マインドファイターズ

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牢獄編(三章)

119.死刑からの逃亡①

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そして、時間の感覚が忘れて来たことであった。
今何時間たった?
何も無い虚無の空間にある暇がアルスを襲う。

今日は何日か、それは把握している。パンが毎日3回配られる。
そのパンは噛んだ感触が砂で作られたと勘違いするほど不快だ。あじも無いに等しい。

そんな中で…やっと独房から1週間がたった。
アルス達が計画をしていた、脱獄の日(仮定)は今日である。

「もうすぐ就寝か…」

そう、緊張をかみ締め、途方もない時間をただ座って過ごしていた。そして、アルスは計画を思い返した。

前に立てていた計画はこうだ。
《避役の長棒》で鍵を作り、ミシェルに体を治してもらい、ナットとコルを解放する。彼らは一目散に逃げてもらう。

そしてアルスはレイ達の方に向かって、レイ達を解放する。
だが、状況的に不可能であろう。

ほとんど無計画だ。しかし、アルス達は心の準備だけで脱獄しようとしていた。

「そろそろ就寝だ!早く寝ろ!」

と、兵士の怒号が聞こえる。もうその時は来ているようだ。
ベッドに丸まり、寝たフリをしていた。

そうして10分がたった頃…。
兵士の怒号が鳴り止んだ。全員が寝たことを確認したのだろう。しかし、兵士が巡回していない訳では無い。

それを考え、目だけを動かしながら、アルスは脱獄のタイミングを計っていた。

「……」

静寂が空間を支配する中、この独房の近くに兵士は全くいなくなった。時が止まったように一切変わらない風景に、水を差すかのようにアルスは動き出した。

「………」

ただひたすら、物音を立てないように…。

ガンッ!!

しかし、アルスが動き出そうとした瞬間、ベッドの上から転げ落ちてしまった。身体は負傷していて思ったように動かせていなかった。

「……ふぅ」

しかし、兵士がここに来ることは無かった。

不慣れな負傷した体を操り、一歩づつ足音を殺して鉄格子に。そして、《避役の長棒》を細くして小さな隙間から外に出した。そこから、鍵穴に近づけて…。

細くした《避役の長棒》の先端が鍵穴を通った時。
アルスは先端にスライムを出した。そして、鍵穴をスライムで埋めた、それを鉄に変え、硬化させた上で鍵を回した。

ガチャンッ!

と、少し大きな音が鳴ったが…。無問題であった。

外に出るとアルスは個人で考えていた計画を実行しようと動き始めた。まずはナットの解放。

現実、解放が1番簡単で、かなり脱獄できる可能性がある人と言えばナットであろう。
そして、そこにはミシェルもいる。治療してくれれば、アルスの機動力は倍増する。


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