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第4部

お家に帰るまでがデートです

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 「もうお散歩デートは終わり?」

 シアンハウスの転移陣の間で、ヴァレリラルドに手を引かれて王城に帰るための転移陣に乗るアシェルナオは、しょんぼりした顔になる。

 アシェルナオの肩にのっているふよりんも、しょんぼりしている。

 「王城に戻ったらケイレブのところで各地の報告を聞いて、今後の方針を決めることになってるんだ」

 「そうなんだ」

 繋いだ手に、名残惜し気に力をこめるアシェルナオに、ヴァレリラルドは優しい目になる。

 「ナオも一緒に行くかい?」

 「いいの?」

 ぱぁぁっと表情を明るくするアシェルナオを見て、テュコがコホン、と咳をする。

 「ナオ様。殿下はお仕事なんですよ」

 「……はぁい」

 「私は視察という仕事だけど、浄化をしたナオは自分の口で精霊の泉の状況を報告したくない? それに、精霊の泉が瘴気に侵されたことによる各地の影響を知りたいんじゃないかい?」

 「したい。知りたい。テュコ、いいでしょう? お家に帰るまでがデートだからね?」

 ヴァレリラルドは『お仕事』を口実にした。

 だが嬉しくて『デート』の延長だと口にしてしまうアシェルナオに、テュコもフォルシウスも苦笑する。

 「お仕事中にイチャイチャはだめですよ?」

 「はーい。王城までの転移陣がぐにゃっとしても、ヴァルと一緒なら楽しいね」

 嬉しそうなアシェルナオを見ると、なんだかんだ邪魔をしても、主の幸せのためならばたまにはデートの許可を出してもいいかと思ってしまうテュコだった。

 


 統括騎士団の執務室のドアをヴァレリラルドが開けると、その隙間からアシェルナオがひょこっと顔を出す。

 正面の執務机にケイレブの姿があり、その周りにシーグフリード、ウルリク、ベルトルド、統括騎士団のクランツたちのアシェルナオの知った顔と、知らない顔の騎士たちもいた。

 執務室にいた者たちは王太子の登場は知っていたものの、アシェルナオとテュコ、フォルシウスも一緒であることに驚きを隠せなかった。

 「アシェルナオ? どうしたんだい?」

 むさくるしい騎士たちの目から隠すように、シーグフリードがアシェルナオの前に立つ。

 統括騎士団は腕の立つ者の集まりであるがゆえに武骨な者も少なくはなく、可愛い深窓の弟をその者たちの目に晒したくない兄心だった。

 「精霊の泉の報告をしに来ました」

 胸を張るアシェルナオに、

 「ナオも各地の影響が気になると思って連れて来た」
 
 ヴァレリラルドも言葉を添える。

 「ナオ様、元気になってよかった」

 ウルリクもアシェルナオのそばに歩み寄る。

 「ウルるんも、ルドっちも、心配かけてごめんね?」

 「いいえ、回復されて嬉しいですよ」
 
 「ナオ様、こちらに。精霊の泉の様子はどうでしたか?」

 ケイレブは席を立つと、ソファセットにアシェルナオを促す。

 アシェルナオが座ると、その横にヴァレリラルドが座り、その向かい側にケイレブが座った。

 「精霊の泉は前の姿に戻っていたよ。精霊たちがたくさんいて、オーブが虹みたいに弾けてすごく綺麗だった。それでね、ふよりんが仲間になったんだ」

 アシェルナオは肩に乗っているふよりんを見せる。

 「ほおおっ。初めて見たな」

 「ナオ様見せて見せて」

 「伝説の聖獣?」

 ケイレブやウルリクたちが身を乗り出してふよりんを見る。

 「キュゥ」

 ふよりんは一言鳴いて少しだけふよふよした。

 「よろしくって言ってますね」
 
 クランツが通訳する。

 『あたりー』

 『この人本物だねー』

 『あなどれないー』

 精霊たちは的確な通訳をしたクランツを興味津々で見ている。

 「精霊たちが、クランツすごいね、って言ってるよ。ふよりんの言ってることがわかるから」

 「クランツは前から動物の言葉がわかるんですよ」

 クランツの伴侶になったフォルシウスが代わりに答える。

 「うん、フォルは前からクランツのことを馬なみだって言ってたよね」

 アシェルナオは穢れを知らないキラキラの瞳で、後ろに立つフォルシウスを見上げる。

 「え、あ、ああ、そういえば」

 昔そういう会話をした記憶が確かにあるフォルシウスは顔を赤らめる。

 「前から、って。幼かったナオ様に馬なみのナニの話をしていたのか?」

 「しとやかな美人なのにナニの話をするんだ」

 騎士たちがざわつき、フォルシウスはいたたまれずにさらに顔を赤らめる。

 「すまない。私が馬なみなばかりにフォルに恥ずかしい思いをさせたな」

 フォルシウスを案じるクランツだが、言い方は男前なのだがナニ自慢になっているのを本人は気づいていなかった。

 「でかけりゃいいってもんじゃないからな」

 「でかくてフォルシウスが嫁に来るならでかいほうがいいのか」

 「ちくしょう、遺伝のバカヤロウ」

 またもざわつく騎士たち。

 「僕、何か変なこと言った?」

 小首を傾げるアシェルナオに、一同は一斉に首を振った。

 「うちのナオ様がすみません」

 本日2度目のお詫びをするテュコだった。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※

 お声がけ、いいね、エール、ありがとうございます。おかげでまだ生きています。

 昨日も今日も安定の超早出&残業(無給&無給)
 69歳再任用の相方さんは「休みます」の一言で休み放題。なぜその分のしわ寄せが私に来るのか。
 どうにも解せない。
 「昨日も休まれたので、その分の仕事を終わらせるために私は早出と残業をしました。せめて迷惑をかけました、の、一言くらいないですか?」
 「はぁ、そうですね。ないですね」
 沈黙が落ちる朝の職場。
 「私はことりさんの味方です。応援しています」
 あとでそっと囁いた直属の上司。
 ていうか、そっと応援するレベルの直属の上司って……
 
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