369 / 412
第4部
エッチな夢を見たときの、アレ
しおりを挟む
テュコから第二騎士団での出来事を聞かされていたフォルシウスは、アシェルナオの発言はそのことに関係していると察して安心させるように微笑む。
「成人したからといって、すぐ大人になるわけではないですよ」
「そうじゃなくて……僕、まだアレ、ない。男の子の……エッチな夢を見たときの、アレ……」
「アレ……」
「前の世界では、人より遅めだけど、あったんだ。僕、生まれなおして、おかしくなったのかな……」
つまり、まだ精通がきていないと、羞恥に顔を赤らめながら吐露するアシェルナオに、フォルシウスは思わずアシェルナオの背中を叩く手を止めた。
この世界ではほとんどが12歳までに精通する。16歳の誕生日を迎えても精通がないのは体のどこかがおかしいのではないか。アシェルナオは、そうフォルシウスに打ち明けたのだ。
顔をあげて不安そうな瞳で自分を見上げるアシェルナオを自分の膝の上に乗せ、フォルシウスはその小さな背中をトン、トンと叩いた。
「ナオ様は襲われて怖い思いをされたのです。それが性的な成長に影響を及ぼしているのは、不思議なことではありません」
「おかしくないってこと?」
「ええ。第二次性徴期は心の成長期でもありますから、体のホルモンバランスの崩れが心を不安定にさせることがあります。逆に心が性への恐怖を持ったままだと、第二次性徴期に影響を及ぼしてしまうのです」
フォルシウスの言葉に、アシェルナオは体の力を抜いてその胸に凭れかかる。
「おかしくなくて、よかった」
「テュコから聞きました。エルとルルたちの閨を見てしまわれたんですよね」
朝から、しかも3人での閨を見てしまったアシェルナオに、フォルシウスは同情を禁じえなかった。
「うん。人のエッチを見たの、初めてで……生々しすぎて……。そのあとの記憶がなくて、気持ち悪くなって……。僕もあんなことするんだ、って、そう思うと不安で、怖くて」
「ナオ様の気持ち、わかりますよ」
「でもね、ヴァルとはしたいんだよ? ヴァルとイチャイチャしたい。いつか、エッチ、したい」
「自然な感情です」
「うん……」
煮え切れないような返事をするアシェルナオに、フォルシウスはその顔を覗き込む。
「やっぱり怖いですか?」
「怖いのは怖いけど……。あのね、僕、あんまりこういう話を他の人から聞いていなくて……、あの……。前の世界では男の人は妊娠できない世界だったから……。本当に、できるの?」
「ええ。ロザーリエは私が産みました。スヴェンもサリーが産みましたしね。この世界では珍しいことではないんですよ」
「怖くない? 痛くない?」
興味本位ではなく、怖いから、痛いのが嫌だからでもなく、真剣に考えているから知りたい。アシェルナオの気持ちはフォルシウスにはよくわかった。
「ナオ様の前にいた世界では男性は妊娠できなかったのですよね? おそらく前の世界の男性には妊娠できる器官がなかったのだと思います。この世界の男性には女性の子宮にあたる器官があります。この世界に生れなおしたナオ様にもあるはずです。そこに陰茎を挿入され、精子を注がれることで妊娠します。愛する人の陰茎を受け入れるために男性でも女性と同じように内部が潤います。愛する人との行為は怖くはないです。出産は、魔力を持つ者ならばさほど痛みはありません」
だからフォルシウスもストレートに説明する。
陰茎とか挿入とか、生々しい言葉が並んだが、フォルシウスの淡々とした説明は教師の言葉のようで、アシェルナオに余計な感情を与えずに理解させていた。
「そうなんだ」
「はい。だから恐れずに、殿下にお任せになればいいんです。もしナオ様が怖がったり、嫌だと言ったら、殿下は無理に進められる方ではないですよね?」
「うん。ヴァルは僕が嫌がることはしないよ? でも、僕は早くしたいんだ。だってね、30歳になっても誰ともエッチしてなかったら妖精になるでしょう? 僕、ヴァルを妖精にしたくないから」
妖精?
長い年月をかけて自然の中から生まれる精霊に対し、花や木の葉や朝露などの自然の中の美しい要素から生まれたり、純粋な心を持つ人間の願いや夢が具現化して生まれるという、あの妖精?
ヴァレリラルドの、アシェルナオと結ばれたいという強い愛情と願いは、確かに妖精を生み出すのにふさわしい強くて純粋な願いなのかもしれない。
けれど、そういう願いで妖精になるのなら、今までに幾人もの妖精が生れているに違いないが、フォルシウスはそんな話を聞いたことはなかった。
しかし。
「ヴァルが妖精になったら、いやだから」
不安よりもヴァレリラルドへの愛情が上回るアシェルナオの必死な表情が可愛くて、フォルシウスはこの可愛さを誰かと共有したいと思ったが、盗聴防止の魔道具は自分たちの会話を閉じ込めていた。
「フォルと話せてよかった。赤ちゃんのこととか、閨につながるようなことは、テュコもアイナもドリーンも、兄様も父様も母様も教えてくれないんだ」
拗ねるように話すアシェルナオは、神殿に来た時よりも随分表情が柔らかくなっていた。
「閨のことを教えてナオ様が怖いことを思い出さないように、あえてお教えしていないのでしょう。大事にされているのですよ。たくさん待ってもらっている殿下から、いろいろ教える喜びを奪えませんしね」
「僕も、ヴァルに教えてほしい」
結婚する日までたくさんイチャイチャして、心からヴァレリラルドと一つになりたいと願いながら結婚の日を迎えたい。
けれどそのヴァレリラルドは今、魔獣討伐のために遠征中で、魔獣ではなく環境に苦戦しているという。
ヴァレリラルドが悪条件の中で頑張っているなら、護衛騎士に護られて安全を確保されている自分はもっと頑張らなければ。
「ありがとう、フォル」
アシェルナオはフォルシウスにお礼を言うと、その膝から降り立った。
※※※※※※※※※※※※※※※※
いいね、エール、ありがとうございます。
台風の被害はありませんでしたでしょうか。私は通勤困難で仕事を休みました。
うちの職場はあいかわらずブラックです。就業時間以外の勤務はしていませんが、ますます上司の腹がブラック オブ ブラックで。
今度の職場の暑気払いで上司に喧嘩売ってもよろしいでしょうか。
3月末まで頑張れるかな・・・。
「成人したからといって、すぐ大人になるわけではないですよ」
「そうじゃなくて……僕、まだアレ、ない。男の子の……エッチな夢を見たときの、アレ……」
「アレ……」
「前の世界では、人より遅めだけど、あったんだ。僕、生まれなおして、おかしくなったのかな……」
つまり、まだ精通がきていないと、羞恥に顔を赤らめながら吐露するアシェルナオに、フォルシウスは思わずアシェルナオの背中を叩く手を止めた。
この世界ではほとんどが12歳までに精通する。16歳の誕生日を迎えても精通がないのは体のどこかがおかしいのではないか。アシェルナオは、そうフォルシウスに打ち明けたのだ。
顔をあげて不安そうな瞳で自分を見上げるアシェルナオを自分の膝の上に乗せ、フォルシウスはその小さな背中をトン、トンと叩いた。
「ナオ様は襲われて怖い思いをされたのです。それが性的な成長に影響を及ぼしているのは、不思議なことではありません」
「おかしくないってこと?」
「ええ。第二次性徴期は心の成長期でもありますから、体のホルモンバランスの崩れが心を不安定にさせることがあります。逆に心が性への恐怖を持ったままだと、第二次性徴期に影響を及ぼしてしまうのです」
フォルシウスの言葉に、アシェルナオは体の力を抜いてその胸に凭れかかる。
「おかしくなくて、よかった」
「テュコから聞きました。エルとルルたちの閨を見てしまわれたんですよね」
朝から、しかも3人での閨を見てしまったアシェルナオに、フォルシウスは同情を禁じえなかった。
「うん。人のエッチを見たの、初めてで……生々しすぎて……。そのあとの記憶がなくて、気持ち悪くなって……。僕もあんなことするんだ、って、そう思うと不安で、怖くて」
「ナオ様の気持ち、わかりますよ」
「でもね、ヴァルとはしたいんだよ? ヴァルとイチャイチャしたい。いつか、エッチ、したい」
「自然な感情です」
「うん……」
煮え切れないような返事をするアシェルナオに、フォルシウスはその顔を覗き込む。
「やっぱり怖いですか?」
「怖いのは怖いけど……。あのね、僕、あんまりこういう話を他の人から聞いていなくて……、あの……。前の世界では男の人は妊娠できない世界だったから……。本当に、できるの?」
「ええ。ロザーリエは私が産みました。スヴェンもサリーが産みましたしね。この世界では珍しいことではないんですよ」
「怖くない? 痛くない?」
興味本位ではなく、怖いから、痛いのが嫌だからでもなく、真剣に考えているから知りたい。アシェルナオの気持ちはフォルシウスにはよくわかった。
「ナオ様の前にいた世界では男性は妊娠できなかったのですよね? おそらく前の世界の男性には妊娠できる器官がなかったのだと思います。この世界の男性には女性の子宮にあたる器官があります。この世界に生れなおしたナオ様にもあるはずです。そこに陰茎を挿入され、精子を注がれることで妊娠します。愛する人の陰茎を受け入れるために男性でも女性と同じように内部が潤います。愛する人との行為は怖くはないです。出産は、魔力を持つ者ならばさほど痛みはありません」
だからフォルシウスもストレートに説明する。
陰茎とか挿入とか、生々しい言葉が並んだが、フォルシウスの淡々とした説明は教師の言葉のようで、アシェルナオに余計な感情を与えずに理解させていた。
「そうなんだ」
「はい。だから恐れずに、殿下にお任せになればいいんです。もしナオ様が怖がったり、嫌だと言ったら、殿下は無理に進められる方ではないですよね?」
「うん。ヴァルは僕が嫌がることはしないよ? でも、僕は早くしたいんだ。だってね、30歳になっても誰ともエッチしてなかったら妖精になるでしょう? 僕、ヴァルを妖精にしたくないから」
妖精?
長い年月をかけて自然の中から生まれる精霊に対し、花や木の葉や朝露などの自然の中の美しい要素から生まれたり、純粋な心を持つ人間の願いや夢が具現化して生まれるという、あの妖精?
ヴァレリラルドの、アシェルナオと結ばれたいという強い愛情と願いは、確かに妖精を生み出すのにふさわしい強くて純粋な願いなのかもしれない。
けれど、そういう願いで妖精になるのなら、今までに幾人もの妖精が生れているに違いないが、フォルシウスはそんな話を聞いたことはなかった。
しかし。
「ヴァルが妖精になったら、いやだから」
不安よりもヴァレリラルドへの愛情が上回るアシェルナオの必死な表情が可愛くて、フォルシウスはこの可愛さを誰かと共有したいと思ったが、盗聴防止の魔道具は自分たちの会話を閉じ込めていた。
「フォルと話せてよかった。赤ちゃんのこととか、閨につながるようなことは、テュコもアイナもドリーンも、兄様も父様も母様も教えてくれないんだ」
拗ねるように話すアシェルナオは、神殿に来た時よりも随分表情が柔らかくなっていた。
「閨のことを教えてナオ様が怖いことを思い出さないように、あえてお教えしていないのでしょう。大事にされているのですよ。たくさん待ってもらっている殿下から、いろいろ教える喜びを奪えませんしね」
「僕も、ヴァルに教えてほしい」
結婚する日までたくさんイチャイチャして、心からヴァレリラルドと一つになりたいと願いながら結婚の日を迎えたい。
けれどそのヴァレリラルドは今、魔獣討伐のために遠征中で、魔獣ではなく環境に苦戦しているという。
ヴァレリラルドが悪条件の中で頑張っているなら、護衛騎士に護られて安全を確保されている自分はもっと頑張らなければ。
「ありがとう、フォル」
アシェルナオはフォルシウスにお礼を言うと、その膝から降り立った。
※※※※※※※※※※※※※※※※
いいね、エール、ありがとうございます。
台風の被害はありませんでしたでしょうか。私は通勤困難で仕事を休みました。
うちの職場はあいかわらずブラックです。就業時間以外の勤務はしていませんが、ますます上司の腹がブラック オブ ブラックで。
今度の職場の暑気払いで上司に喧嘩売ってもよろしいでしょうか。
3月末まで頑張れるかな・・・。
145
お気に入りに追加
938
あなたにおすすめの小説
ギャルゲー主人公に狙われてます
白兪
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる