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部品の復讐(六章)

256.開けられた宝箱④

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「ナット…消える瞬間だけは見ないで…。それを見たら…私を忘れて生きていけないから…」

そんなの嫌だ。もし可能ならば、俺は脳みそに彼女という存在を印刷したい。焼印でもいい、刻印でもいい、ただ記憶にアデルを残したい。

「そんなの…無理に決まってんだろ!!」

苦しみも、全て請け負うつもりだった。彼女が全てだった俺の人生に彼女を奪われてしまえば…他に何が残る。
それは、開けられた宝箱のように空の箱で、大事なのもが入っていたという証だけが残る。

そんな証ぐらい…残したいんだ。

「でも…」

「…俺は、アデルのことを忘れないよ。」

その時、明るい彼女の珍しい涙がそこにあった。
そして、彼女は言葉を詰まらせながら罪悪感と共に、ある言葉を吐き出した。

「…ごめんねナット…。私…絶対に思っちゃいけないのに…"ありがとう"って思っちゃったの…。ナット…大好きだよ。」

比喩じゃない無い、隠喩でも無い、この瞬間。
彼女は最期の輝きを見せてしまった。…もう遅れてしまったかもしれない、それでも俺は1つ、彼女に向けて言う。「俺も…好きだ」と。







あれから何ヶ月がたっただろう。
あの時から俺は寂しさを紛らわすために、冗談やガキのようなイタズラをしたり、ちょっかいをかけるのが増えたように感じる。

色んな人に話して、色んな人を見た。
宝箱はこの瞬間にただの道具入れとなっていた。

そして…。
最後に行き着いた場所は、謎の依頼屋。
そこは面白いところだ、ドジな大男にオタク気質な少女、姉御肌のお姉さん。

そこでの日々は楽しかった。あの時からずっと、俺は本来付く名前であったナット・ラズラーという名前を名乗るようにした。

日々が過ぎていく、前に貰ったひまわりが枯れ始めた頃。
丁度、隣の村に行く依頼があった。
…タンダス村での任務も…俺はこんな聞き込みをしていた。

「光って消える死体の都市伝説って知ってますか。」
と。


そして、何日か任務が経つと…。
村は狼の襲撃に会い、みんな死んだ。

俺はその中での唯一の生き残りに、こう聞いた。
「あんた、アルス・ターネストだよな?」

そんなこんなで…アルスをこっちに引き連れて、仲間にして…。



はぁ…。
こんなに濃厚な日常なのに…まるで一瞬の出来後のかのように。
どうでもいい出来事かのように、アルスや仲間達との思い出を語れてしまう。

あの時のことは忘れられないのに…昨日の晩飯はもう忘れてしまった。全ては…寂しさを紛らわすための穴埋めでしか無かった…。こんな虚無な人生、最後にアデルのためにできることといえば…。"彼女を殺したやつを殺すことだろう。"
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