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第2部
「ヴァル……」「ナオ……」
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暗くなったホールで5階席だけがほのかに明るくなる。
5階席で待機していた2、30名ほどの在校生が椅子から立ち上がり姿を見せる。
「卒業生のみなさま、卒業おめでとうございます。卒業生のみなさまにご指導をいただいた私たちはとても幸せでした。卒業生のみなさまに感謝を申し上げ、私たち在校生からのはなむけを贈ります。よき未来を」
在校生の代表が言葉を発して両手を高く上げると、
「よき未来を」
他の者たちも追従して言葉を紡ぎ両手をあげる。
すると卒業生の頭上からたくさんの白い羽毛がふわふわと雪のように舞い落ちてきた。
その1枚1枚に学園で過ごしてきた日々を重ねるように、卒業生は顔をあげて舞い落ちる羽毛を見つめる。やがて最後の羽毛がステージに落ちると、
「続いて卒業生代表の挨拶。ヴァレリラルド・イルヴァ・シルヴマルク王太子殿下」
進行役が式次第を読み上げ、ヴァレリラルドは小さく返事をして壇上に立つ。卒業生もその場に立ち上がった。
「みなさま。本日は私たちの卒業式を見守っていただき、ありがとうございました。皆様の支えがあり、私たちは本日、王立ユラーシェク学園を無事に卒業することができました。これからは皆様を支えられる存在になるべく精進してまいります。私たち卒業生からの皆様へのお礼です。皆様の見守り、励ましに感謝いたします」
ヴァレリラルドが発すると、
「感謝いたします」
立ち上がっていた卒業生たちが一斉に声を発し、同時に客席に花びらが降り注ぐ。
天井を見上げるアシェルナオにも花が降り注ぐ。
『はなー』
『はなきれい』
『ナオ、元気出して』
精霊たちは降ってくる花弁をつかんだり、花弁に乗ったりして、その姿をアシェルナオに見せて励まそうとした。
「わーっ」
卒業生が叫び、一斉にマントをはずす。
同時に軽快な音楽が流れ、階段状の席からステージの上に降り立ち、男女いりまじってダンスを踊り始める。
「卒業式名物の卒業ダンスだよ。このどさくさで好きな人に告白する者もいるんだ」
オリヴェルが懐かしそうに言うと、ヴァレリラルドも告白したり、されたりするのだろうかと、アシェルナオは胸がわしづかみされるような痛みを覚えた。
まだ幼い心に、その痛みの意味はよくわからなかったが、痛みの大きさはわかった。
自分だけが子供になってしまった悲しみの涙に、自分でも理解できない涙が加わる。
「ヴァル……」
アシェルナオの瞳から零れ落ちた涙が、膝の上に降りていた花弁に落ちる。
その花弁にぐりが乗る。
『かぜー』
ぐりの声でゆるやかな風が吹き、ぐりを乗せた花弁を浮かび上がらた。
『ぐりがんばれー』
『ナオを喜ばせてー』
他の色の精霊たちの応援を受けて、ぐりの乗った花弁はゆっくりとステージ上のヴァレリラルドのもとに向かう。
ダンスが始まって、ヴァレリラルドの周りには女子たちが押しかけてきたが、ベルトルドやウルリクがヴァレリラルドの両脇を固めてうまく女子たちをいなしていた。
場の空気になじめない様子のヴァレリラルドは学友たちに護ってもらいながら立ち尽くしていたが、その前に一枚の花弁が風に流されてきた。
なんとはなしにその花弁を手のひらで受け止めようと手を伸ばすヴァレリラルド。
その花弁がヴァレリラルドの手に触れた瞬間、
『ヴァル……』
ふわりとした風が吹き、懐かしい梛央の香りがただよったかと思うと声が聞こえた気がした。
「ナオ……」
ヴァレリラルドはいまだに鮮明に覚えている梛央の顔を思い出しながらつぶやく。
5階席で待機していた2、30名ほどの在校生が椅子から立ち上がり姿を見せる。
「卒業生のみなさま、卒業おめでとうございます。卒業生のみなさまにご指導をいただいた私たちはとても幸せでした。卒業生のみなさまに感謝を申し上げ、私たち在校生からのはなむけを贈ります。よき未来を」
在校生の代表が言葉を発して両手を高く上げると、
「よき未来を」
他の者たちも追従して言葉を紡ぎ両手をあげる。
すると卒業生の頭上からたくさんの白い羽毛がふわふわと雪のように舞い落ちてきた。
その1枚1枚に学園で過ごしてきた日々を重ねるように、卒業生は顔をあげて舞い落ちる羽毛を見つめる。やがて最後の羽毛がステージに落ちると、
「続いて卒業生代表の挨拶。ヴァレリラルド・イルヴァ・シルヴマルク王太子殿下」
進行役が式次第を読み上げ、ヴァレリラルドは小さく返事をして壇上に立つ。卒業生もその場に立ち上がった。
「みなさま。本日は私たちの卒業式を見守っていただき、ありがとうございました。皆様の支えがあり、私たちは本日、王立ユラーシェク学園を無事に卒業することができました。これからは皆様を支えられる存在になるべく精進してまいります。私たち卒業生からの皆様へのお礼です。皆様の見守り、励ましに感謝いたします」
ヴァレリラルドが発すると、
「感謝いたします」
立ち上がっていた卒業生たちが一斉に声を発し、同時に客席に花びらが降り注ぐ。
天井を見上げるアシェルナオにも花が降り注ぐ。
『はなー』
『はなきれい』
『ナオ、元気出して』
精霊たちは降ってくる花弁をつかんだり、花弁に乗ったりして、その姿をアシェルナオに見せて励まそうとした。
「わーっ」
卒業生が叫び、一斉にマントをはずす。
同時に軽快な音楽が流れ、階段状の席からステージの上に降り立ち、男女いりまじってダンスを踊り始める。
「卒業式名物の卒業ダンスだよ。このどさくさで好きな人に告白する者もいるんだ」
オリヴェルが懐かしそうに言うと、ヴァレリラルドも告白したり、されたりするのだろうかと、アシェルナオは胸がわしづかみされるような痛みを覚えた。
まだ幼い心に、その痛みの意味はよくわからなかったが、痛みの大きさはわかった。
自分だけが子供になってしまった悲しみの涙に、自分でも理解できない涙が加わる。
「ヴァル……」
アシェルナオの瞳から零れ落ちた涙が、膝の上に降りていた花弁に落ちる。
その花弁にぐりが乗る。
『かぜー』
ぐりの声でゆるやかな風が吹き、ぐりを乗せた花弁を浮かび上がらた。
『ぐりがんばれー』
『ナオを喜ばせてー』
他の色の精霊たちの応援を受けて、ぐりの乗った花弁はゆっくりとステージ上のヴァレリラルドのもとに向かう。
ダンスが始まって、ヴァレリラルドの周りには女子たちが押しかけてきたが、ベルトルドやウルリクがヴァレリラルドの両脇を固めてうまく女子たちをいなしていた。
場の空気になじめない様子のヴァレリラルドは学友たちに護ってもらいながら立ち尽くしていたが、その前に一枚の花弁が風に流されてきた。
なんとはなしにその花弁を手のひらで受け止めようと手を伸ばすヴァレリラルド。
その花弁がヴァレリラルドの手に触れた瞬間、
『ヴァル……』
ふわりとした風が吹き、懐かしい梛央の香りがただよったかと思うと声が聞こえた気がした。
「ナオ……」
ヴァレリラルドはいまだに鮮明に覚えている梛央の顔を思い出しながらつぶやく。
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