閉じられた図書館

関谷俊博

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「ふむ。それで、きみは女の子と記憶の整理をしていると」
ぼくはうなずいた。ガラス窓の外には、またあの医師と祖母がいる。今日も二人の姿は鮮明になったり、ぼやけたりを繰り返していた。
「で、麗子さんにまつわる本は見つかったのかね」
ぼくは黙って首をふった。
「ふうん」
麗子ちゃんが鼻を鳴らした。
「こっち側から眺めると、こんなふうに見えるのかあ」    
麗子ちゃんは、ぼくの隣に立っている。
「じゃ、いつも通りの薬を出しときますから。予約はまた一週間後にしときますか」 
事務的な口調で、医師は言った。
「もう終りですの」
祖母が不服そうに言った。
「言ったでしょう?」
医師は祖母に向き直った。
「とっくに事態は行き詰まっていると。私たちは経過を見守るしかないんですよ」
 
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