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トラブルだらけの学園祭
42.学園祭2日目は、
しおりを挟む学園祭2日目は学校中で行われるお祭りだった。
各チームが自分たちの出し物の準備で飾り付けを行ったこともそうだけど生徒会を主体にボランティアの活躍もあって1日で学校は激変した。色んな所から音楽が聞こえてきて飾られた紙飾りとか風船がキラキラ輝いてる。しかも昨日は生徒全員が体操服だったけど今日は私服だったりコスプレチックだったりする服装で──なんというか眼福だ。こんなのそりゃもう皆ノリノリになるしかないし他校とか一般の人も遊びに来るよね。とにかく楽しい。
「いらっしゃいませー2名様ご案内―!」
「ココアティーアート猫ちゃん2つお願いしまーす!」
「はーい!」
私達Bチームは他チームとの水面下の戦いの末見事喫茶店を出すことに成功したけど、メイド喫茶も執事喫茶もとられてしまってこれはヤバイということで作戦を立てることになった。まずBチーム内にて厳選な投票によりカワイイ子とカッコイイ子を選出して+希望を出した人による接客班、看板やビラを作ったりする宣伝班、お店のインテリアや接客班の衣装作成などの裏方班、提供する品にやたらとこだわりを持つ料理班に分かれて各班ごとにベストを尽くす。そのうえ各班にチームリーダーも作って、え?学園祭ってここまで熱入れてするもんだったっけ?ってぐらいみんな根を詰めてこだわりを形にして他チームとの差別化をはかることにした。これが功を成して始まってすぐ結構なお客さんが入ってる。ビラ班がいい働きをしたらしくほとんどの人がビラを持っていた。やるな……。
私はというと見事料理班にまわってたった今注文が入ったティーアートを作ってるところだ。
ココアの上にカプチーノミルクフォーマーでいっぱい泡立てた牛乳をいれて猫型に切った台紙にそってココアかけて出来上がりという簡単だけどすっごく可愛い素敵飲み物。ううん、自信の出来だ。
「出来た!お願いしまーす!」
「はーい!わっ、めっちゃ可愛いー!」
「え、ほんとですか?やったー!」
可愛い先輩に素で褒めてもらった嬉しさに万歳してたら先輩が目をパチパチっとさせたあと微笑んでくれた。え、なにこの先輩可愛い……。女性の先輩といえば千代先輩を除いたら駿河先輩と城谷先輩ぐらいしか知り合いがいなかったもんだからあまりの違いに驚く。
「猫クッキーお願いしまーす!」
「はーい」
ああ駄目だ、嬉しいことにお店は繁盛してるんだから頑張らないと。先輩にお願いしますと猫ココアを託して次にとりかかる。それに手早くしないと接客してる波多くんがこの2日間で溜めに溜めたストレスを爆発させかねない。波多くんが提供する猫商品を見て少しでも癒されるよう私は頑張る所存だ。とはいってもこんなに忙しかったら癒やされてる暇はないだろうなあ。
可愛く猫クッキーを並べてくれた人が「はい」「はい」と餅つきのような流れで私にパスをまわしてくる。だから私も無心になってチョコペンでお皿に猫の足跡とか顔を書いていく。ふう……これも会心の出来だ。
いい仕事したなとひと汗かいてたら丁度波多くんが取りに来た。チームの有志によって仕立てられた服を着た波多くんは学園祭効果もあってか「かっこいいー」なんて呟きがあちこちから聞こえてくる姿をしている。波多くんがキレながら服を着替えてチッチッチッチッ舌打ちして現れたとき馬子にも衣装だなと頷いていたらメンチきられたっけ……。
そんなことを思い出してしまったのは目の前にいる波多くんが舌打ちしながら私を睨んでるからだ。
「はい、これお願いしまーす」
「ああ゛?ああ……」
「これ可愛いでしょー。裏庭に現れるやつに似てない?」
「……」
「はーいお客様に持って行ってくださーい」
商品を見てニヤッと笑うのはいいけどお客様は待っている。波多くんの目の前で手を振ったら忌々しそうに私を見て舌打ちしてくれた。いやー楽しいわ-。それでもって教室から聞こえてくる「あの人かっこよくなーい?」「あの子可愛いな」っていう声に「きゃーネコちゃん超可愛い!」「あげよ」なんて声が聞こえてくるもんだから私のテンションはうなぎ登りだ。ああ、学園祭ってこんなに楽しいんだ……。
「近藤さんお疲れー!バトンタッチー!」
「え」
「え、って!風紀の仕事あるんでしょ?」
一体私はどんな顔をしてたのか交代に駆けつけてくれた子が爆笑してくれた。そうか風紀の仕事か……いやほんと学園祭を一番楽しんでた瞬間だったもんだから落差が凄いわ。この楽しい2日目をほぼ桜先輩のウジウジした姿を見なきゃいけないのかって思うと……いやいやそんなことを思っちゃ駄目だよね。桜先輩も私も楽しめるようにすればいいだけだ。
「そうだねありがとう」
「あ、時間があったら桜先輩ここにも連れてきてよ。絶対売り上げ延びるから」
「回転率悪くなりそうじゃない?」
「そこは桜先輩に商品ベタ褒めしてもらったら注文いっぱい入るだろうしイケルイケル」
ニヤリと悪く笑う顔にシンパシーを感じて、思わずおおっと顔を見れば瞬いた目がにっこり笑ってくれる。
「笹岡さんだよね?桜先輩の意思を尊重するけど連れてこれるよう頑張ってみるよ」
「意思を尊重って!ああだから近藤さんって風紀なんだねーオケ!あと私のこと真奈でいーから!」
「へへーなんか嬉しいね。私も佐奈でいーよー!それじゃまたあとで!」
「またねー」
注文が入った声も聞こえたから退散したけど――ああやっぱり今日はいい日だ。思いがけず真奈っていう恐らく類友に出会えたし学園祭は楽しいし言うことない。
桜先輩のボディーガードだろうがなんだろうがどんとこいだ!
……そう思っていたのが10分前。
「うう、うううっ」
「いやもう流石に泣き止んで下さいよ。ほら楽しい楽しい学園祭ですよ-」
「も、俺、嫌だ……」
「はあ……」
この騒がしい学園祭のなかよくも見つけたなというぐらい人がいない隅っこで膝を抱えて泣く桜先輩を見ながら溜め息を吐く。学園祭2日目も長くなりそうだ。
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