僕の選んだバレンタインチョコレートはその当日に二つに増えた

バレンタイン

　今年もあの季節がくる。世の中の女の子達が、キラキラしたピンク色のオーラを纏って、ショッピングセンターのチョコレート売場で、大好きな人に渡す勇気の塊を吟味する。

　自分の気持ちに見合った、甘い？少しほろ苦い？チョコレートの味。少し大人の彼にはブランデーの効いたもの？子供っぽい彼にはジョークめかしたものの方が良い？

　今年こそ、渡してみようか。いつも友達に囲まれていて、人気者の彼が、こんなもの受け取ってくれるだろうか。嫌な顔されたりしないだろうか。

　気持ちに応えて欲しいなんてわがままは言わない。何も言わずに受け取ってくれるだけで良い。毎年、あらゆるところから大量のチョコレートを持って帰って来るのを見てる。

　『一つ食べるか？』そう声をかけられる。女の子の気持ちのこもったもの、食べられるわけがない。『一つずつでもいいから、食べなよ。』なんて、気にもしてないふりをして、積み上がったチョコレートを見て見ぬふりをする。彼女達はみな勇者だ。自分の気持ちを伝えることのできた勇者。そんな勇気、どこから出てくる？