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第4部

エッチな夢を見たときの、アレ

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 テュコから第二騎士団での出来事を聞かされていたフォルシウスは、アシェルナオの発言はそのことに関係していると察して安心させるように微笑む。

 「成人したからといって、すぐ大人になるわけではないですよ」 

 「そうじゃなくて……僕、まだアレ、ない。男の子の……エッチな夢を見たときの、アレ……」

 「アレ……」

 「前の世界では、人より遅めだけど、あったんだ。僕、生まれなおして、おかしくなったのかな……」

 つまり、まだ精通がきていないと、羞恥に顔を赤らめながら吐露するアシェルナオに、フォルシウスは思わずアシェルナオの背中を叩く手を止めた。

 この世界ではほとんどが12歳までに精通する。16歳の誕生日を迎えても精通がないのは体のどこかがおかしいのではないか。アシェルナオは、そうフォルシウスに打ち明けたのだ。

 顔をあげて不安そうな瞳で自分を見上げるアシェルナオを自分の膝の上に乗せ、フォルシウスはその小さな背中をトン、トンと叩いた。

 「ナオ様は襲われて怖い思いをされたのです。それが性的な成長に影響を及ぼしているのは、不思議なことではありません」

 「おかしくないってこと?」

 「ええ。第二次性徴期は心の成長期でもありますから、体のホルモンバランスの崩れが心を不安定にさせることがあります。逆に心が性への恐怖を持ったままだと、第二次性徴期に影響を及ぼしてしまうのです」

 フォルシウスの言葉に、アシェルナオは体の力を抜いてその胸に凭れかかる。

 「おかしくなくて、よかった」

 「テュコから聞きました。エルとルルたちの閨を見てしまわれたんですよね」

 朝から、しかも3人での閨を見てしまったアシェルナオに、フォルシウスは同情を禁じえなかった。

 「うん。人のエッチを見たの、初めてで……生々しすぎて……。そのあとの記憶がなくて、気持ち悪くなって……。僕もあんなことするんだ、って、そう思うと不安で、怖くて」

 「ナオ様の気持ち、わかりますよ」

 「でもね、ヴァルとはしたいんだよ? ヴァルとイチャイチャしたい。いつか、エッチ、したい」

 「自然な感情です」

 「うん……」

 煮え切れないような返事をするアシェルナオに、フォルシウスはその顔を覗き込む。

 「やっぱり怖いですか?」

 「怖いのは怖いけど……。あのね、僕、あんまりこういう話を他の人から聞いていなくて……、あの……。前の世界では男の人は妊娠できない世界だったから……。本当に、できるの?」

 「ええ。ロザーリエは私が産みました。スヴェンもサリーが産みましたしね。この世界では珍しいことではないんですよ」

 「怖くない? 痛くない?」

 興味本位ではなく、怖いから、痛いのが嫌だからでもなく、真剣に考えているから知りたい。アシェルナオの気持ちはフォルシウスにはよくわかった。

 「ナオ様の前にいた世界では男性は妊娠できなかったのですよね? おそらく前の世界の男性には妊娠できる器官がなかったのだと思います。この世界の男性には女性の子宮にあたる器官があります。この世界に生れなおしたナオ様にもあるはずです。そこに陰茎を挿入され、精子を注がれることで妊娠します。愛する人の陰茎を受け入れるために男性でも女性と同じように内部が潤います。愛する人との行為は怖くはないです。出産は、魔力を持つ者ならばさほど痛みはありません」

 だからフォルシウスもストレートに説明する。

 陰茎とか挿入とか、生々しい言葉が並んだが、フォルシウスの淡々とした説明は教師の言葉のようで、アシェルナオに余計な感情を与えずに理解させていた。

 「そうなんだ」

 「はい。だから恐れずに、殿下にお任せになればいいんです。もしナオ様が怖がったり、嫌だと言ったら、殿下は無理に進められる方ではないですよね?」

 「うん。ヴァルは僕が嫌がることはしないよ? でも、僕は早くしたいんだ。だってね、30歳になっても誰ともエッチしてなかったら妖精になるでしょう? 僕、ヴァルを妖精にしたくないから」

 妖精?

 長い年月をかけて自然の中から生まれる精霊に対し、花や木の葉や朝露などの自然の中の美しい要素から生まれたり、純粋な心を持つ人間の願いや夢が具現化して生まれるという、あの妖精?

 ヴァレリラルドの、アシェルナオと結ばれたいという強い愛情と願いは、確かに妖精を生み出すのにふさわしい強くて純粋な願いなのかもしれない。

 けれど、そういう願いで妖精になるのなら、今までに幾人もの妖精が生れているに違いないが、フォルシウスはそんな話を聞いたことはなかった。

 しかし。

 「ヴァルが妖精になったら、いやだから」

 不安よりもヴァレリラルドへの愛情が上回るアシェルナオの必死な表情が可愛くて、フォルシウスはこの可愛さを誰かと共有したいと思ったが、盗聴防止の魔道具は自分たちの会話を閉じ込めていた。

 「フォルと話せてよかった。赤ちゃんのこととか、閨につながるようなことは、テュコもアイナもドリーンも、兄様も父様も母様も教えてくれないんだ」

 拗ねるように話すアシェルナオは、神殿に来た時よりも随分表情が柔らかくなっていた。

 「閨のことを教えてナオ様が怖いことを思い出さないように、あえてお教えしていないのでしょう。大事にされているのですよ。たくさん待ってもらっている殿下から、いろいろ教える喜びを奪えませんしね」

 「僕も、ヴァルに教えてほしい」

 結婚する日までたくさんイチャイチャして、心からヴァレリラルドと一つになりたいと願いながら結婚の日を迎えたい。

 けれどそのヴァレリラルドは今、魔獣討伐のために遠征中で、魔獣ではなく環境に苦戦しているという。

 ヴァレリラルドが悪条件の中で頑張っているなら、護衛騎士に護られて安全を確保されている自分はもっと頑張らなければ。

 「ありがとう、フォル」

 アシェルナオはフォルシウスにお礼を言うと、その膝から降り立った。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※

 いいね、エール、ありがとうございます。

 台風の被害はありませんでしたでしょうか。私は通勤困難で仕事を休みました。
 うちの職場はあいかわらずブラックです。就業時間以外の勤務はしていませんが、ますます上司の腹がブラック オブ ブラックで。
 今度の職場の暑気払いで上司に喧嘩売ってもよろしいでしょうか。 
 3月末まで頑張れるかな・・・。
 
 
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