221 / 281
全面戦争 破(五章)
221.乾坤一擲の大勝負④
しおりを挟む
「フッ…ハハハハハ。最高の兵士マーベイン、やはり志も高いな。いいだろう、貴様に兵士としての最高の死に場所をくれてやろう。」
「俺の死に方は…もう決まってるんだ、今更変えさせる気は無い。」
今の攻撃でわかった。いや、改めて理解させられたんだ。
"今の俺はタクシェンに敵わない"
傷だらけでボロボロの体を、マーベインは無理やり動かしていた。焼け焦げた左足にはほとんど感覚がない。だが、それは好都合!痛みを気にせず戦える!
「いろいろと試行錯誤して、心物の組み合わせを作っていたんだ。これはその内の一つだ。」
タクシェンは自分を語り、その後に左手を顔の前に置いた。
「加熱…そして《新たな炎》。」
彼は左の手のひらに乗せていた木材を、限界まで過熱させた。
ボウッ…。千…万と上がる熱はいつしか炎を作り、色は青に変わっていた。
その木材を《新たな炎》に入れることで、温度が下がらない超高温の火炎放射器を作り出した。
「これで貴様を、焼き尽くしてやろう。」
そして、それを火球としてマーベインにぶつけた。
しかし、青い火球はマーベインにかすりもせず、彼の前で静かに消えてった。
「…まさか。炎を《守護者の刃》で消しきったというのか?」
「そのまさかだ…。斬って空気が動くなら…斬りまくって風を生み出せばいい。」
「貴様を殺すために《新たな炎》を手に入れたんだがな、強行突破されてしまうとは。」
今ので完璧に分かった。奴の心物の能力は、別の人の心物の力を奪う能力であろう。心物の複数所持者かと考えたが、《新たな炎》があることで決定した。
「…お前、何人の心物を奪った?」
「零事件の被害者の数だ。」
マーベインはその言葉を聞いて、黙って歩き出した。
1歩が重く、土を踏みにじってタクシェンに近づく。
その顔はまさに鬼であり、ただ奴に対する怒りと殺意で満ち溢れていた。
「お前にはこの心物が効くであろう。」
そう言ってタクシェンはマーベインを引き付け、できるだけ引き付けた後に左手で指笛を吹いた。
「?」
ピィー!と、口笛が夜の大草原に響く時、マーベインは突然頭が朦朧とし始めた。そして足が千鳥足となり、歩くことが困難になった。
「まさか…《音の酒飲み》!?」
アルスから聞いていた、この心物の能力。
まさか…タクシェンが手に入れていたとは…。
もう駄目だ。そんな考えが頭の中を数回も過ぎる。
諦めたら死ぬ人が多くなるのに、俺が守れるはずの人が死んでしまうのに…。
ここで死んだら…俺は…最高の兵士。なんてものでは無い。
レイ…スノ。ここで俺が逃げたとしてもお前らは許してくれるんだろう。
「……ハァ。」
一呼吸。覚悟はもう決めていた。
二度と振り向くな、後ろに道は無い。退路はとっくに切り落とした。突き進め、最期まで。
「俺の死に方は…もう決まってるんだ、今更変えさせる気は無い。」
今の攻撃でわかった。いや、改めて理解させられたんだ。
"今の俺はタクシェンに敵わない"
傷だらけでボロボロの体を、マーベインは無理やり動かしていた。焼け焦げた左足にはほとんど感覚がない。だが、それは好都合!痛みを気にせず戦える!
「いろいろと試行錯誤して、心物の組み合わせを作っていたんだ。これはその内の一つだ。」
タクシェンは自分を語り、その後に左手を顔の前に置いた。
「加熱…そして《新たな炎》。」
彼は左の手のひらに乗せていた木材を、限界まで過熱させた。
ボウッ…。千…万と上がる熱はいつしか炎を作り、色は青に変わっていた。
その木材を《新たな炎》に入れることで、温度が下がらない超高温の火炎放射器を作り出した。
「これで貴様を、焼き尽くしてやろう。」
そして、それを火球としてマーベインにぶつけた。
しかし、青い火球はマーベインにかすりもせず、彼の前で静かに消えてった。
「…まさか。炎を《守護者の刃》で消しきったというのか?」
「そのまさかだ…。斬って空気が動くなら…斬りまくって風を生み出せばいい。」
「貴様を殺すために《新たな炎》を手に入れたんだがな、強行突破されてしまうとは。」
今ので完璧に分かった。奴の心物の能力は、別の人の心物の力を奪う能力であろう。心物の複数所持者かと考えたが、《新たな炎》があることで決定した。
「…お前、何人の心物を奪った?」
「零事件の被害者の数だ。」
マーベインはその言葉を聞いて、黙って歩き出した。
1歩が重く、土を踏みにじってタクシェンに近づく。
その顔はまさに鬼であり、ただ奴に対する怒りと殺意で満ち溢れていた。
「お前にはこの心物が効くであろう。」
そう言ってタクシェンはマーベインを引き付け、できるだけ引き付けた後に左手で指笛を吹いた。
「?」
ピィー!と、口笛が夜の大草原に響く時、マーベインは突然頭が朦朧とし始めた。そして足が千鳥足となり、歩くことが困難になった。
「まさか…《音の酒飲み》!?」
アルスから聞いていた、この心物の能力。
まさか…タクシェンが手に入れていたとは…。
もう駄目だ。そんな考えが頭の中を数回も過ぎる。
諦めたら死ぬ人が多くなるのに、俺が守れるはずの人が死んでしまうのに…。
ここで死んだら…俺は…最高の兵士。なんてものでは無い。
レイ…スノ。ここで俺が逃げたとしてもお前らは許してくれるんだろう。
「……ハァ。」
一呼吸。覚悟はもう決めていた。
二度と振り向くな、後ろに道は無い。退路はとっくに切り落とした。突き進め、最期まで。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
JK退魔師の受難 あらかると♡ ~美少女退魔師たちは今日もふたなり化して凌辱される~
赤崎火凛(吉田定理)
ファンタジー
現代にはびこる悪――妖魔を滅ぼすために、美少女退魔師たちは今日も戦う! そして敗れ、呪いでふたなり化して、ひたすら妖魔に凌辱される! 初めての感覚に戸惑い、恥じらい、絶頂し、連続射精させられ……身も心もボロボロにされて堕ちていくJK退魔師たちの物語。
*いろんな女子高生の退魔師たちのHシーンだけを集めた短編集です。
『JK退魔師×ふたなり』がテーマです。百合成分はたまにあります。
基本はバッドエンドで、ヒロインに救いはないです。
触手、凌辱、お仕置き、拘束、拷問、恥辱、寸止め、マッサージとか、いろいろ。
メインのシリーズを読んでなくてもOK。
短編のため、どのキャラから読んでもOK。
*ここに「妖魔に捕まった状態から始まります」とか書いてありましたが、そうじゃない話もあるので消しました。
チョロイン2人がオイルマッサージ店でNTR快楽堕ちするまで【完結】
白金犬
ファンタジー
幼馴染同士パーティーを組んで冒険者として生計を立てている2人、シルフィとアステリアは王都でのクエストに一区切りをつけたところだった。
故郷の村へ馬車が出るまで王都に滞在する彼女らは、今流行りのオイルマッサージ店の無料チケットを偶然手に入れる。
好奇心旺盛なシルフィは物珍しさから、故郷に恋人が待っているアステリアは彼のためにも綺麗になりたいという乙女心からそのマッサージ店へ向かうことに。
しかしそこで待っていたのは、真面目な冒険者2人を快楽を貪る雌へと変貌させる、甘くてドロドロとした淫猥な施術だった。
シルフィとアステリアは故郷に戻ることも忘れてーー
★登場人物紹介★
・シルフィ
ファイターとして前衛を支える元気っ子。
元気活発で天真爛漫なその性格で相棒のアステリアを引っ張っていく。
特定の相手がいたことはないが、人知れず恋に恋い焦がれている。
・アステリア(アスティ)
ヒーラーとして前衛で戦うシルフィを支える少女。
真面目で誠実。優しい性格で、誰に対しても物腰が柔らかい。
シルフィと他にもう1人いる幼馴染が恋人で、故郷の村で待っている。
・イケメン施術師
大人気オイルマッサージ店の受付兼施術師。
腕の良さとその甘いマスクから女性客のリピート必至である。
アステリアの最初の施術を担当。
・肥満施術師
大人気オイルマッサージ店の知らざれる裏の施術師。
見た目が醜悪で女性には生理的に受け付けられないような容姿のためか表に出てくることはないが、彼の施術を受けたことがある女性客のリピート指名率は90%を超えるという。
シルフィの最初の施術を担当。
・アルバード
シルフィ、アステリアの幼馴染。
アステリアの恋人で、故郷の村で彼女らを待っている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる