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2キセイセ

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制圧編(ニ章)

89.《氷の独壇場》③

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「クソが…」

凍った足を見ながら、ナットは吐き捨てた。
グラギを睨みつけ、まだまだ余裕だと言わんばかりの気迫を見せた。

「凍った足で何ができるのか…見せてくれよ?」

グラギはニヤニヤと表情を歪めながら、ナットに向かっていく。高速の滑りをみせ、拳を握って、体を捻った。

「!」

そのまま顔面を狙った右ストレートが、ナットを襲う。
ナットは急いで、両腕を顔の前に置いた。

「へへっ…もらったぁ!!」

次の瞬間には、腕と腕の隙間から見えるのは《氷の独壇場》をつけた靴の裏であった。

ナットはその一瞬でガードを片腕だけにした。
右の肘を正確に狙われた、肘が凍って曲げることが出来ない…。

「さぁ……俺の隠している石は残り1つ。それに片手と片足が凍って動かない。しかも、利き手ってもんだ。どうやって勝とうかなぁ?」

ナットはそう言った。
何やら余裕がありそうな様子である。グラギもまだ飛び出るのを躊躇している様子だ。

余裕ありって思わせているが……正直、ここから勝てる算段がない。ていうか…動けない状態で勝てる方がおかしい。

あの戦闘狂の後ろには、コプラとレイがブレスレットを取りに行こうとしているが……揺れていて、まともに動けていないな。

いや…コプラ…あいつの"やっていること"が成功すれば、この揺れは解消できる。

「コプラ!俺が守る!台座にくっつけろ!」

と、ナットが言うと、コプラはうんと一つ頷き、台座に《呪縛の鎖》をつけて、そのままブレスレットの近くまで行って、回収した。

「なげろ!」

ナットは強く、コプラに向けてそう命令した。
その通りにコプラは動き、そのブレスレットを遠くへぶん投げた。

「揺れが…収まった…?」

そう、レイが言った途端。ニヤッとグラギを小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

「心物ってのは、気づいた時には持ち主の元に戻ってるもんなんだろ?」

「!?」

ナットがそう、大きく聞かせるように独り言を呟いた瞬間。
グラギは目を大きく開いた。そしてそのあと、顔を歪めるようにナットに笑いかけ、こう言った。

「やっぱお前は最っ高だ!ナット・ラズラー!!自分の安全を諦めて、この拠点の制圧を優先するとは!!」

しかし、グラギが見た場所には、ナットはいなかった。

「?」

「チェックメイトってとこかな。」

グラギの耳元から彼の声が聞こえた。
そして、《遅れる衝撃》のピッケル部分がグラギの頭に触れる。
グラギは頭から少し血が飛び出て倒れた。

「……どうやって動いた?」

そう、レイがナットに聞いた。ナットは少し笑って、何かを隠すかのように違和感のある動きを見せてこう答えた。

「ご想像にお任せしまーす。」

そう言った彼が隠していたのは
足と肘の打撲の跡であった。
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