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第2部

ご褒美セ(再び)

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 ヴァレリラルドが率いる統括騎士団第二陣、総勢33名は王城の騎士棟の地下にある転移陣の間に集結していた。

 「殿下、久しぶりです。微力ながら加勢に参りました」

 フォルシウスがヴァレリラルドの前に進み出る。

 しばらくみないうちに一段と落ち着いた雰囲気になった美貌の騎士に、ヴァレリラルドは頷く。

 「フォルシウス、久しぶりだな。今回は協力の申し出、ありがたく思う。私が討伐に参戦するということは、必ず成果をあげて生還しなければならないことだ。そのための力添えを頼む」

 ヴァレリラルドはフォルシウスの目を見ながら頭を下げる。

 「誰もがそう願っています。私もそうなるように尽力いたします」

 右胸に手を当てて臣下の礼を執るフォルシウスに、統括騎士団の騎士たちも小さな歓声をあげる。

 「フォルシウス! 久しぶりだな。また一緒に任務ができて嬉しいよ」

 かつての同僚のメランデルをはじめ、フォルシウスを知っている者たちが、再会とともにその能力が戦力に加わることを喜んでいた。

 「神殿騎士団にいたが、第一騎士団の時のようには訓練できていなかったから体がなまっているかもしれない。足を引っ張らないようにがんばるが、よろしく頼む」

 「フォルシウス、相変わらず美人だな」

 「フォルシウスの参加はありがたい。癒し手は1人でも多いほうがいいからな」

 「クランツと結婚したんだって? クランツの奴、すました顔で自慢してるぞ」

  騎士たちがフォルシウスを取り囲む。

 「根負けした」

 クランツがどんな風に惚気ているのかよくわかっているフォルシウスは、気恥ずかしさを隠すために苦々しい表情をした。

 「昔からフォルシウスに執着していたからな。クランツの粘り勝ちだ」

 フォルシウスと騎士たちが一頻り再会を喜ぶと、

 「向こうに着いたらすぐに魔獣と戦うことになると思う。みな、気を引き締めて、準備を怠るな。誰一人欠けることなく生還するぞ」

 ヴァレリラルドの発した言葉に、騎士たちは一斉に応っ、と声をあげた。




 ソーメルスの砦に転移してきたヴァレリラルドたちは、出迎えたマフダルに先導されて本部になっている広間に向かった。

 「殿下、申し訳ない。今回は俺たちだけでは手に負えないようだ」

 ヴァレリラルドが広間に入るなり、ケイレブが神妙な顔で言った。

 「呼ぶつもりがなかったような言い方だ。私は最初から帯同すると言っていたが?」

 ヴァレリラルドは緊張した場面でも普段と変わらぬ様子で、それがその決意の強さを物語っていることをケイレブは感じ取った。

 「フォル、どうして」

 クランツはヴァレリラルドの後ろに控えるフォルシウスを見つける。

 「ああ、その……」

 急な同行だったためクランツに連絡する暇もなく来てしまったフォルシウスは、アシェルナオに頼まれたからだとは言えずに口ごもる。

 「そうか。少しでも俺のそばにいたかったのか。苦節13年、蹴られても殴られても言い寄った甲斐があって結婚できただけでも幸せなのに、これ以上俺を幸せな気持ちにしてくれるなんて。帰ったら熱いご褒美セ」

 「手短に状況を説明します!」

 マフダルがクランツの言葉を遮る。「魔獣の群れですが、現在はこの地点まで到達していると思われます」

 マフダルがソーメルスの砦周辺の地図を広げ、砦の外にある広がる山岳地帯の一帯を指さす。

 「麓に来るまでに時間にしてあと1時間程度か」

 「マフダル、魔獣は麓のどこに出てくると思う?」

 ヴァレリラルドの質問に、マフダルは地図を指さす。

 「足の速い小型、中型が先行し、大型はその後方にいるようです。深い谷底を通っているようで、ここがその突き当り。バビツカ街道と交わるところです。ここは少し開けた道ですから、ここで待ち伏せたいと思います。また、その手前でこっちの経路に流れた場合、カシュナという地区に出ると考えられます。また、カシュナではなく、こっちのクノトコという地区に回り込む可能性もあります」

 「バビツカ、その東がカシュナ、さらに東にクノトコか。砦から馬で20分、地区間は馬で10分弱だな。俺たちはバビツカに行く。街道を塞いで逆方向に魔獣の群れが流れをせき止め、この広くなっているところで仕留めるぞ」

 ケイレブがそう言うと、ケイレブの部隊がおうっ!と声を出す。

 「エンロート騎士団はカシュナに行きましょう。私はここで後方支援をする。頼むぞ、イェールオース」

 マフダルの言葉に、イェールオースをはじめエンロート騎士団たちがおうっ!と声をあげる。

 「では私たちはクノトコに行く。みんな、頼むぞ」

 ヴァレリラルドの部隊もおうっ!と声をあげ、士気があがった。

 「準備ができ次第出発を。各部隊にエンロート騎士団の案内と、従卒、物資を積んだ荷馬車をつけます。何かあればまめに連絡を。後陣としてサミュエル殿とシアンハウス騎士団が加勢してくれることになっています。戦力が足りないところ、あらたに魔獣が出現したところに行ってもらうつもりです。何かあればすぐに連絡を」

 マフダルの言葉に、総勢100名の騎士たちはしっかりと頷いた。

 
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