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第1部
サミュエルも大好きだよね?
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「ナオ様。昨夜はお話ができませんでしたが、昨日のエンゲルブレクト殿下の提案の1つである夜会に着るための服を仕立てたいと思います」
うん、とウインナーをナイフで切りながら頷く梛央。
「そのためには採寸をしなくてはいけません。王都から仕立て師が来ますが、よろしいですか?」
うん、とウインナーを口にいれながら梛央は頷く。
夕食を抜いてお腹がすいていたせいもあって梛央は順調に食事を進めていた。おかげで『あーん』の危機は訪れそうになかった。
「この国の慣習に則った服を作りますが、ナオ様の希望もおっしゃってくださいね」
テュコが言った時、
「テュコ様!」
扉の前で警護していたファルクが報告する前に、体格のよい男を先頭に3人のお仕着せの紺色のロングワンピースに水色のエプロンをつけた女性たちが部屋に入って来た。
「アルテアン。呼ぶまで別室で待機するように言っていたはずですが」
テュコは怒りを含んだ声で言った。
突然知らない男に襲われたという梛央に、男が乱入してくるというシチュエーションは絶対に避けなければならないことだった。
案の定梛央はウインナーをフォークに刺したまま固まっている。
「はぁぁぁぁぁぁぁん」
先頭の、アルテアンと呼ばれたくるくる巻き毛の褐色の髪と紺色の瞳をした男性。それに追随してきた3人の女性が両手を組み合わせ、体をねじって甲高い声を発した。
びくっ、と体を震わせる梛央。
「なぁんてお可愛らしい。いえいえ、とてもお美しくあられるんですけどぉ、その雰囲気やリングダールとの並びがもう、この世のすべて飲み込むくらいにお可愛らしいわぁ。もう、もう、すっごくお可愛らしいぃ」
身をよじる、ナチュラルに女性口調のアルテアン。
「黙れ。お前たち、さっさとこの無礼者を外につまみ出せ」
いつの間にか部屋に来ていたサミュエルが、引き連れてきたシアンハウス騎士団の騎士たちに命令する。
「いやぁぁん」
騎士たちに取り押さえられて絶叫するアルテアンに、梛央はナイフとフォークを置いて立ち上がると、サミュエルに歩み寄る。
アルテアンは梛央がお気に召したリングダールを可愛いと言ってくれた。それが梛央を動かしていた。
確かにアルテアンはリングダールのことも可愛いとは言った。だが、それはリングダールが梛央と並んでいるからこそのオプション的な可愛さで、メインは梛央なのだが、その部分は梛央には通じていない。
「この人がいきなり部屋に来てびっくりしたけど、きっと悪い人じゃないよ。この人も可愛いものが大好きなんだよ。サミュエルも大好きだよね?」
梛央はサミュエルの手を握り、にっこりと笑った。
サミュエルは可愛いもの好き、ぬいぐるみ好きの同士だと思っている梛央。
「えぇ。えぇ。私も可愛いものと綺麗なものと、子供と動物が大好きなんです。ナオ様、サミュエル様、お許しください」
必死で助けを求めるアルテアンの訴えは、サミュエルの耳に半分も入ってきていなかった。
自分の手を握って、綺麗な顔に満面の笑みを浮かべて見上げてくる梛央。その破壊力に元第一騎士団団長はめろめろだった。
「はい、私も大好きですよ」
勿論です、と、サミュエルが言うと、梛央は嬉しそうに頷く。
夜会の準備と、王族と愛し子の旅の準備。梛央が笑っているならそんなものどうでもいいと思ってしまうくらいにサミュエルは幸せに満たされていた。
「じゃあ、今回は大目に見てあげて?」
「・・・仕方ありません。アルテアン、今回だけだ。次回も非礼があれば王都追放だからな」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げるアルテアン。
「ではナオ様。また会いに参ります」
サミュエルは機嫌よく騎士たちを連れて出て行った。
それを見送ると、アルテアンたちは梛央の前に歩み出て礼を執る。
「お食事中乱入してしまいまして大変申し訳ございません。陛下よりシアンハウスに滞在中の大変お可愛らしい方の服を仕立てるように仰せつかりました仕立て師のアルテアンと申します。光栄の極みで昨晩は一睡もできず、今朝も待ちきれずにこうしてはせ参じてしまいました」
反省したように口上を述べるアルテアン。
「謝るくらいなら別室で待ってろって話です」
ドリーンが、チッ、と舌打ちしながら言ったが、テュコも同意なので注意しなかった。
「ナオ様はまだ食事の途中です」
テュコはアルテアンの顔を見ながら梛央に聞こえないように、「ナオ様の食事が終わるまでナオ様から見えないところで立って待ってなさいお前らに座らせる椅子はない」と一息で言った。
「はい、待たせてもらいます。ナオ様、我々のことは気になさらず、ごゆっくりお召し上がりください」
アルテアンたちはテュコの言う通り梛央からは見えない位置に下がると直立不動の姿勢になった。
「はーい」
アイナにテーブルに戻されて食事を再開する梛央。
直立不動の姿勢ではあるが、梛央とリングダールが並んでいる姿を思い出してはぁはぁするアルテアンの息遣いは梛央には聞こえなかった。
うん、とウインナーをナイフで切りながら頷く梛央。
「そのためには採寸をしなくてはいけません。王都から仕立て師が来ますが、よろしいですか?」
うん、とウインナーを口にいれながら梛央は頷く。
夕食を抜いてお腹がすいていたせいもあって梛央は順調に食事を進めていた。おかげで『あーん』の危機は訪れそうになかった。
「この国の慣習に則った服を作りますが、ナオ様の希望もおっしゃってくださいね」
テュコが言った時、
「テュコ様!」
扉の前で警護していたファルクが報告する前に、体格のよい男を先頭に3人のお仕着せの紺色のロングワンピースに水色のエプロンをつけた女性たちが部屋に入って来た。
「アルテアン。呼ぶまで別室で待機するように言っていたはずですが」
テュコは怒りを含んだ声で言った。
突然知らない男に襲われたという梛央に、男が乱入してくるというシチュエーションは絶対に避けなければならないことだった。
案の定梛央はウインナーをフォークに刺したまま固まっている。
「はぁぁぁぁぁぁぁん」
先頭の、アルテアンと呼ばれたくるくる巻き毛の褐色の髪と紺色の瞳をした男性。それに追随してきた3人の女性が両手を組み合わせ、体をねじって甲高い声を発した。
びくっ、と体を震わせる梛央。
「なぁんてお可愛らしい。いえいえ、とてもお美しくあられるんですけどぉ、その雰囲気やリングダールとの並びがもう、この世のすべて飲み込むくらいにお可愛らしいわぁ。もう、もう、すっごくお可愛らしいぃ」
身をよじる、ナチュラルに女性口調のアルテアン。
「黙れ。お前たち、さっさとこの無礼者を外につまみ出せ」
いつの間にか部屋に来ていたサミュエルが、引き連れてきたシアンハウス騎士団の騎士たちに命令する。
「いやぁぁん」
騎士たちに取り押さえられて絶叫するアルテアンに、梛央はナイフとフォークを置いて立ち上がると、サミュエルに歩み寄る。
アルテアンは梛央がお気に召したリングダールを可愛いと言ってくれた。それが梛央を動かしていた。
確かにアルテアンはリングダールのことも可愛いとは言った。だが、それはリングダールが梛央と並んでいるからこそのオプション的な可愛さで、メインは梛央なのだが、その部分は梛央には通じていない。
「この人がいきなり部屋に来てびっくりしたけど、きっと悪い人じゃないよ。この人も可愛いものが大好きなんだよ。サミュエルも大好きだよね?」
梛央はサミュエルの手を握り、にっこりと笑った。
サミュエルは可愛いもの好き、ぬいぐるみ好きの同士だと思っている梛央。
「えぇ。えぇ。私も可愛いものと綺麗なものと、子供と動物が大好きなんです。ナオ様、サミュエル様、お許しください」
必死で助けを求めるアルテアンの訴えは、サミュエルの耳に半分も入ってきていなかった。
自分の手を握って、綺麗な顔に満面の笑みを浮かべて見上げてくる梛央。その破壊力に元第一騎士団団長はめろめろだった。
「はい、私も大好きですよ」
勿論です、と、サミュエルが言うと、梛央は嬉しそうに頷く。
夜会の準備と、王族と愛し子の旅の準備。梛央が笑っているならそんなものどうでもいいと思ってしまうくらいにサミュエルは幸せに満たされていた。
「じゃあ、今回は大目に見てあげて?」
「・・・仕方ありません。アルテアン、今回だけだ。次回も非礼があれば王都追放だからな」
「ありがとうございます」
深々と頭を下げるアルテアン。
「ではナオ様。また会いに参ります」
サミュエルは機嫌よく騎士たちを連れて出て行った。
それを見送ると、アルテアンたちは梛央の前に歩み出て礼を執る。
「お食事中乱入してしまいまして大変申し訳ございません。陛下よりシアンハウスに滞在中の大変お可愛らしい方の服を仕立てるように仰せつかりました仕立て師のアルテアンと申します。光栄の極みで昨晩は一睡もできず、今朝も待ちきれずにこうしてはせ参じてしまいました」
反省したように口上を述べるアルテアン。
「謝るくらいなら別室で待ってろって話です」
ドリーンが、チッ、と舌打ちしながら言ったが、テュコも同意なので注意しなかった。
「ナオ様はまだ食事の途中です」
テュコはアルテアンの顔を見ながら梛央に聞こえないように、「ナオ様の食事が終わるまでナオ様から見えないところで立って待ってなさいお前らに座らせる椅子はない」と一息で言った。
「はい、待たせてもらいます。ナオ様、我々のことは気になさらず、ごゆっくりお召し上がりください」
アルテアンたちはテュコの言う通り梛央からは見えない位置に下がると直立不動の姿勢になった。
「はーい」
アイナにテーブルに戻されて食事を再開する梛央。
直立不動の姿勢ではあるが、梛央とリングダールが並んでいる姿を思い出してはぁはぁするアルテアンの息遣いは梛央には聞こえなかった。
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