マインドファイターズ

追求編(四章)

147.いつもの仕事

「…やべぇ。なんか泣けてきた。」

実に約3週間ぶりに自分の家に戻ることが出来たアルスは、いつも通りが戻ったことに感動していた。
頬を伝う涙は、災難を乗りきった仲間達にもあるものだろう。

「……で、鍵は？」

一同は固まった。
そういや、牢獄に入った時に持ち物を全部没収されてしまったな。…鍵が一つも無い。

「頼んだアルス。」

「任せろって」

まさか《避役の長棒》で自分の家の鍵を作ることがあるとは、何ヶ月か前のアルス達には想像つかなかっただろう。
しみじみと、ここ何ヶ月かの非日常を遅れて感じた。

「虫とか湧いてないよな…？本当怖い。」

ガクブル震えながら、アルスは鍵を開けてドアの取っ手を引いた。しかし、次、目に映る光景は心の奥底で待ちに待った、全く変わらない『休息の場』(マイホーム)であった。

その後、それぞれはそれぞれの役目を果たそうとした。
ラーラは台所に、アルスとコルは2人で掃除を、レイとナットは依頼の整理を。

そうして何時間かいつもの日常を暮らしていた頃だ。
レイが心のどこかで危惧していたことが起こってしまったのだ。

「最悪だ。廃業になるかもしれん。」

ここは依頼屋、手紙で依頼をしてくるケースも普通なら少なくなのである。しかし、今日その手紙の依頼が、長期不在の間に何通届いているかを確認した。

しかし、一切届いてないのであった。

「新聞とかでも報道されてる…こりゃ相当なイメージダウンだな…」

薄々感ずいてはいたナットがそう、レイの肩をトントンと押しながら言った。そのままずっと落ち込んでいたら…。

ドンドンッ！

いきなりだった、玄関のドアが激しく叩かれたのであった。
ナットは自分の心物を手に取り、それを構えた。レイは近くにあった槍を取ってドアに向けた。

「兵士か…？ナットはここにいろ。私が開ける。」

そう言って、レイはドアの向こうを確認しに行った。
しかし、そこに居たのはただ普通の青年だった。

「お久しぶりです。ちょっと様子を見に来て…。」

その青年はナットの顔を見てそう言った。
ナットもピンとその顔に来たのか、前と同じような対応をし始めた。

「んで、今回はなんなのよ？友人関係？甘酸っぱい恋か？」

「あまり依頼人をからかうなよ。そのせいで帰った依頼人もいるんだから」

そう、青年にとって懐かしいここの日常会話を聞いた時、気がつけば笑っていた。

「フフ…。やっぱここは変わりませんね。安心しました、では」

そう言ってその青年は帰って行った。常連の青年だったのだ。狭い幅ではあるが、昔からの顧客はまだまだいる事を知って2人は安心した。