マインドファイターズ

指名手配編(三章)

102.日常への侵食③

「……え？」

ナットから聞いた、自分たちが指名手配されていたという情報。理解不能になった長い長い一瞬が、家中にぐるぐる回る。

その時、レイが口を開いた。

「…いや、嘘だよな？」

「残念ながら本当だ……」

そう言われたが、レイはナットの元に飛び出して、彼が読んだものを見ようとした。他の一同は呆然と頭が回る最高速度で考えていただけだった。

「おかしい！カタァースは賄賂をっ！」

「あいつはもう捕まってやがる！」

「っ…！」

誰もが何も言えないまま、ただただ時間だけが過ぎる。
考えれば当たり前のことであった。しかし………しかし納得はいかなかった。

「内通者のこと……。なんも記されていない。つまり…そういうことだ。」

「やられた…何もかもがかき消された。俺達はただ、議員を襲っただけの人になっちまった。」

そして、ドアを叩く音が、重厚に鳴り響く。
そうか……もう家も何もかもがバレていたということか。

ブァングラが自分本来の肉体に意識が戻った。
だからやったことがバレた。

そう悟った。

「開けろ。開けないなら扉を壊す」

家の外から聞こえる低音。
殴り叩き、激しく音を鳴らす扉が自分達が刑務所に行くまでのカウントダウンしているかのようだ。

「わかった…開ける」

1番近くにいたナットは扉を開いた。
そこに立っていたのは長身で灰色髪のアクティブショート。
後ろに長剣。間違えない、マーベインだ。

彼を見た途端、ナットは1歩退きある提案をした。

「…抵抗はしない。話だけでも聞いてくれよ？」

「元からそのつもりだ。」

以外にもマーベインはその提案を受け入れてくれるようだ。
彼は「ここに座ってもいいか？」と依頼室にある椅子を指した。ナットは「もちろん。」と言い残し、レイを呼びに行った。

マーベインは抜かりがない。心物の長剣を既に抜いている。
こちらに向かう足音が聞こえる、レイは依頼室に向かっているのだろう。

そして、レイは依頼室に入った。

「久しいな、マーベイン」

彼はそう言った。新聞や巡回中に誰もが見るマーベインの顔を見て、そう言った。

「一応聞きます…冤罪ですか？」

「違う。私達がやった事だ。」

「……じゃあ何故そんなことをっ！」

「それを言いに来たんだよ。」

不思議だ。目の前に繰り広げられる会話。
何故かボスが上手のような扱いをされている…確かマーベインは24歳、対してレイはアラサー。

何処かで会った経験があるのか？

「いや…聞くのは野暮。カタァース議員からあらかた説明してもらいました。」

「分かってくれるか？」

「残念です…こちらは政府の人間なもんで…。」

そして一息置くと、マーベインの中で何かを決断した。
その証拠に、深呼吸しながら目をつぶりゆっくりと開けたのだった。

「話は署で聞く。レイ、ナット、コル、ラーラ。この4人はこい。あの少年は指名手配されていない。保護しろ。」

長剣をゆっくりと持ち上げ、剣先を一人一人に向けながらそういった。