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第1部
温泉回・ポロリもあるよ
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まだその強面の顔に免疫のついていないヴァレリラルドは、梛央の横で幅を利かせるオルドジフに、少し怯んで視線を逸らす。
「ドーさんも一緒に夜の露天風呂に入ろうね。星を見ながら、ちょっと冷えた外気を感じながら温泉に入るって、すごく気持ちいいよ。雪見風呂もいいよ」
温泉の良さを嬉しそうに語る梛央。
「ナオ様はお風呂がお好きですね」
テュコが言うと、
「うん。国民性だよ。僕のいた国に温泉嫌いはいないよ!」
いたとしても梛央の中ではいないことになっている。
周りに視線を向けていたヴァレリラルドは、
「ナオ、こっちに来て」
川に浸かったまま移動しながら、覆いかぶさるように枝垂れている枝をかき分けて奥に進んだ。
「なに?」
同じく川に浸かりながらヴァレリラルドの後を追う梛央。それに続くテュコ、オルドジフ。
そこは川からは見えない、そこだけがぽっかりと開かれた円形の空間になっていた。
まさしく露天風呂、と言った空間で、その周囲は白い花をつけた低木で覆われている。
「マングローブの森みたいだけど、花は椿みたい」
不思議、と梛央は温泉に浸かりながら周囲を見回す。
そこに、そろそろ真上に差し掛かった太陽が水面をキラキラと反射させた。
「ナオ、こっち」
梛央の白い肌が日焼けしないように、ヴァレリラルドは枝の下の日陰に手を引いた。
顔は日焼けしないように枝の下に、足は円形の温泉の中心に向かって伸ばす。
「んー、気持ちいい」
時折白い花がパキッという音とともに水面に落ちた。
よく見ると水面には可憐な白い花がいくつも浮かんでいて、周りの木々を映して緑に染まる水の色によく映えている。
「露天風呂の良さがわかった気がします」
自然の中で入浴する心地よさに浸るオルドジフ。
「でしょう? ほんと綺麗……癒される……」
目を閉じて唇の下まで温泉に浸かる梛央。
「そうだね」
でも一番きれいなのはナオだ。
ヴァレリラルドは心の中で呟く。
「戻って来れて、よかった」
目を瞑ったまま、本心が声になる梛央に、思わず涙ぐむテュコ。
「よかった。本当に」
オルドジフが呟くと、梛央は目を開けてその横にぴったりとくっつく。
「ドーさんが呼び戻してくれた。ドーさん大好き」
親子以上のつながりができている2人に、ヴァレリラルドは今度は何も言わず見守っていた。
「ナオ様、殿下、姿が見えませんが大丈夫ですか?」
ケイレブの声が聞こえた。
「大丈夫だ」
ヴァレリラルドが叫び返す。
「そろそろ戻りますか」
オルドジフが言うと、
「うん。すっごく気持ちよかった」
梛央は立ち上がって背伸びをした。
体に張り付いた湯浴み着から、長い紐がぽたりと落ちる。
「ん?」
違和感を感じて目線を下げる梛央。
結んでいたはずの紐が落ちたせいで湯浴み着の前が開き、湯浴み着の下に何もつけていない体が晒されていて、それを正面で見ていたヴァレリラルドが目を見開いたまま硬直していた。
「ナオ……花……」
ヴァレリラルドの呟きに、梛央は湯浴み着の前を合わせた。
鼠径部の花の痣が見えたということは、梛央の梛央自身も見えたということで、大勢で裸で入浴するのはいいが、自分だけ裸を見られるのは恥ずかしい梛央は、
「ヴァルのエッチ!」
そう叫んだ梛央の頭には国民的アニメのヒロインの発する「やーん、〇〇〇さんのエッチー!」という言葉がリフレインされていた。
こういう時のために、湯浴み着の下に下履きを履くよう勧めたのに嫌がるから。と、テュコはヴァレリラルドが梛央の裸を見たことに憤りを感じていた。
梛央たちが露天風呂を楽しんでいる間に、濡れた服はアイナとドリーンが魔法で乾かしていた。
乾いた服を着て昼食を摂ったあと、梛央は天幕に敷いてある絨毯の上で横になる。
「ナオ、気分が悪い?」
横に来て梛央の顔を覗き込むヴァレリラルド。
「お昼寝する。ヴァルも横になって。テュコも」
「私もですか?」
主人と一緒に横になるなど考えられず、戸惑うテュコ。
「僕より年下はお昼寝するの。はい、横になって」
梛央の言葉に戸惑いながら従うヴァレリラルドとテュコだったが、梛央が安らかな寝息を立て始めると自然に瞼が下がっていった。
久しぶりにたくさん動いて、温泉に入って、疲れて眠る梛央を真ん中にして、梛央に寄り添うようにその両脇で眠るテュコとヴァレリラルド。
年齢差は4歳ずつあるが、見かけはほぼ同い年の美形の3人が並んで眠ると、それだけで微笑ましかった。
「可愛いねぇ」
子供を欲しがっているサリアンが目を細める。
「早熟ですが、殿下はまだ8歳ですしね」
ヴァレリラルドの護衛騎士のクルームが柔らかな眼差しで言う。
「いやいや、うちの子が一番可愛いですよ」
すっかり梛央の父親気分のオルドジフが梛央に視線を向ける。
「兄上は独身ですが、立派な親バカですね」
梛央への献身的な看病を目にしているフォルシウスは、オルドジフは精神的な部分ではすでに梛央の立派な父親だと感じていた。
「殿下がこんなに心穏やかにお過ごしなのはナオ様のおかげです。この平穏が王城に帰還しても続きますように」
祈るようにイクセルが言った。
「きっと続くよ。この先もずっと。ナオ様はそれを成し遂げてくれる人だよ」
サリアンは梛央のそばにいる者として誇らしげに言った。
「ドーさんも一緒に夜の露天風呂に入ろうね。星を見ながら、ちょっと冷えた外気を感じながら温泉に入るって、すごく気持ちいいよ。雪見風呂もいいよ」
温泉の良さを嬉しそうに語る梛央。
「ナオ様はお風呂がお好きですね」
テュコが言うと、
「うん。国民性だよ。僕のいた国に温泉嫌いはいないよ!」
いたとしても梛央の中ではいないことになっている。
周りに視線を向けていたヴァレリラルドは、
「ナオ、こっちに来て」
川に浸かったまま移動しながら、覆いかぶさるように枝垂れている枝をかき分けて奥に進んだ。
「なに?」
同じく川に浸かりながらヴァレリラルドの後を追う梛央。それに続くテュコ、オルドジフ。
そこは川からは見えない、そこだけがぽっかりと開かれた円形の空間になっていた。
まさしく露天風呂、と言った空間で、その周囲は白い花をつけた低木で覆われている。
「マングローブの森みたいだけど、花は椿みたい」
不思議、と梛央は温泉に浸かりながら周囲を見回す。
そこに、そろそろ真上に差し掛かった太陽が水面をキラキラと反射させた。
「ナオ、こっち」
梛央の白い肌が日焼けしないように、ヴァレリラルドは枝の下の日陰に手を引いた。
顔は日焼けしないように枝の下に、足は円形の温泉の中心に向かって伸ばす。
「んー、気持ちいい」
時折白い花がパキッという音とともに水面に落ちた。
よく見ると水面には可憐な白い花がいくつも浮かんでいて、周りの木々を映して緑に染まる水の色によく映えている。
「露天風呂の良さがわかった気がします」
自然の中で入浴する心地よさに浸るオルドジフ。
「でしょう? ほんと綺麗……癒される……」
目を閉じて唇の下まで温泉に浸かる梛央。
「そうだね」
でも一番きれいなのはナオだ。
ヴァレリラルドは心の中で呟く。
「戻って来れて、よかった」
目を瞑ったまま、本心が声になる梛央に、思わず涙ぐむテュコ。
「よかった。本当に」
オルドジフが呟くと、梛央は目を開けてその横にぴったりとくっつく。
「ドーさんが呼び戻してくれた。ドーさん大好き」
親子以上のつながりができている2人に、ヴァレリラルドは今度は何も言わず見守っていた。
「ナオ様、殿下、姿が見えませんが大丈夫ですか?」
ケイレブの声が聞こえた。
「大丈夫だ」
ヴァレリラルドが叫び返す。
「そろそろ戻りますか」
オルドジフが言うと、
「うん。すっごく気持ちよかった」
梛央は立ち上がって背伸びをした。
体に張り付いた湯浴み着から、長い紐がぽたりと落ちる。
「ん?」
違和感を感じて目線を下げる梛央。
結んでいたはずの紐が落ちたせいで湯浴み着の前が開き、湯浴み着の下に何もつけていない体が晒されていて、それを正面で見ていたヴァレリラルドが目を見開いたまま硬直していた。
「ナオ……花……」
ヴァレリラルドの呟きに、梛央は湯浴み着の前を合わせた。
鼠径部の花の痣が見えたということは、梛央の梛央自身も見えたということで、大勢で裸で入浴するのはいいが、自分だけ裸を見られるのは恥ずかしい梛央は、
「ヴァルのエッチ!」
そう叫んだ梛央の頭には国民的アニメのヒロインの発する「やーん、〇〇〇さんのエッチー!」という言葉がリフレインされていた。
こういう時のために、湯浴み着の下に下履きを履くよう勧めたのに嫌がるから。と、テュコはヴァレリラルドが梛央の裸を見たことに憤りを感じていた。
梛央たちが露天風呂を楽しんでいる間に、濡れた服はアイナとドリーンが魔法で乾かしていた。
乾いた服を着て昼食を摂ったあと、梛央は天幕に敷いてある絨毯の上で横になる。
「ナオ、気分が悪い?」
横に来て梛央の顔を覗き込むヴァレリラルド。
「お昼寝する。ヴァルも横になって。テュコも」
「私もですか?」
主人と一緒に横になるなど考えられず、戸惑うテュコ。
「僕より年下はお昼寝するの。はい、横になって」
梛央の言葉に戸惑いながら従うヴァレリラルドとテュコだったが、梛央が安らかな寝息を立て始めると自然に瞼が下がっていった。
久しぶりにたくさん動いて、温泉に入って、疲れて眠る梛央を真ん中にして、梛央に寄り添うようにその両脇で眠るテュコとヴァレリラルド。
年齢差は4歳ずつあるが、見かけはほぼ同い年の美形の3人が並んで眠ると、それだけで微笑ましかった。
「可愛いねぇ」
子供を欲しがっているサリアンが目を細める。
「早熟ですが、殿下はまだ8歳ですしね」
ヴァレリラルドの護衛騎士のクルームが柔らかな眼差しで言う。
「いやいや、うちの子が一番可愛いですよ」
すっかり梛央の父親気分のオルドジフが梛央に視線を向ける。
「兄上は独身ですが、立派な親バカですね」
梛央への献身的な看病を目にしているフォルシウスは、オルドジフは精神的な部分ではすでに梛央の立派な父親だと感じていた。
「殿下がこんなに心穏やかにお過ごしなのはナオ様のおかげです。この平穏が王城に帰還しても続きますように」
祈るようにイクセルが言った。
「きっと続くよ。この先もずっと。ナオ様はそれを成し遂げてくれる人だよ」
サリアンは梛央のそばにいる者として誇らしげに言った。
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