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謎のミオ

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 次の日は、夢の羽で午後から軽いクエストを受けようという話になっていたため、俺は銀の雫で朝ごはんをゆっくり食べる。
「昨日、白の美剣士ことエリスさんがサクラに戻ってきたそうですよ。すごい話題になってました」
「エリス?」

 俺は、知らないふりをする。最近サクラに来た設定を忘れては行けない。しかしあいつ、有名人だな。まあ無理もないか。
「ああ、カミトさんは最近サクラに来ましたもんね。えっと、ヘッズオブドラゴンというチームに所属するLV9の女性です。剣の達人で、噂では剣勝負で勝てるのはLV10のカミトさんだけらしいです」
「へーそうなんだ。強いから有名なの?」
「すごい美人でスタイルも良くて、しかも剣は最強というのが格好良くて人気なんですよ。ファンクラブもあるようですよ。私も去年の武闘会で直接見る機会があったんですが、大男を軽々吹っ飛ばしてましたよ。もう一目惚れでした」
「へーそんなに強いんだ。LV9かあ。いつかはそこまで到達したいね」
「まあLV8を超える冒険者は本物の天才らしいですからね。無理せず行けるとこまでで良いと思いますよ。でも応援してますね!」

 確かにLV8に到達する冒険者は極めて少ない。LV9になると現状4人しかいないが、8もそれほど多くはない。時間をかけたからといって到達できるレベルではないようだ。俺がLV8に上がった時、ギルド長が「これでサクラにLV8が増えた」と大喜びしていたのを覚えている。

「ありがとう。ちなみに武闘会って何?」
「毎年秋にあるイベントなんですが、世界中の強者が集まって最強を決めるイベントです。去年はエリスさんが優勝してます。今年は出るならカミトさんかなあ。あ、LV10の人です」
 」

 こちらも知らないフリをしているが、サクラで有名なイベントだ。世界中から冒険者などの力自慢が集まって、トーナメント形式で勝負をするイベントである。なおアリエッサは「興味がない」と毎回拒否している。エリスと対決するとどっちが勝つのかは注目だが…… どっちを応援しても、どちらかが機嫌が悪くなるリスクが高いため出なくて良いだろう。俺は昔は出たことがあるが、去年は出場を見送った。LV10が敗北すると洒落にならないから、領主からも万が一を考えてストップ要請が出ている。表向きの理由は「強すぎて勝負にならないため」だが、何があるかはわからないからな。俺もプレッシャーが重すぎるので出たくはない。

 さて、冒険者ギルドに行くか。

 今日のクエストはオーガを2匹討伐するという簡単なクエストに決まった。午後だけで稼働できる依頼は限られている。その中で1番コストパフォーマンスが良い依頼を受領することに決めたのだった。

 ギシッ。俺とライエルが剣で切りつけ、オーガの攻撃はマルクが盾で防御する。そして一通り攻撃が終わるとオーガから離れ、アズサがアローで攻撃を行う。この一連の流れは日々洗練されてきており、無駄がなくなったきた。一度マルクが防御に失敗した時があったがその際には俺とライエルがオーガを引きつけ、その間にアズサがヒールで回復させる。チームランクはまだ1だが、もう2に近づいていると言っても問題がないレベルだろう。

 クエストを問題なく完了させ、解散する。俺はまた真っすぐ家に帰る。すると、
「カミトさん?」
 後ろから声をかけられる。そこには私服姿のミオがいた。普段のカフェの制服姿とは異なり白いワンピースで可愛らしい。
「おお、ミオじゃん。どうしたの?」
「……えっと……」
 なぜかいつもの元気さがない。いつもなら笑顔で「XXです!」とすぐ返してくれるんだけどな。
「仕事はもう終わったの?」
「……うん。今日は早めに帰ることにした」
「体調が悪いのか?」
「そういうわけではない、よ……?」
 どこか様子がおかしいミオ。体調は悪いわけではないのに早帰りとは何かあったのだろうか。
 心配になるが、顔色が悪いなどの様子はない。
「体調悪いのか? 家まで送ろうか?」
「……大丈夫です。今日のことは内緒にしてくださいね!」

 急にそう言い残すと、ミオは走り去っていった。なにを内緒にするんだろう? そして何だったんだ……? 俺は不思議なミオの様子に戸惑いながら、家に帰るのであった。まあ帰ったらすぐヘッズオブドラゴンのチーム会議だけどね!
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