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クエスト打ち上げとアリエッサの嫉妬

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 それから一時間。俺達はもう1匹のオーガを撃破した。2回目のオーガということで、チームワークも問題ない。遠距離攻撃、近距離攻撃の組み合わせで難なく撃破することに成功した。

「よし、討伐証明部位も回収したぞ。これでクエストはクリアだな」
 上機嫌な様子でライエルが言う。このチームでの初めてのクエストはオーガが2体現れるという予想外な展開もありつつ、無事に完了することができそうだ。俺達は急いで冒険者ギルドに戻った。

「はい、確かに依頼通り、ゴブリンとオークとオーガの討伐証明部位を確認しました。また、オーガの肉についても受け取らせていただきます。これにて依頼は達成です。お疲れ様でした。こちらが規定の報酬になります」
 依頼窓口にて、クエストの完了を確認してもらう。これがこのチームでの初報酬か……それほど多いわけではないが、初めてもらうお金というものにはテンションが上がるものだ。10年前を思い出し、俺は懐かしい感覚に喜びを感じた。

「よし、じゃあクエスト達成記念に打ち上げをしよう!」
 マルクが声を張り上げる。確かに打ち上げはいいかもしれない。俺達は頷いた。
「僕、いい店を知ってるんだよ。今からそこに向かおう」
 マルクの案内について行くと、そこにはたくさんの者で溢れかえる居酒屋があった。
「この店は冒険者御用達で、安くて美味しいご飯がたくさん食べれるから人気なんだ。お腹もぺこぺこだし、ちょうどいいかなって」
 おお、居酒屋か。テーブル席に座るのかな?俺が普段行く時は個室ばかりだったが……流石に金額的に個室は難しいだろう。予想通り空いているテーブルにマルクは腰掛けたので俺達も座る。

「いやー疲れたね。オーガ2体は本当勘弁してほしいよ。いくら動きが遅いといっても防御するのは神経を使うんだよね」
「マルクは大変だったよね。私は遠距離攻撃だったから気楽だったわ。ただ味方に当たらないようにするのには気を使ったけど」
「とにかく最初から不幸なことが起きなくてよかったぜ。初っ端から事故でもあったらチームリーダーとして自信をなくすところだったよ」
「お疲れ、ライエル。リーダーは大変だよな」

「ありがとう、カミト。とりあえず今日の反省会をしたいと思う。意見がある人は言ってくれ」
「じゃあ私から。遠くから見ていた感想になるけど、カミトとライエルが重なっているタイミングが結構あった気がする。二人が上手く連携できればもっと強力なチームになるんじゃないかな」
「防御担当目線でもそうだね。あとはアズサの遠距離攻撃のタイミングが掴めなくていつ弓矢が飛んでくるかわからなくてドキドキしたよ。タイミングを知らせる方法はないかな?」

「農家時代の経験になるが、遠距離担当は攻撃前に必ず大声を出していたぞ。「喰らえ、アロー!」のような掛け声だったな。それで全員導線に入らないように避けていた」
「ああ、それいいね。今度から掛け声をお願いできるかな?」
「そうね、わかったわ」
「まあ、俺の意見もそんなところだ。リーダーとしてはもう少しチームをリードする必要があったと思うが、こればっかりは経験を積むしかなさそうだ。とりあえず今回のクエストは順調にいったと思う。次の依頼も頑張ろう」
 ライエルが反省会を締める。俺達はたわいもない雑談を開始した。

「しかしカミトはよく一人でオーガに立ち向かってたね。経験あるって言ってたけどそんなに何回もオーガと一人で戦ったことあるの?」
 俺はオーガとの戦いについてマルクに尋ねられる。まあ確かに疑問に持たれるよな。適当に誤魔化そう。
「まあ、俺は農家の次男だからな。オーガとの遭遇経験もそこそこあるんだ。大体一人か二人が時間稼ぎをして、残りのメンバーが仲間を呼んでくるというスタイルだったから倒した経験はないけどな」
「そうなんだ。農家って大変だね」
「ああ、野菜を食べる時は農家にもっと感謝しろよ」

 なんだかんだで2時間ほどが経った。すっかり夜になり、全員お酒が回りつつある。ちなみに俺は酒はどれだけ飲んでも酔わないタイプだ。体質的に酒に強いらしい。しかしそれはそれで酔った高揚感を味わえないのでつまらないものだ。

「あ、ライエルじゃんー。クエスト無事終わった?」
「ああ、完璧に終わったぞ。そっちはどうだったんだ?」
 ライエルが女の子と話している。誰だ?マルクとアズサにアイコンタクトを送るも二人も知らない人間らしい。しばらく雑談をした後、女は去っていった。
「今の女の人って前のチームの人?」
 マルクが尋ねるとライエルは肩をすくめる。

「いや、そういうわけではない。最近よく遊んでいる友達だ。別に付き合っているとかではないぞ。仲がいい友達の一人だ」
 詳しく聞いてみると、ライエルは女好きであることが発覚した。色んな種族の色んな女の子とあちらこちらで夜遊びをしているらしい。まあ、トラブルにならない分にはいいが……
 恋愛トラブルでチームから追放されたアズサは気まずい顔をしている。アズサの話も深掘りしたいが、今日はやめておこう。また次回のネタにとっておくべきだな。

 その後は今後の話をした。チームランクが2に上がったら拠点を借りようという話になった。ランクが2になると高報酬の依頼を受けれるようになり、生活が安定する。そこでチームの拠点を借りると言うのはよくある話だ。

 どこどこがいい、いやどこどこだ……そんな話をして世が更けて行くのだった。
 そして3時間が経過したところで皆、完全に酔いが回った様子になったので解散を提案する。全員同意し、チーム初日の夜は終わった。

 借り家への帰り道、念話がアリエッサから届く。
「無事クエストは終わりましたか?」
「ああ、終わったよ。今帰るところだ」
「夜遅くなっても帰還されないので心配しました」
「流石に俺が負けるはずないだろ。楽しかったよ」
 軽口を叩きながら俺は家に戻り、地下の穴で拠点へと帰還した。

「私も久しぶりにマスターと依頼を受けたいです」
 そう口を尖らせるアリエッサ。
「俺も受けたいんだけどなあ。でもLV10が出動すると大事になるので気軽にクエストは受けることができないからな。いいクエストが出てきたらな」
「そうですね。何か大事件が起こることを祈りましょうか」
「おい、勘弁してくれよ」
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