守ってばかりだと勝てないぞ。どうするんだ?」
「うーん…… こうする」
 ごっ。エリスが見舞ってきたのは鋭い蹴りだった。避けきれず腹で受け止める俺。予想外の一撃に驚きを隠せない。

「どう……? 新しい技」
「いいものを見せてもらったよ。俺も真似させてもらおうかな」
 蹴りで生まれた距離を縮め、激しい撃ち合いが始まる。ほぼ互角の戦い。
 そしてお互いに蹴りやパンチを加えるようになり、殴り合いの様相になる。

 30分が経過し、俺はこれ以上戦っても決着はつかないと判断した。
「ふう、まあこれくらいにしておこうぜ」
「そうね…… 楽しかった。流石師匠……LV3になっても腕は落ちてないね」
「まあ、そのあたりは気をつけてるよ。とりあえず帰ってアリエッサにヒールをかけてもらうか。疲れたな」
「そうしよう……」
 俺達は拠点に戻る。

「ねえ、明日デートしてくれない……?」
「おお、いいぞ。どこに行きたいんだ?」
「内緒…… 明日ついてきて」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行
ファンタジー
 ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~

草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★ 男性向けHOTランキングトップ10入り感謝! 王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。 だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。 周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。 そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。 しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。 そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。 しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。 あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。 自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。

処理中です...