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第4部
お揃いコーデ
しおりを挟むアシェルナオは緑の髪にグレーに近い青い瞳を持つマロシュを見つめる。だが見覚えがなくて首を振った。
「ごめんねぇ、覚えてないみたい」
「ヒントは『お姉ちゃん』」
「ああ、お披露目の時に声をかけてくれた人?」
そう言えばお披露目の時に『お姉ちゃん』と声をかけられて手を振った記憶があったが、おっきいひとたちに手を振ったあとの記憶があやふやなアシェルナオだった。
「そうだけど、お姉ちゃんだよね?」
自分より年上のマロシュにお姉ちゃんと言われて不思議に思いながらも、
「お姉ちゃんは、こう見えてもやんちゃな男の子だからお姉ちゃんじゃないよ? あれ?」
そう言えばこんな感じのやり取りをした記憶があって、アシェルナオは首を傾げる。
「やっぱりお姉ちゃんて言ってる」
クスクスと笑うマロシュ。
「あっ、前にヴァルと行ったリータ村の、子供?」
「マロシュです。ここで母さんも働いています。ナオ様のことを昨日初めて知って、母さん昨日から泣きっぱなしで」
マロシュの後ろでカロナが頭を下げる。
「リータ村ではお世話になりました」
アシェルナオもペコリと頭を下げる。
「ナオ様が戻って来られて、殿下に笑顔が戻られて、本当によかったです」
そう言いながらまた涙するカロナに、アシェルナオは、うん、と頷く。
「ヴァルに笑顔がなくなっていたのは僕のせいだから、これからはヴァルが笑っていられるように側にいるからね」
「笑えないくらい幸せだ」
カロナを安心させるアシェルナオだったが、その言葉にヴァレリラルドは胸が詰まって涙が出そうだった。
「ヴァル、あれからお魚をかぶりついて食べてない。また食べたいねぇ」
魚を食べながら泣いた日が懐かしくて、ヴァレリラルドを見上げるアシェルナオ。
「ああ。また行こう」
アシェルナオをぎゅっと抱きしめて、ヴァレリラルドは言った。
「はいはい、仕事の話をするぞ。各自持ち場に着く。ウル、新聞を片付けて。ラル、アシェルナオを離せ。アシェルナオ、そこの席に座って。ルドも席に着く」
シーグフリードの指示で各自が動く。
アシェルナオも言われた席に座った。
「これから転移陣でシアンハウスに行ってもらう。メンバーはラル、ウル、ルド、それにアシェルナオ、テュコ。それに護衛騎士たちとアイナとドリーンだ。イクセル、同行させる護衛騎士は決まったか?」
「はい。私以下、ファルク、カレヴィ、フリッツ、リューク、ピエルが行きます」
イクセルが即答する。
「懐かしい名前がある」
ヴァレリラルドに小さな声で報告するアシェルナオ。
そのしぐさが可愛くて、ウルリクとベルトルドの目じりが下がる。
「聖域の森の、瘴気の発生している手前でまずアシェルナオが浄化を行う。森へ入れるようになったら少しずつ泉に近づくんだ。泉の近くにはアシェルナオとラルを含めてごく少数で行ってもらう。そのあとに護衛騎士、サミュエルが特別隊を編成したシアンハウス騎士団が後方支援にあたる。決して瘴気に触れるんじゃないぞ」
シーグフリードが厳しい顔で楕円形の大きなテーブルに座る人々を見回す。
「はーい」
シーグフリードの言いつけを守るという意味のアシェルナオの返事は、場の空気を和ませた。
扉がノックされて、ナルスが扉を開ける。
そこにいる者を確認すると、今度は慎重にイヴァンに取り次いだ。
「殿下、統括精霊神殿からオルドジフ殿とフォルシウス殿がお見えです」
ヴァレリラルドが頷くと、ナルスが大きく扉を開けてオルドジフたちを室内に通した。
「ドーさん」
入室してきたオルドジフにアシェルナオが駆け寄る。
「元気そうな顔をしている」
オルドジフはアシェルナオの様子を見て安心した様子で抱きしめる。
「元気になったよ。フォルも、昨日は癒してくれてありがとう」
オルドジフに抱きしめられながら、アシェルナオは衣装箱を持ったフォルシウスに声をかけた。
「気休め程度ですが、お元気になられてよかったです」
「兄様、ドーさんとフォルも一緒に行くのですか?」
アシェルナオはシーグフリードに期待を込めた視線を向ける。
「私は行かないよ」
オルドジフはアシェルナオに首を振ると、ヴァレリラルドを見つめる。「グルンドライスト様に託されたものを持って参りました」
「グルンドライスト殿から? なんだろう?」
立ち上がるヴァレリラルドに、フォルシウスは楕円形のテーブルに衣装箱を置くと蓋を開ける。
それは真っ白のローブだった。
「ローブ?」
アシェルナオも箱の中身を見る。
「このローブには瘴気を防ぐ精霊神殿秘匿の魔法陣が組み込まれています。瘴気に侵された聖域の森の精霊の泉を浄化に行かれるアシェルナオ様と王太子殿下にお渡しするように仰せつかりました」
フォルシウスが説明すると、オルドジフは白いローブを取り出してアシェルナオに着せる。
フードのついた、裾まである白いローブはところどころキラキラと輝いていて、そこが魔法陣の起点になっているようだった。
白いローブの下には黒いローブがあり、ヴァレリラルドもそれを纏う。
やはりところどころにキラキラ輝くものがあった。
「黒と白。色違いだけどお揃いコーデだね」
おそらくファッション用語なのだろうが、耳慣れない言葉を紡ぐアシェルナオのはしゃいだ声が、やはり場を和ませるのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※
コンディショナーのボトルが空になったので詰め替えたら、間違ってシャンプーを入れてしまいました。(*ノωノ)
いつも、いいね、エール、ありがとうございます(。uωu))ペコリ
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