上 下
14 / 57

クエスト打ち上げとアリエッサの嫉妬

しおりを挟む
 それから一時間。俺達はもう1匹のオーガを撃破した。2回目のオーガということで、チームワークも問題ない。遠距離攻撃、近距離攻撃の組み合わせで難なく撃破することに成功した。

「よし、討伐証明部位も回収したぞ。これでクエストはクリアだな」
 上機嫌な様子でライエルが言う。このチームでの初めてのクエストはオーガが2体現れるという予想外な展開もありつつ、無事に完了することができそうだ。俺達は急いで冒険者ギルドに戻った。

「はい、確かに依頼通り、ゴブリンとオークとオーガの討伐証明部位を確認しました。また、オーガの肉についても受け取らせていただきます。これにて依頼は達成です。お疲れ様でした。こちらが規定の報酬になります」
 依頼窓口にて、クエストの完了を確認してもらう。これがこのチームでの初報酬か……それほど多いわけではないが、初めてもらうお金というものにはテンションが上がるものだ。10年前を思い出し、俺は懐かしい感覚に喜びを感じた。

「よし、じゃあクエスト達成記念に打ち上げをしよう!」
 マルクが声を張り上げる。確かに打ち上げはいいかもしれない。俺達は頷いた。
「僕、いい店を知ってるんだよ。今からそこに向かおう」
 マルクの案内について行くと、そこにはたくさんの者で溢れかえる居酒屋があった。
「この店は冒険者御用達で、安くて美味しいご飯がたくさん食べれるから人気なんだ。お腹もぺこぺこだし、ちょうどいいかなって」
 おお、居酒屋か。テーブル席に座るのかな?俺が普段行く時は個室ばかりだったが……流石に金額的に個室は難しいだろう。予想通り空いているテーブルにマルクは腰掛けたので俺達も座る。

「いやー疲れたね。オーガ2体は本当勘弁してほしいよ。いくら動きが遅いといっても防御するのは神経を使うんだよね」
「マルクは大変だったよね。私は遠距離攻撃だったから気楽だったわ。ただ味方に当たらないようにするのには気を使ったけど」
「とにかく最初から不幸なことが起きなくてよかったぜ。初っ端から事故でもあったらチームリーダーとして自信をなくすところだったよ」
「お疲れ、ライエル。リーダーは大変だよな」

「ありがとう、カミト。とりあえず今日の反省会をしたいと思う。意見がある人は言ってくれ」
「じゃあ私から。遠くから見ていた感想になるけど、カミトとライエルが重なっているタイミングが結構あった気がする。二人が上手く連携できればもっと強力なチームになるんじゃないかな」
「防御担当目線でもそうだね。あとはアズサの遠距離攻撃のタイミングが掴めなくていつ弓矢が飛んでくるかわからなくてドキドキしたよ。タイミングを知らせる方法はないかな?」

「農家時代の経験になるが、遠距離担当は攻撃前に必ず大声を出していたぞ。「喰らえ、アロー!」のような掛け声だったな。それで全員導線に入らないように避けていた」
「ああ、それいいね。今度から掛け声をお願いできるかな?」
「そうね、わかったわ」
「まあ、俺の意見もそんなところだ。リーダーとしてはもう少しチームをリードする必要があったと思うが、こればっかりは経験を積むしかなさそうだ。とりあえず今回のクエストは順調にいったと思う。次の依頼も頑張ろう」
 ライエルが反省会を締める。俺達はたわいもない雑談を開始した。

「しかしカミトはよく一人でオーガに立ち向かってたね。経験あるって言ってたけどそんなに何回もオーガと一人で戦ったことあるの?」
 俺はオーガとの戦いについてマルクに尋ねられる。まあ確かに疑問に持たれるよな。適当に誤魔化そう。
「まあ、俺は農家の次男だからな。オーガとの遭遇経験もそこそこあるんだ。大体一人か二人が時間稼ぎをして、残りのメンバーが仲間を呼んでくるというスタイルだったから倒した経験はないけどな」
「そうなんだ。農家って大変だね」
「ああ、野菜を食べる時は農家にもっと感謝しろよ」

 なんだかんだで2時間ほどが経った。すっかり夜になり、全員お酒が回りつつある。ちなみに俺は酒はどれだけ飲んでも酔わないタイプだ。体質的に酒に強いらしい。しかしそれはそれで酔った高揚感を味わえないのでつまらないものだ。

「あ、ライエルじゃんー。クエスト無事終わった?」
「ああ、完璧に終わったぞ。そっちはどうだったんだ?」
 ライエルが女の子と話している。誰だ?マルクとアズサにアイコンタクトを送るも二人も知らない人間らしい。しばらく雑談をした後、女は去っていった。
「今の女の人って前のチームの人?」
 マルクが尋ねるとライエルは肩をすくめる。

「いや、そういうわけではない。最近よく遊んでいる友達だ。別に付き合っているとかではないぞ。仲がいい友達の一人だ」
 詳しく聞いてみると、ライエルは女好きであることが発覚した。色んな種族の色んな女の子とあちらこちらで夜遊びをしているらしい。まあ、トラブルにならない分にはいいが……
 恋愛トラブルでチームから追放されたアズサは気まずい顔をしている。アズサの話も深掘りしたいが、今日はやめておこう。また次回のネタにとっておくべきだな。

 その後は今後の話をした。チームランクが2に上がったら拠点を借りようという話になった。ランクが2になると高報酬の依頼を受けれるようになり、生活が安定する。そこでチームの拠点を借りると言うのはよくある話だ。

 どこどこがいい、いやどこどこだ……そんな話をして世が更けて行くのだった。
 そして3時間が経過したところで皆、完全に酔いが回った様子になったので解散を提案する。全員同意し、チーム初日の夜は終わった。

 借り家への帰り道、念話がアリエッサから届く。
「無事クエストは終わりましたか?」
「ああ、終わったよ。今帰るところだ」
「夜遅くなっても帰還されないので心配しました」
「流石に俺が負けるはずないだろ。楽しかったよ」
 軽口を叩きながら俺は家に戻り、地下の穴で拠点へと帰還した。

「私も久しぶりにマスターと依頼を受けたいです」
 そう口を尖らせるアリエッサ。
「俺も受けたいんだけどなあ。でもLV10が出動すると大事になるので気軽にクエストは受けることができないからな。いいクエストが出てきたらな」
「そうですね。何か大事件が起こることを祈りましょうか」
「おい、勘弁してくれよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】旦那様が私に一切興味がないのは好都合。冒険者として名を上げてみせましょう!

桃月 
恋愛
 テンペスト・ウェトウィッシュは侯爵家の末娘。16歳という貴族の中での適齢期を迎えるが、全く結婚する気は起きない。何と言っても彼女は前世の記憶持ち。前世で16歳と言えばまだまだ遊びたいお年頃だった。 「せっかく生まれかわれたんだから人生楽しまなきゃ!」  彼女が転生したこの異世界の何を気に入ったかって、魔法の存在だ。しかも彼女はラッキーなことに、魔法に関して天性の才能の持ち主として生まれた。 「私、魔法使いなりたい!」  という前世の願いが転生して叶ってしまった彼女は、新たな夢を見出した。 「私、冒険者になる!」  魔獣を狩って素材を剥がしてそれを売ったり、武器や装備を作ったり、依頼を受けてお姫様の護衛をしたり、ばっさばっさと敵を倒すのだ!  アンラッキーなことに、彼女の家族はその夢を歓迎しなかった。貴族の令嬢として彼女に求められるのは、旦那様に尽くす、大人しく美しい淑女だった。  ある日騙されて連れていかれたのは、まさかの自分の結婚式。テンペストの夫となるのは、ウェンデル・ブラッド公爵。血も涙もない冷血な男だと貴族社会で噂になっている男だった。 (はあああ!?)  なりたくもなかった花嫁姿の自分に見向きもしない夫に思わずイラっとしたテンペストは、すぐに人生の計画を練り直した。  ブラッド領には有名な地下ダンジョンが存在した。冒険者の街としても有名なのだ。そこでテンペストは冒険者になることに。 「冒険者として名を上げて、大恥かかせたらぁ!!!」  ブラッド公爵家の嫁が冒険者なんて知られたら、あの冷血夫がどんな顔をするか楽しみだと、テンペストはルンルンで今日もダンジョンへと入って行く。それに冒険者として生活できるようになれば離婚だ! となったって問題ない。  だが、順調に冒険者を続けていたテンペストには予想外のことが。 「なんて美しい人なんだ!」  変装した自分の夫が、妻とは気づかず自分に惚れてしまったのだ。 「……アホかな?」  夫の浮気判定に迷いながらも、今日もテンペストは人生を楽しみます!

私を侮辱するだけの婚約者はもういりません!

杉本凪咲
恋愛
聖女に選ばれた男爵令嬢の私。 しかし一向に力は目覚めず、婚約者の王子にも侮辱される日々を送っていた。 やがて王子は私の素性を疑いはじめ……

転移したら獣人たちに溺愛されました。

なの
BL
本編第一章完結、第二章へと物語は突入いたします。これからも応援よろしくお願いいたします。 気がついたら僕は知らない場所にいた。 両親を亡くし、引き取られた家では虐められていた1人の少年ノアが転移させられたのは、もふもふの耳としっぽがある人型獣人の世界。 この世界は毎日が楽しかった。うさぎ族のお友達もできた。狼獣人の王子様は僕よりも大きくて抱きしめてくれる大きな手はとっても温かくて幸せだ。 可哀想な境遇だったノアがカイルの運命の子として転移され、その仲間たちと溺愛するカイルの甘々ぶりの物語。 知り合った当初は7歳のノアと24歳のカイルの17歳差カップルです。 年齢的なこともあるので、当分R18はない予定です。 初めて書いた異世界の世界です。ノロノロ更新ですが楽しんで読んでいただけるように頑張ります。みなさま応援よろしくお願いいたします。 表紙は@Urenattoさんが描いてくれました。

嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い! 声が出せないくらいの激痛。 この痛み、覚えがある…! 「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」 やっぱり! 忘れてたけど、お産の痛みだ! だけどどうして…? 私はもう子供が産めないからだだったのに…。 そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと! 指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。 どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。 なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。 本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど! ※視点がちょくちょく変わります。 ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。 エールを送って下さりありがとうございました!

我が子を救ってくれたのは私を捨てた男の兄だった。

しゃーりん
恋愛
シャイニーは18歳。両親を亡くした平民だった。 半年前に知り合った男にプロポーズされて体を重ねた後、二度と会うことはなかった。 捨てられたということだ。 しかし、シャイニーは妊娠してしまった。 産んだ子供は魔力が多く、このままでは育たないと言われてしまった。 魔力の多い子供は定期的に魔力を放出する必要がある。 大体は両親どちらかの魔力の波長に合い放出できるが、息子はシャイニーを捨てた男と波長が合ったらしい。 しかし、魔力の放出ができる人が現れて…… 息子を救ってくれた男とシャイニーのお話です。

王太子殿下に婚約者がいるのはご存知ですか?

通木遼平
恋愛
フォルトマジア王国の王立学院で卒業を祝う夜会に、マレクは卒業する姉のエスコートのため参加をしていた。そこに来賓であるはずの王太子が平民の卒業生をエスコートして現れた。 王太子には婚約者がいるにも関わらず、彼の在学時から二人の関係は噂されていた。 周囲のざわめきをよそに何事もなく夜会をはじめようとする王太子の前に数名の令嬢たちが進み出て――。 ※以前他のサイトで掲載していた作品です

闇魔法とチート能力で学園無双

ソウシ
ファンタジー
ある日、四条海斗は、車に轢かれて死んでしまう。 目が覚めるとそこは何も無い空間が広がっていた。するとそこに、突如として人が現れた。その者は神だと言ってたきた。そして、魔法の世界に転生してくれるとの事だった。さらにその神は1つだけなんでも力をくれると言ってきたのだだった。海斗は悩んだ末に「魔力無限」を要求した。神は了承し、海斗を転生させた。 そして、「ランス・フィルバー」と名ずけられた。 時が過ぎ、ランスは魔法学園に入学することになった。 そして、適性検査が行われた。その世界では火、水、土、木、風、雷の6つが存在する。ランスが適正に表示されたのは「闇」。存在しない適性が現れたのだ。 そして魔力測定は開始された。この時ランスはヤバいと思った。そして、恐る恐る触れると、水晶が粉々に割れたのだった。 そして、学校中の噂になってしまった。 今後、ランスはどうなってしまうのか!?

レベルが上がりにくい鬼畜な異世界へ転生してしまった俺は神スキルのお陰で快適&最強ライフを手にしました!

メバル
ファンタジー
元地球生まれの日本人。 こよなくタバコと糖分を愛しタバコは1日5箱。糖分は何よりもあんこが大好物。まず俺は糖分過多で28歳で二型糖尿病というファックなスキルをゲット。更にタバコの吸いすぎで40歳独身のおっさんは、気づいた時には時既に遅し。普通に末期の肺癌で死んだ。 たったの40年。不健康な生活をしてしまった付けだろう。 そして俺は死ぬときに強く思った。 願わくば次に生まれ変わる場所では、不健康な生活を好む体に生まれ変わりますように…… と強く願ったら地球ではなく、まさかの異世界転生をしてしまう。 その場所はベイビーから老人までレベルが存在する世界。 レベルにより生活も変われば職業も変わる。 この世界では熟練度・スキル・アビリティ。これも全てレベルが存在する。 何をしてもOK。 どう生きるかも自由。 皿洗いでも皿洗いの熟練度レベルがある。 レベルが低い者は重宝されない。 全てはレベルの世界。 しかしこの世界のレベルは非常に上がりにくい。 ゆえにレベルが低い者は絶望的な世界。 まさに鬼畜な世界。 そう鬼畜な世界だったのだが……

処理中です...