上 下
4 / 11
本編

第4話 出会いがありました。

しおりを挟む
「ふう、閃光に導かれ来てみたがここで会えるとは……遅くなったな、ヴァネッサ」
「いいえ、よくいらしてくれました。クラウディオ……様」

 ヴァネッサが、自分を救ってくれた男と親しげに話している。どういう関係なのだろう? ミーナは彼の姿を目で追った。
 彼が身につけている防具や服装から、叙勲を受けた騎士だというのが分かる。
 白い胸当ては、王家からもたらされたもので、高い地位にある者でしか身につけることが許されていない。

 クラウディオ様、か……。

 窮地を救ってくれたのもあって、とても堂々とし格好よく感じる。
 長剣を持つ腕はたくましく、シルバーアッシュの髪の毛が風になびいている。
 端正な顔は高貴な風格を漂わせていた。
 日に焼けた肌にいくつか残る傷が彼をより精悍に感じさせる。

 よっぽど武勲のある騎士なのだろう。それだけの迫力をミーナは感じていた。
 年齢はたいして違わないのに。
 とにかくお礼を、と彼に向き合う。

「危ないところを、ありがとうございます」
「気にしなくていい……ん?」

 ミーナは、クラウディオの視線が自分の首元を向いていることに気付いた。
 彼はミーナの首元に煌めく碧い宝石に釘付けになっている。

「そのペンダントは……ヴァネッサ? 彼女は?」
「はい。聖女の……ミーナ様です」

 その瞬間、クラウディオ「なんと」と小さくつぶやいた。
 彼の視線が、ミーナの顔に移る。

「とても綺麗に……なった……」
「えっ? あっ、綺麗ですよね、この宝石」
「い、いや……そうではなくて…………そうだな」

 日に焼けているのにも関わらず、はっきりと分かるほどクラウディオの顔が赤く染まった。初対面にもかかわらず、なぜかその様子に懐かしさを感じ、ミーナは頬を緩ませる。

「ふふっ……あっ、し、失礼しました」

 自然と出た笑いに、ミーナは失礼にあたると思い謝った。しかし、クラウディオもそんなミーナを見て笑いが伝染する。
 住んでいた聖堂を追放され、先が見えないのにも関わらず、ミーナは不思議と心が落ち着くのだった。
 周囲を見渡すと、悪魔は集結しつつある衛兵に倒されており、数を次第に減らしていた。

「私が来たからにはもう心配ない」
「はい、助かりました。街の方々を救援に来られたのですね」
「い……いや、私は」

 彼はもごもごと、悪魔を倒したときとは全然違う様子で口ごもった。
 先ほどからおぼつかない二人のやり取りを見かねた様子で、ヴァネッサが口を出す。

「やれやれ……ミーナ様、聖堂に行きたいのでしょう? 馬に一緒に乗せてもらったらいかがですか?」
「えっ……私が……? その、馬は二人乗っても平気なんでしょうか?」
「わたしと違って貴女は小柄ですし、問題無いでしょう」

 ブルッブルッ。クラウディオを乗せている馬がまるで「大丈夫だよ」とでも言うように鼻を鳴らす。
 じゃあ、と言って、クラウディオの後ろに乗せてもらうミーナ。だが、聖女の衣は跨ぐのに適しておらず、足を揃えて乗ることになった。

「こ、こんな感じでしょうか……きゃっ!」
「私にしっかり掴まって下さい」
「は……はい! ありがとうございます」

 不安定な状態に、ミーナはしっかりとクラウディオに掴まり体を預けた。その瞬間、彼の体がビクッと震えるのが伝わってきて、少しだけ遠慮する。
 クラウディオ様の匂い……清潔な中にも太陽を思わせる……懐かしい香りがする。
 遠慮しつつも、不思議な縁を感じたミーナは騎士に寄り添う。男性に積極的になっている自分に驚きつつ、少し恥じ入りながら。

「では、聖堂へ。私は後ろから追いかけます」

 ヴァネッサがそう言い、警戒しつつ後からついていく。
 そんな彼女を気遣いながら、クラウディオとミーナは共に聖堂に向かうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
聖女ウリヤナは聖なる力を失った。心当たりはなんとなくある。求められるがまま、婚約者でありイングラム国の王太子であるクロヴィスと肌を重ねてしまったからだ。 「聖なる力を失った君とは結婚できない」クロヴィスは静かに言い放つ。そんな彼の隣に寄り添うのは、ウリヤナの友人であるコリーン。 聖なる力を失った彼女は、その日、婚約者と友人を失った――。 ※以前投稿した短編の長編です。予約投稿を失敗しないかぎり、完結まで毎日更新される予定。

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

家柄が悪いから婚約破棄? 辺境伯の娘だから芋臭い? 私を溺愛している騎士とお父様が怒りますよ?

西東友一
恋愛
ウォーリー辺境伯の娘ミシェルはとても優れた聖女だった。その噂がレオナルド王子の耳に入り、婚約することになった。遠路はるばる王都についてみれば、レオナルド王子から婚約破棄を言い渡されました。どうやら、王都にいる貴族たちから色々吹き込まれたみたいです。仕舞いにはそんな令嬢たちから「芋臭い」なんて言われてしまいました。 連れてきた護衛のアーサーが今にも剣を抜きそうになっていましたけれど、そんなことをしたらアーサーが処刑されてしまうので、私は買い物をして田舎に帰ることを決めました。 ★★ 恋愛小説コンテストに出す予定です。 タイトル含め、修正する可能性があります。 ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いいたします。 ネタバレ含むんですが、設定の順番をかえさせていただきました。設定にしおりをしてくださった200名を超える皆様、本当にごめんなさい。お手数おかけしますが、引き続きお読みください。

ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)

青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。 父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。 断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。 ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。 慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。 お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが この小説は、同じ世界観で 1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について 2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら 3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。 全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。 続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。 本来は、章として区切るべきだったとは、思います。 コンテンツを分けずに章として連載することにしました。

捨てられた私が聖女だったようですね 今さら婚約を申し込まれても、お断りです

木嶋隆太
恋愛
聖女の力を持つ人間は、その凄まじい魔法の力で国の繁栄の手助けを行う。その聖女には、聖女候補の中から一人だけが選ばれる。私もそんな聖女候補だったが、唯一のスラム出身だったため、婚約関係にあった王子にもたいそう嫌われていた。他の聖女候補にいじめられながらも、必死に生き抜いた。そして、聖女の儀式の日。王子がもっとも愛していた女、王子目線で最有力候補だったジャネットは聖女じゃなかった。そして、聖女になったのは私だった。聖女の力を手に入れた私はこれまでの聖女同様国のために……働くわけがないでしょう! 今さら、優しくしたって無駄。私はこの聖女の力で、自由に生きるんだから!

聖人の番である聖女はすでに壊れている~姉を破壊した妹を同じように破壊する~

サイコちゃん
恋愛
聖人ヴィンスの運命の番である聖女ウルティアは発見した時すでに壊れていた。発狂へ導いた犯人は彼女の妹システィアである。天才宮廷魔術師クレイグの手を借り、ヴィンスは復讐を誓う。姉ウルティアが奪われた全てを奪い返し、与えられた苦痛全てを返してやるのだ――

処理中です...