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第1部
たすけてぇ……めがみさ……ま?
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……この子を……
……わかりました。私の……に……え……あ、あれぇぇぇ……たす……てぇ……めがみさまぁぁ……
シルヴマルク王国。
ダールベック大陸の西に位置し、二方が海に、一方は高くそびえたつ山脈に、もう一方は友好国であるエクルンド公国に面している。
昔から精霊の加護に守られた国で、他国に比べて魔獣の発生が少ない。作物が豊かに穣り、4つの季節が巡る自然の美しい国である。
この国の王太子であるヴァレリラルド・イルヴァ・シルヴマルクは滞在中のシアンハウスから護衛と王太子付きの近衛騎士2人を連れて、聖域の森の奥にある精霊の泉を目指していた。
凛とした姿勢で馬を駆るヴァレリラルドはきらきらと輝く黄金の髪と清廉な碧い瞳の持ち主で、端正な顔立ちをしている。
8歳ながら同じ年頃の子供より発育がよく、6歳から始めた剣の稽古で培った身のこなしはすでに洗練された騎士のようだった。
その隣に馬を並ばせるのは護衛のケイレブ。
本職は国を越えて活躍している冒険者だが、ヴァレリラルドが王都の王城に戻るまでの期間の護衛を王直々に依頼されていた。
元は第一騎士団の副騎士団長を務めていただけあって長身で、筋肉質の体をしたキャメルブラウンの髪とヘーゼルの瞳の男だ。
自然の結界の中にある聖域の森は馬を二頭並べて走らせるだけで精いっぱいの幅の道が続き、しばらくすると少し開けた場所に出た。
ヴァレリラルドはひらりと馬を降り、同じく馬を降りた近衛騎士のイクセルとクルームにその手綱を託した。
「お気をつけて」
にこやかな顔でそれを受け取るイクセル。
王族の護衛に当たる近衛騎士は品格の騎士、優雅な騎士と呼ばれているが、イクセルはフランクな感じのするサンディブロンドのハンサムな男だった。
「殿下、さしでがましいことを申しますが、ケイレブ殿とお二人だけで大丈夫でしょうか。シアンハウス騎士団も見回っていることですし、私たちも同行いたします」
カーキ色の髪の整った顔立ちのクルームは品格の近衛を地で行くタイプで、イクセルとは真逆のタイプだった。
「精霊の加護の結界で、泉周辺には精霊に害をなす者は入れないから大丈夫だ。大勢で行って精霊を刺激したくない。泉の様子を見るだけだからそう時間をかけずに戻ってくるよ」
そう言ってヴァレリラルドはケイレブを伴って歩き出した。
「心配すんなって。俺がついてるからよ」
振り向いて不敵に笑うケイレブに、あなたがついてるから心配なのです、と言いたいクルームだった。
「王が直々に殿下の護衛に任命した方だ。今では国をまたいで活躍するS級冒険者だが、第一騎士団副団長を務められていた時から陛下の信頼の厚い方だ」
ヴァレリラルドとケイレブの姿が見えなくなるとイクセルが口を開いた。
「護衛の腕を心配しているのではない。この滞在に殿下が帯同された近衛騎士は多くない。なのにごりごりの冒険者になられた方が殿下の側にいたら殿下の品位が汚されそうなんだ」
「休養という名目でのシアンハウスへの滞在だから、護衛は6名の近衛騎士と以前から陛下と懇意にしているケイレブ殿だけなのは、殿下がリラックスして過ごされるようにとの陛下の配慮さ。シアンハウス騎士団もいることだし、クルームも殿下の心が休まるように少しは肩の力を抜けよ」
「抜かないし抜かせないぞ。ここでもなにか起きるかもしれん」
王城でのことを思うと改めて気を引き締めるクルーム。
「少数とはいえ精鋭。何があったとしても、みな命にかえても殿下を護る覚悟のある者たちばかりだ。俺もお前も、な」
イクセルの言葉には不思議と大丈夫だと思わせる力があって、年下のくせに、と思いながらも心強かった。
イクセルがなんとはなしに森の小道を目でたどったとき、上空で何かが発光するのが見えた。
「行くぞ」
それはヴァレリラルドたちの進行方向で、二人は迷わずに駆け出した。
*************
ごめんなさい。
いつの間にか順番が入れ替わっていました(汗)
このお話が第1章の最初のお話です。
……わかりました。私の……に……え……あ、あれぇぇぇ……たす……てぇ……めがみさまぁぁ……
シルヴマルク王国。
ダールベック大陸の西に位置し、二方が海に、一方は高くそびえたつ山脈に、もう一方は友好国であるエクルンド公国に面している。
昔から精霊の加護に守られた国で、他国に比べて魔獣の発生が少ない。作物が豊かに穣り、4つの季節が巡る自然の美しい国である。
この国の王太子であるヴァレリラルド・イルヴァ・シルヴマルクは滞在中のシアンハウスから護衛と王太子付きの近衛騎士2人を連れて、聖域の森の奥にある精霊の泉を目指していた。
凛とした姿勢で馬を駆るヴァレリラルドはきらきらと輝く黄金の髪と清廉な碧い瞳の持ち主で、端正な顔立ちをしている。
8歳ながら同じ年頃の子供より発育がよく、6歳から始めた剣の稽古で培った身のこなしはすでに洗練された騎士のようだった。
その隣に馬を並ばせるのは護衛のケイレブ。
本職は国を越えて活躍している冒険者だが、ヴァレリラルドが王都の王城に戻るまでの期間の護衛を王直々に依頼されていた。
元は第一騎士団の副騎士団長を務めていただけあって長身で、筋肉質の体をしたキャメルブラウンの髪とヘーゼルの瞳の男だ。
自然の結界の中にある聖域の森は馬を二頭並べて走らせるだけで精いっぱいの幅の道が続き、しばらくすると少し開けた場所に出た。
ヴァレリラルドはひらりと馬を降り、同じく馬を降りた近衛騎士のイクセルとクルームにその手綱を託した。
「お気をつけて」
にこやかな顔でそれを受け取るイクセル。
王族の護衛に当たる近衛騎士は品格の騎士、優雅な騎士と呼ばれているが、イクセルはフランクな感じのするサンディブロンドのハンサムな男だった。
「殿下、さしでがましいことを申しますが、ケイレブ殿とお二人だけで大丈夫でしょうか。シアンハウス騎士団も見回っていることですし、私たちも同行いたします」
カーキ色の髪の整った顔立ちのクルームは品格の近衛を地で行くタイプで、イクセルとは真逆のタイプだった。
「精霊の加護の結界で、泉周辺には精霊に害をなす者は入れないから大丈夫だ。大勢で行って精霊を刺激したくない。泉の様子を見るだけだからそう時間をかけずに戻ってくるよ」
そう言ってヴァレリラルドはケイレブを伴って歩き出した。
「心配すんなって。俺がついてるからよ」
振り向いて不敵に笑うケイレブに、あなたがついてるから心配なのです、と言いたいクルームだった。
「王が直々に殿下の護衛に任命した方だ。今では国をまたいで活躍するS級冒険者だが、第一騎士団副団長を務められていた時から陛下の信頼の厚い方だ」
ヴァレリラルドとケイレブの姿が見えなくなるとイクセルが口を開いた。
「護衛の腕を心配しているのではない。この滞在に殿下が帯同された近衛騎士は多くない。なのにごりごりの冒険者になられた方が殿下の側にいたら殿下の品位が汚されそうなんだ」
「休養という名目でのシアンハウスへの滞在だから、護衛は6名の近衛騎士と以前から陛下と懇意にしているケイレブ殿だけなのは、殿下がリラックスして過ごされるようにとの陛下の配慮さ。シアンハウス騎士団もいることだし、クルームも殿下の心が休まるように少しは肩の力を抜けよ」
「抜かないし抜かせないぞ。ここでもなにか起きるかもしれん」
王城でのことを思うと改めて気を引き締めるクルーム。
「少数とはいえ精鋭。何があったとしても、みな命にかえても殿下を護る覚悟のある者たちばかりだ。俺もお前も、な」
イクセルの言葉には不思議と大丈夫だと思わせる力があって、年下のくせに、と思いながらも心強かった。
イクセルがなんとはなしに森の小道を目でたどったとき、上空で何かが発光するのが見えた。
「行くぞ」
それはヴァレリラルドたちの進行方向で、二人は迷わずに駆け出した。
*************
ごめんなさい。
いつの間にか順番が入れ替わっていました(汗)
このお話が第1章の最初のお話です。
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