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第3部
監視と公子
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翌朝、ウジェーヌたちは1階の食堂で朝食を摂っていた。
「私たちはアレクサンデション兄弟の勤め先を調べます。大人数で動くのは目立ちますから公子はエイセルと王都見物でもしていてください」
アグレルが小声で告げる。
「……わかった」
昨日の元気な様子とは一変して、焼きたてのパンを手でふわふわと触りまくっているウジェーヌの表情は消沈していた。
「元気ないな、ウジェ」
へディーンに心配され、ウジェーヌは首を振る。
「元気がないわけじゃないけど、まだ疲れが抜けてないみたいなんだ」
「じゃあ午前中はゆっくりしているといい。午後から街に出てみようか」
エイセルの言葉に、ウジェーヌは頷く。
「では食事が終わったら我らは出かけるぞ。馬車を使うから、王都見物は徒歩か乗合馬車にしてくれ」
「ああ、そうする」
おとなしいウジェーヌに代わってエイセルが返事をした。
「そうか。冒険者ギルドと広場周辺の散策と宿探しの三手に分かれていたのか。不審な点はないようだな」
王城の王太子の執務室ではヴァレリラルドたちがマロシュの報告を聞いていた。
「アーベントロート騎士団の騎士が冒険者のふりをして近くで聞き耳を立てていたそうですが、手近にいた冒険者にギルドの使い方やお勧めの依頼などを聞いて、しばらく依頼を見てギルドを出たそうです」
「えー、ただの冒険者なのか。ちぇっ」
がっかりした声をあげるウルリク。
「ちぇっ、って。その言い方もおかしいぞ、ウル」
「俺はおかしくない。ちょっと暴れたかっただけだから、ちぇっ、なものは、ちぇっ、だ」
「よしよし、今度俺たちも冒険者ギルドで魔獣討伐クエストがあったら受けような」
拗ねるウルリクを宥めるベルトルドはどこか楽しそうだった。
「なんとなく気になるな。マロシュ、念のためアーベントロート騎士団やブレンドレルと共にしばらく動向を観察してくれ」
「はいっ」
ヴァレリラルドの指示にマロシュが気を付けの姿勢になる。
「私も、騎士の中に1人だけ貴族風の男がいることが気になる」
シーグフリードもまた、何事もなく終わるとは思えないでいた。
宿から馬車に乗って冒険者ギルドに向かったアグレルたち4人は、そこで王都近郊のダンジョンで出現する魔獣がドロップする魔石の採取という依頼を受けると、まっすぐにダンジョンに向かった。
「ただの冒険者なんでしょうか」
ブレンドレルと馬を並べながらマロシュが呟く。
前方にはエクルンド公国から来た冒険者たちが乗った馬車が走っていて、2人は見失わないっ程度に距離をあけて追跡していた。
「まだ油断できないと殿下がおっしゃっていたのなら、監視を怠らないことだ」
ブレンドルが言うと、
『我らもただの冒険者だとは思えません』
馬車の前方を行くアーベントロート騎士団のエグモントの声が通信機から聞こえてきた。
『特に紺色の髪の男の目つきが、覚悟をしている者の目に見えました』
同じくアーベントロート騎士団のホラーツの声がした。
他にもランベルト、オスヴィンというアーベントロート騎士団の騎士も監視に加わっている。
宿に残った2人には、アーベントロート騎士団のライマーと、第二騎士団のニスーが監視していた。
「殿下の側近のシーグフリード様も気になると言っていました」
「ああ。何かあるに違いない。決して見失うな」
ブレンドレルの言葉に、みなが気合の入った声で応えた。
昼まで部屋で休んでいた居残り組は、食堂で昼食を摂ると王城の周辺を散策し、ウジェーヌの希望で中央統括神殿と大聖堂を見物した。
「王立劇場にも行ってみますか? 素晴らしい建築物だそうですよ」
エイセルが提案すると、
「いや。今日はもう宿に戻る」
普段なら喜んで誘いに乗るはずのウジェーヌは首を振る。
「まだお疲れですか?」
「疲れというか……エクルンドに帰りたくなってるよ」
悲し気に睫毛を伏せるウジェーヌ。
「ホームシックでしょう。初めて国を出られて、それも慣れない環境ですからね。夕食は貴族も行くような店に行きましょうか」
周囲からの愛情たっぷりに育ったウジェーヌには、数日とはいえ平民と変わらない生活が堪えたのだとエイセルは思った。
「いや、私の我儘にみなを巻き込んでいるんだ。これ以上我儘は言わないよ」
「我儘など……では、他に行きたいところ、したいことはありませんか?」
自分でエルとルルを探したい。
そう言いたいウジェーヌだったが、自分の立場を考えると口に出せなかった。
「そうだな……。中央統括神殿は立派だったが、平民たちの行く精霊神殿を見てみたい」
「わかりました。では一旦宿に戻り、宿の者に聞いてみましょう」
「私たちはアレクサンデション兄弟の勤め先を調べます。大人数で動くのは目立ちますから公子はエイセルと王都見物でもしていてください」
アグレルが小声で告げる。
「……わかった」
昨日の元気な様子とは一変して、焼きたてのパンを手でふわふわと触りまくっているウジェーヌの表情は消沈していた。
「元気ないな、ウジェ」
へディーンに心配され、ウジェーヌは首を振る。
「元気がないわけじゃないけど、まだ疲れが抜けてないみたいなんだ」
「じゃあ午前中はゆっくりしているといい。午後から街に出てみようか」
エイセルの言葉に、ウジェーヌは頷く。
「では食事が終わったら我らは出かけるぞ。馬車を使うから、王都見物は徒歩か乗合馬車にしてくれ」
「ああ、そうする」
おとなしいウジェーヌに代わってエイセルが返事をした。
「そうか。冒険者ギルドと広場周辺の散策と宿探しの三手に分かれていたのか。不審な点はないようだな」
王城の王太子の執務室ではヴァレリラルドたちがマロシュの報告を聞いていた。
「アーベントロート騎士団の騎士が冒険者のふりをして近くで聞き耳を立てていたそうですが、手近にいた冒険者にギルドの使い方やお勧めの依頼などを聞いて、しばらく依頼を見てギルドを出たそうです」
「えー、ただの冒険者なのか。ちぇっ」
がっかりした声をあげるウルリク。
「ちぇっ、って。その言い方もおかしいぞ、ウル」
「俺はおかしくない。ちょっと暴れたかっただけだから、ちぇっ、なものは、ちぇっ、だ」
「よしよし、今度俺たちも冒険者ギルドで魔獣討伐クエストがあったら受けような」
拗ねるウルリクを宥めるベルトルドはどこか楽しそうだった。
「なんとなく気になるな。マロシュ、念のためアーベントロート騎士団やブレンドレルと共にしばらく動向を観察してくれ」
「はいっ」
ヴァレリラルドの指示にマロシュが気を付けの姿勢になる。
「私も、騎士の中に1人だけ貴族風の男がいることが気になる」
シーグフリードもまた、何事もなく終わるとは思えないでいた。
宿から馬車に乗って冒険者ギルドに向かったアグレルたち4人は、そこで王都近郊のダンジョンで出現する魔獣がドロップする魔石の採取という依頼を受けると、まっすぐにダンジョンに向かった。
「ただの冒険者なんでしょうか」
ブレンドレルと馬を並べながらマロシュが呟く。
前方にはエクルンド公国から来た冒険者たちが乗った馬車が走っていて、2人は見失わないっ程度に距離をあけて追跡していた。
「まだ油断できないと殿下がおっしゃっていたのなら、監視を怠らないことだ」
ブレンドルが言うと、
『我らもただの冒険者だとは思えません』
馬車の前方を行くアーベントロート騎士団のエグモントの声が通信機から聞こえてきた。
『特に紺色の髪の男の目つきが、覚悟をしている者の目に見えました』
同じくアーベントロート騎士団のホラーツの声がした。
他にもランベルト、オスヴィンというアーベントロート騎士団の騎士も監視に加わっている。
宿に残った2人には、アーベントロート騎士団のライマーと、第二騎士団のニスーが監視していた。
「殿下の側近のシーグフリード様も気になると言っていました」
「ああ。何かあるに違いない。決して見失うな」
ブレンドレルの言葉に、みなが気合の入った声で応えた。
昼まで部屋で休んでいた居残り組は、食堂で昼食を摂ると王城の周辺を散策し、ウジェーヌの希望で中央統括神殿と大聖堂を見物した。
「王立劇場にも行ってみますか? 素晴らしい建築物だそうですよ」
エイセルが提案すると、
「いや。今日はもう宿に戻る」
普段なら喜んで誘いに乗るはずのウジェーヌは首を振る。
「まだお疲れですか?」
「疲れというか……エクルンドに帰りたくなってるよ」
悲し気に睫毛を伏せるウジェーヌ。
「ホームシックでしょう。初めて国を出られて、それも慣れない環境ですからね。夕食は貴族も行くような店に行きましょうか」
周囲からの愛情たっぷりに育ったウジェーヌには、数日とはいえ平民と変わらない生活が堪えたのだとエイセルは思った。
「いや、私の我儘にみなを巻き込んでいるんだ。これ以上我儘は言わないよ」
「我儘など……では、他に行きたいところ、したいことはありませんか?」
自分でエルとルルを探したい。
そう言いたいウジェーヌだったが、自分の立場を考えると口に出せなかった。
「そうだな……。中央統括神殿は立派だったが、平民たちの行く精霊神殿を見てみたい」
「わかりました。では一旦宿に戻り、宿の者に聞いてみましょう」
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