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貴重なものをみすみす渡すわけ、ありませんよ
リーゼロッテの決断 1
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王城から帰領してしばらく、ロイスナーでの日々は平穏そのものだった。冬を前に特別気にかけるべきこともなく、ベルンハルトとの生活も心地好い調子で流れる。
だが、それらが全て表面上のことだと感じていたのは、リーゼロッテやベルンハルトだけではないはずだ。
共に王城へと向かったアルベルトはもちろん、勘の良いヘルムートもこんな時期に王城へ行ったことや、リーゼロッテの時折見せる暗い顔に不穏な空気を感じているだろう。
二人で抱え込むのではなく、誰かに相談できたらと、何度となく打ち明けてしまいそうになる。
それでも、王族が秘匿にしていること。話せるはずもない。
気になってはいるだろうに、主人のやることだからと、執事らしく何も聞かずに実直に付き従ってくれている姿に、思わず涙しそうになる。
魔獣が結界を越えてこれば、誰よりも先に犠牲になるはずのロイスナーの領民。
自分の命が脅かされるかもしれない出来事について、事前に知る手だてが目の前にあるというのに。
いつもと変わらぬ笑顔を浮かべている態度は、やはりその能力の高さを証明して見せた。
「奥様。本日は少し甘味を強めたお茶をお淹れしましょう。少しでもその憂いの表情が和らぐと良いのですが」
リーゼロッテの目の前で繰り広げられるお茶を淹れるための所作。少し骨ばったヘルムートの手先は、いつでも優雅に動いていくが、その動きを目で追いながら、リーゼロッテが何度目かもわからないため息を漏らした。
「ヘルムートさん。ありがとうございます」
「私ではその原因を取り除くことはできませんから。少しでも紛らわすことができれば良いのです」
「ふふ。そのお気遣いが、嬉しいわ」
日差しの照りつけは和らぎつつも、まだまだじんわりと汗をかくような陽気が続く季節。
ヘルムートが淹れてくれたお茶は、確かに甘味を強く感じるものではあったが、心地よい温度に冷やされた液体が喉を潤し、鼻に抜ける柑橘類の臭いただよう空気が爽やかさをいっそう強くした。
「これは、初めて味わったみたい」
「ロイスナーでこの時期に採れる果物を絞ってあります。抽出したものは香水に使われることもあって、良い香りなんですよ」
「香水……」
リーゼロッテの頭の中に思い出されたのは、ベルンハルトから漂ってきた、お酒と混じったこの香り。
「はい。毛布に次ぐ特産品と言っても良いぐらいです」
「そうだったのね。いつだったか、ベルンハルト様がお使いになっていた気がするわ」
「そうかもしれませんね。気に入っていらっしゃるようです」
ヘルムートとの時間は周りから隔離されたようにいつだって穏やかで、それは紛れもなくヘルムートのおかげ。
そんな時間を作り出してくれる相手に、やはり黙ったままではいられない。
「ねぇ、ヘルムートさんは何も気にならないの?」
「気に? なりますよ。ベルンハルト様の素顔を見たことを、いつお話になられるのか」
「えぇ? そ、そのことではなくって」
「それでは、私と友達になりたいと仰ったのは、いつ撤回していただけるか、でしょうか」
「それは、撤回しません!」
ヘルムートが気がついていないはずがないのだ。それでも、のらりくらりと重要なことを避けているのは、知らないふりをしていたい理由があるからだろうか。
「奥様。執事は後ろに付いていくものです。前を歩くものでも、隣に立つものでもありません。お二人がどうされようとも、それに付き従うものですよ」
突然、普段の軽い態度を一変させ、リーゼロッテを相手に襟を正す。
その佇まいは一介の庭師ではなく、老練の執事の風格を漂わせた。
「そういうものですか」
「もちろん、頼りにしていただいているのはありがたく思います。諌めるべきことも諌めます。ただ、私が重大な決断の一端を担ってはいけない。どのような決断を下されようとも、全ては主人のお心のままに」
「皆様も、それでいいのかしら」
「奥様の仰る皆というのは、城の者でしょうか? それとも、領民たちでしょうか? どちらにせよ、ロイスナーはベルンハルト様がいらっしゃらなくなれば滅びの道を辿るしかありません。飢えることも、魔獣に攻められることもなくいられるのは、全てベルンハルト様のお力ですから」
ロイスナーには魔力も剣技も敵う者はいない、それはつまりベルンハルトがいなくなることと、ロイスナーの滅亡が同義だということ。
国の結界が維持できず、黒龍が現れてしまえば、そうすれば国自体が滅びる。
それよりも前に魔獣が結界を越え、ベルンハルトが討伐に失敗すれば、即座にロイスナーが滅びるだろう。
直面する問題は、やはり国の結界のための魔力石だ。
「ベルンハルト様は、ロイスナーにとって必要な方ですね」
「その方を支えて下さる、奥様もですよ。ただ、ベルンハルト様にはあまりその自覚がないようです。ですから、これからもベルンハルト様のことをよろしくお願いします。奥様ならばベルンハルト様のことを変えられるかもしれませんから」
ヘルムートの言葉は、リーゼロッテの心に深く染み込んだ。
誰からも必要とされず、役立たずだったはずの自分が、これほどまでに大切に思われている人の側にいることを望んでもらえる。
それがどれだけリーゼロッテの心を救うか、ヘルムートはきっと気づいていない。
「ご覧ください、奥様。あの若草色の尾はレティシア様です」
ヘルムートの言葉に、思わず涙を流しそうになったリーゼロッテの顔から目を背けるための口実のように、ヘルムートが空を指差した。
まだ夏の残る青空に一筋の若草色の線。それが一直線に執務室へと向かっていく。
「吉報でも、凶報でも、お二人のお心のままにご決断下さい」
ヘルムートはそう言うと、リーゼロッテに深く頭を下げた。
目尻に残った一雫の涙。
それを人差し指で拭えば、リーゼロッテはいつものように微笑みを作り上げる。
「ヘルムートさん。ありがとうございます」
リーゼロッテもヘルムートに負けず劣らず深く頭を下げた。ヘルムートがそれを見れば慌てふためくのも知っている。
それでも、せずにはいられない。
だが、それらが全て表面上のことだと感じていたのは、リーゼロッテやベルンハルトだけではないはずだ。
共に王城へと向かったアルベルトはもちろん、勘の良いヘルムートもこんな時期に王城へ行ったことや、リーゼロッテの時折見せる暗い顔に不穏な空気を感じているだろう。
二人で抱え込むのではなく、誰かに相談できたらと、何度となく打ち明けてしまいそうになる。
それでも、王族が秘匿にしていること。話せるはずもない。
気になってはいるだろうに、主人のやることだからと、執事らしく何も聞かずに実直に付き従ってくれている姿に、思わず涙しそうになる。
魔獣が結界を越えてこれば、誰よりも先に犠牲になるはずのロイスナーの領民。
自分の命が脅かされるかもしれない出来事について、事前に知る手だてが目の前にあるというのに。
いつもと変わらぬ笑顔を浮かべている態度は、やはりその能力の高さを証明して見せた。
「奥様。本日は少し甘味を強めたお茶をお淹れしましょう。少しでもその憂いの表情が和らぐと良いのですが」
リーゼロッテの目の前で繰り広げられるお茶を淹れるための所作。少し骨ばったヘルムートの手先は、いつでも優雅に動いていくが、その動きを目で追いながら、リーゼロッテが何度目かもわからないため息を漏らした。
「ヘルムートさん。ありがとうございます」
「私ではその原因を取り除くことはできませんから。少しでも紛らわすことができれば良いのです」
「ふふ。そのお気遣いが、嬉しいわ」
日差しの照りつけは和らぎつつも、まだまだじんわりと汗をかくような陽気が続く季節。
ヘルムートが淹れてくれたお茶は、確かに甘味を強く感じるものではあったが、心地よい温度に冷やされた液体が喉を潤し、鼻に抜ける柑橘類の臭いただよう空気が爽やかさをいっそう強くした。
「これは、初めて味わったみたい」
「ロイスナーでこの時期に採れる果物を絞ってあります。抽出したものは香水に使われることもあって、良い香りなんですよ」
「香水……」
リーゼロッテの頭の中に思い出されたのは、ベルンハルトから漂ってきた、お酒と混じったこの香り。
「はい。毛布に次ぐ特産品と言っても良いぐらいです」
「そうだったのね。いつだったか、ベルンハルト様がお使いになっていた気がするわ」
「そうかもしれませんね。気に入っていらっしゃるようです」
ヘルムートとの時間は周りから隔離されたようにいつだって穏やかで、それは紛れもなくヘルムートのおかげ。
そんな時間を作り出してくれる相手に、やはり黙ったままではいられない。
「ねぇ、ヘルムートさんは何も気にならないの?」
「気に? なりますよ。ベルンハルト様の素顔を見たことを、いつお話になられるのか」
「えぇ? そ、そのことではなくって」
「それでは、私と友達になりたいと仰ったのは、いつ撤回していただけるか、でしょうか」
「それは、撤回しません!」
ヘルムートが気がついていないはずがないのだ。それでも、のらりくらりと重要なことを避けているのは、知らないふりをしていたい理由があるからだろうか。
「奥様。執事は後ろに付いていくものです。前を歩くものでも、隣に立つものでもありません。お二人がどうされようとも、それに付き従うものですよ」
突然、普段の軽い態度を一変させ、リーゼロッテを相手に襟を正す。
その佇まいは一介の庭師ではなく、老練の執事の風格を漂わせた。
「そういうものですか」
「もちろん、頼りにしていただいているのはありがたく思います。諌めるべきことも諌めます。ただ、私が重大な決断の一端を担ってはいけない。どのような決断を下されようとも、全ては主人のお心のままに」
「皆様も、それでいいのかしら」
「奥様の仰る皆というのは、城の者でしょうか? それとも、領民たちでしょうか? どちらにせよ、ロイスナーはベルンハルト様がいらっしゃらなくなれば滅びの道を辿るしかありません。飢えることも、魔獣に攻められることもなくいられるのは、全てベルンハルト様のお力ですから」
ロイスナーには魔力も剣技も敵う者はいない、それはつまりベルンハルトがいなくなることと、ロイスナーの滅亡が同義だということ。
国の結界が維持できず、黒龍が現れてしまえば、そうすれば国自体が滅びる。
それよりも前に魔獣が結界を越え、ベルンハルトが討伐に失敗すれば、即座にロイスナーが滅びるだろう。
直面する問題は、やはり国の結界のための魔力石だ。
「ベルンハルト様は、ロイスナーにとって必要な方ですね」
「その方を支えて下さる、奥様もですよ。ただ、ベルンハルト様にはあまりその自覚がないようです。ですから、これからもベルンハルト様のことをよろしくお願いします。奥様ならばベルンハルト様のことを変えられるかもしれませんから」
ヘルムートの言葉は、リーゼロッテの心に深く染み込んだ。
誰からも必要とされず、役立たずだったはずの自分が、これほどまでに大切に思われている人の側にいることを望んでもらえる。
それがどれだけリーゼロッテの心を救うか、ヘルムートはきっと気づいていない。
「ご覧ください、奥様。あの若草色の尾はレティシア様です」
ヘルムートの言葉に、思わず涙を流しそうになったリーゼロッテの顔から目を背けるための口実のように、ヘルムートが空を指差した。
まだ夏の残る青空に一筋の若草色の線。それが一直線に執務室へと向かっていく。
「吉報でも、凶報でも、お二人のお心のままにご決断下さい」
ヘルムートはそう言うと、リーゼロッテに深く頭を下げた。
目尻に残った一雫の涙。
それを人差し指で拭えば、リーゼロッテはいつものように微笑みを作り上げる。
「ヘルムートさん。ありがとうございます」
リーゼロッテもヘルムートに負けず劣らず深く頭を下げた。ヘルムートがそれを見れば慌てふためくのも知っている。
それでも、せずにはいられない。
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