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第4部
この人間こわいねー
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狙いはアシェルナオ。
根拠はないものの、シーグフリードはある種の確信を持ってヴァレリラルドを見つめ返す。
「まさか……」
アシェルナオも狙われる可能性がある。
それは想定していが、アシェルナオそのものが狙いだと言われて、ヴァレリラルドは言葉を失くした。
「ナオ様なら狙われてもおかしくはないが……それって、やばすぎないか?」
「やばいってもんじゃない」
ウルリクとベルトルドも事の重大さに息を飲む。
「なぜそう思うんだ、シグ」
ヴァレリラルドに問われて、
「推察の域を出ないが……」
シーグフリードはヴァレリラルド、ウルリク、ベルトルドを見回して言った。
「この事件の始まりは、ラルを庇って愛し子が消えてしまったことを発端としていると考えている。犯人は愛し子の消失で計り知れない喪失感を味わった。その喪失感を埋めるために最初の事件を起こした。だから愛し子の消失から最初の事件までには時間がかかった。最初の事件から次の事件までにも一定の時間が空いていたはずだ。だが、事件を起こすことに慣れてくると、次の事件までの間隔は短くなった。そして明らかに6年前から被害者が増えている。そのせいで精霊の泉に落とされた死体が夥しい数になったのではないかと思う」
「6年前……」
「アシェルナオが洗礼の儀式を受けて精霊の加護をもらったのが6年前だ。禁忌の魔道具を使う者は精霊王に近い存在らしいから、アシェルナオが精霊の加護を受けたことで愛し子の存在を知られた可能性が高い」
そして、起きた貴族の子息の誘拐事件……。
「精霊王に近い存在が犯人なのか?」
「正確に言うと、精霊王に近い存在に近い存在、だ」
「うん? 精霊王に近い存在に近い存在? それって精霊王に近いのか? 遠いのか?」
うん? うん? と、ウルリクはベルトルドに向かって首を捻る。
「精霊王とは遠いな」
それを可愛いと思いながらベルトルドが答えた。
「その凶悪な者が禁忌の魔道具を持っているのは厄介だな」
「ああ。それに、事件の戦利品として死体そのものを保管していた犯人が、それを精霊の泉に落とした。戦利品をなくした犯人が、再び集め始めないともかぎらない」
「どうにかしないと」
「そのためにも、あいつらには頑張ってもらわないと」
シーグフリードが呟くと、
「それで、シグ。ナオはどんな状況だ?」
アシェルナオの様子が気になるヴァレリラルドが心配げに尋ねる。
「よほどショックだったらしくて、部屋から出てこない。一晩明けたからテュコたちが部屋に入っていると思うが、アシェルナオはあれでなかなか頑固だからな」
「ああ、知ってる。あとで顔を出すよ。本当はずっとついていたいんだがな」
王太子ともなれば、自由に行動することもままならなかった。
「今はそっとしておいてやりたいところだが、あとで顔を出してくれるとありがたいよ。アシェルナオもラルには側にいてほしいと思ってるはずだから」
日がだいぶ高くなってから、テュコは慎重にアシェルナオの部屋のドアを開けた。
その後ろからアイナとドリーンも緊張気味に続く。
「ナオ様、お目覚めですか?」
寝ては覚め、悲しみの底に沈み、微睡んでは夢の中でも悲しみに浸る。
それを繰り返しているうちに、
「ナオ様、お目覚めですか?」
寝台の周りをぐるりと囲った天蓋カーテンの向こう側でテュコの声が聞こえた。
「……独りでいたい」
泣いていたせいで掠れた声で呟くアシェルナオに、精霊たちは顔を見合わせる。
『ナオ、ひとりでいたいって』
『ナオのこと心配』
『でもナオの願いはきかなくちゃ』
『どうする?』
『ビリビリしよう』
顔を見合わせた精霊たちは、それぞれがウンウンと頷いた。
部屋のカーテンは閉められて薄暗く、アシェルナオの寝台の周りにも帳が降りたままだった。
声をかけても寝台の中からは返事はなく、テュコはアイナとドリーンに目配せをする。
「ナオ様、少し風を通しますよ」
寝台に向けてテュコが声をかけるのと同時に、アイナとドリーンがカーテンを開け、少しだけ窓を開ける。
ひんやりとした風が、重く停滞した空気を動かした。
「お寒くはないですか?」
言いながら天蓋カーテンに手をかけたテュコの指先にビリっとした刺激が走る。
『まだそっとしてあげて』
『ナオのことはぼくたちがみてるからー』
『ねー』
精霊たちが天蓋カーテンの合わせ目から顔を覗かせて言ったが、テュコには見えないし、聞こえなかった。
「精霊たちですか」
ため息を吐くテュコ。
『そうだよー』
『ぼくたちだよー』
「精霊たちなら、ナオ様の願いでやっていることだろう。だが、ナオ様が体に差し障りがあるまで籠城していたら、ちゃんと私たちを呼べ。約束を違えたら精霊王にゲンコツだからな」
テュコは腕組みをしながら見えない精霊たちに指示した。
精霊王を崇めないテュコにとって、目に見えない精霊など空気の塊と同じだった。
『この人間は本気でゲンコツするよー』
『この人間こわいねー』
『ナオが弱らないようにぼくたちが癒してるから』
『心配しなくてもいいよー』
『だから、ナオがいいって言うまではビリビリするよー』
※※※※※※※※※※※※※※※※
エール、いいねをくださり、ありがとうございますm(_ _ )m
仕事が忙しくて、午後から絶食19時間で健康診断に行ってきました。
不遇な状態で健康診断に行ったら、そこでありえない不遇に遭遇。
クリニックの人たちに謝られましたが、健康診断でこんなに不健康になることって、ある?(´;ω;`)ウゥゥ
更新したのに、お話の場所を間違えてましたよ・・・m(_ _ )m
根拠はないものの、シーグフリードはある種の確信を持ってヴァレリラルドを見つめ返す。
「まさか……」
アシェルナオも狙われる可能性がある。
それは想定していが、アシェルナオそのものが狙いだと言われて、ヴァレリラルドは言葉を失くした。
「ナオ様なら狙われてもおかしくはないが……それって、やばすぎないか?」
「やばいってもんじゃない」
ウルリクとベルトルドも事の重大さに息を飲む。
「なぜそう思うんだ、シグ」
ヴァレリラルドに問われて、
「推察の域を出ないが……」
シーグフリードはヴァレリラルド、ウルリク、ベルトルドを見回して言った。
「この事件の始まりは、ラルを庇って愛し子が消えてしまったことを発端としていると考えている。犯人は愛し子の消失で計り知れない喪失感を味わった。その喪失感を埋めるために最初の事件を起こした。だから愛し子の消失から最初の事件までには時間がかかった。最初の事件から次の事件までにも一定の時間が空いていたはずだ。だが、事件を起こすことに慣れてくると、次の事件までの間隔は短くなった。そして明らかに6年前から被害者が増えている。そのせいで精霊の泉に落とされた死体が夥しい数になったのではないかと思う」
「6年前……」
「アシェルナオが洗礼の儀式を受けて精霊の加護をもらったのが6年前だ。禁忌の魔道具を使う者は精霊王に近い存在らしいから、アシェルナオが精霊の加護を受けたことで愛し子の存在を知られた可能性が高い」
そして、起きた貴族の子息の誘拐事件……。
「精霊王に近い存在が犯人なのか?」
「正確に言うと、精霊王に近い存在に近い存在、だ」
「うん? 精霊王に近い存在に近い存在? それって精霊王に近いのか? 遠いのか?」
うん? うん? と、ウルリクはベルトルドに向かって首を捻る。
「精霊王とは遠いな」
それを可愛いと思いながらベルトルドが答えた。
「その凶悪な者が禁忌の魔道具を持っているのは厄介だな」
「ああ。それに、事件の戦利品として死体そのものを保管していた犯人が、それを精霊の泉に落とした。戦利品をなくした犯人が、再び集め始めないともかぎらない」
「どうにかしないと」
「そのためにも、あいつらには頑張ってもらわないと」
シーグフリードが呟くと、
「それで、シグ。ナオはどんな状況だ?」
アシェルナオの様子が気になるヴァレリラルドが心配げに尋ねる。
「よほどショックだったらしくて、部屋から出てこない。一晩明けたからテュコたちが部屋に入っていると思うが、アシェルナオはあれでなかなか頑固だからな」
「ああ、知ってる。あとで顔を出すよ。本当はずっとついていたいんだがな」
王太子ともなれば、自由に行動することもままならなかった。
「今はそっとしておいてやりたいところだが、あとで顔を出してくれるとありがたいよ。アシェルナオもラルには側にいてほしいと思ってるはずだから」
日がだいぶ高くなってから、テュコは慎重にアシェルナオの部屋のドアを開けた。
その後ろからアイナとドリーンも緊張気味に続く。
「ナオ様、お目覚めですか?」
寝ては覚め、悲しみの底に沈み、微睡んでは夢の中でも悲しみに浸る。
それを繰り返しているうちに、
「ナオ様、お目覚めですか?」
寝台の周りをぐるりと囲った天蓋カーテンの向こう側でテュコの声が聞こえた。
「……独りでいたい」
泣いていたせいで掠れた声で呟くアシェルナオに、精霊たちは顔を見合わせる。
『ナオ、ひとりでいたいって』
『ナオのこと心配』
『でもナオの願いはきかなくちゃ』
『どうする?』
『ビリビリしよう』
顔を見合わせた精霊たちは、それぞれがウンウンと頷いた。
部屋のカーテンは閉められて薄暗く、アシェルナオの寝台の周りにも帳が降りたままだった。
声をかけても寝台の中からは返事はなく、テュコはアイナとドリーンに目配せをする。
「ナオ様、少し風を通しますよ」
寝台に向けてテュコが声をかけるのと同時に、アイナとドリーンがカーテンを開け、少しだけ窓を開ける。
ひんやりとした風が、重く停滞した空気を動かした。
「お寒くはないですか?」
言いながら天蓋カーテンに手をかけたテュコの指先にビリっとした刺激が走る。
『まだそっとしてあげて』
『ナオのことはぼくたちがみてるからー』
『ねー』
精霊たちが天蓋カーテンの合わせ目から顔を覗かせて言ったが、テュコには見えないし、聞こえなかった。
「精霊たちですか」
ため息を吐くテュコ。
『そうだよー』
『ぼくたちだよー』
「精霊たちなら、ナオ様の願いでやっていることだろう。だが、ナオ様が体に差し障りがあるまで籠城していたら、ちゃんと私たちを呼べ。約束を違えたら精霊王にゲンコツだからな」
テュコは腕組みをしながら見えない精霊たちに指示した。
精霊王を崇めないテュコにとって、目に見えない精霊など空気の塊と同じだった。
『この人間は本気でゲンコツするよー』
『この人間こわいねー』
『ナオが弱らないようにぼくたちが癒してるから』
『心配しなくてもいいよー』
『だから、ナオがいいって言うまではビリビリするよー』
※※※※※※※※※※※※※※※※
エール、いいねをくださり、ありがとうございますm(_ _ )m
仕事が忙しくて、午後から絶食19時間で健康診断に行ってきました。
不遇な状態で健康診断に行ったら、そこでありえない不遇に遭遇。
クリニックの人たちに謝られましたが、健康診断でこんなに不健康になることって、ある?(´;ω;`)ウゥゥ
更新したのに、お話の場所を間違えてましたよ・・・m(_ _ )m
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