カイジン王の娘リミカ

藤田吾郎

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ここはとある1つの魔法世界である。マギ・ワールドと言われる世界。ここは魔法使い、装飾武器使い、精霊使い、芸術家、獣人、鳥人、魚人の人々と自然溢れる豊かな森林に山岳地帯に海水に青く澄んだ空。そこから取れる資源。

そして様々な動物って言うより大型なモンスターと言われる生物と一緒に共存する世界。

その歴史の中には見た目の違いから差別や奴隷のあった歴史。
また文化や価値観の違いからの軋轢のあった歴史。
それぞれの国の威信の名の下に正義を掲げ国の為に、自由の為に、欲望の為に様々な想いが重なり戦争をした歴史。

世界が全て初めから分かり合えた歴史は恐らくないだろう。
人々は身も心も傷付き、もがき、苦しみ、その中で人々は一歩、また一歩と長い歴史の中で歩み寄り、分かり合い、称え合い、理解し合ってこそ世界は平和で、笑顔で、誰もが幸せな世界での共存へと近づく。

そして、長い歴史を経て、このマギ・ワールドは平和で笑顔で幸せの世界を作り上げていった。

だが、皮肉にもどの世界にも共通して言える事は【平和は長続きしない】という冷たい現実だ。

それは突如として奴等は現れた人間でもなく、獣人、鳥人、魚人でもなく、精霊でもなく、モンスターでもない本能のままに喰らい、破壊し、陥れる奴等をこの世界では後々に【カイジン】と呼ばれる。

カイジン達は人間や獣人、鳥人、魚人に精霊やモンスターを喰らい、そこに住む住処や森林を破壊して、空や海を汚しては、その姿を見てはカイジン達は高らかに傲慢にゲスな顔をして嘲笑う。

殺し、強奪、蹂躙しては踏みにじり、破壊の限りを暴虐する。この世界での生き物の尊厳は何処へやら。

そして、この世界の住人は立ち上がる。この世界を守る為の正義。平和を取り戻す為の信念。そしてこの世界の人たちの不幸を1日でも早く薙ぎ払う為に戦う事を決意する。

魔法使いは杖と魔道書を手に取り、武人達は装飾武器を身につけ、精霊使いは沢山の精霊達を従え、芸術家は魔法道具を持ち、獣人は闘争本能を解放し、鳥人はその翼を広げて、魚人は仲間を集め、必ず平和を取り戻すために立ち上がり、カイジン達との全面戦争へと宣戦布告する。

まさにカイジン軍VSマギ・ワールド連合との世界の命運を分けた世紀の聖戦とも言える後々に語り継がれる【サウザンド・デイ戦争】は血で血を洗う凄まじい戦争となる。

今までの国同士での戦争が、ただの小競り合いにしか思えないほどの戦争で、日増しに激化しては拮抗するばかりで人々は多くの血を流し犠牲になるばかりで住人は早く安心で平和な世界で過ごしたいと願うばかり。

その思いとは裏腹に戦う兵士は減るばかりで段々と生き残った兵士達は士気が下がり、マギ・ワールド連合は敗北への道を辿るのかと思った所に戦争終結後に語られる7人の英雄達が現れる。

その7人は魔法の杖でもなく、魔道書でもなく、装飾武器でもなく、精霊を従わせる訳でもなく、魔道具でもない武器。

【エボル・ギア】と呼ばれるアイテムを発動する事によって鎧を纏い武器を持ち、エボル・ギアの力で敵を葬り去る集団。
どの国にも属さず名乗る職業もバラバラ。ただ自由を求めて旅を続ける集団。
彼等を【セブン・ギアーズ】と呼ばれた。

セブン・ギアーズの参戦によって傾いた戦況は逆転して次々と戦場を攻略。1人1人がまさに国1つ分の力を持ち、完膚なきまでにカイジン軍を一掃する姿に兵士達は士気を取り戻し戦争は大詰めへと向かう。

最終局面での戦い【ファントム城の決戦】と呼ばれる。
そこはカイジン軍の本拠地であり、カイジン王とカイジン幹部と残り全てのカイジン兵士が1つに集まっている。つまり、このファントム城を攻略成功すればマギ・ワールド連合の勝利となる大事な総力戦となる。

総力戦の前夜。

俺はセブン・ギアーズのメンバーを全員集めて最後の作戦会議とミッションの調整を行う事にする。

因みに俺の名前は【ショウ】だ。メンツが色濃く個性の強いセブン・ギアーズの纏め役って所だ。

「ショウ。取り敢えず明日の決戦に使う小道具が出来上がった。試しに使ってみたが、まさに完璧までの小道具だよ。さすが吾輩だね。」

この自画自賛をする見た目が若い割には喋りが独特の科学者は【タイガ】だ。年齢は俺たちの倍近くらしく若々しいのもタイガ自身の研究の成果だそうだ。

そしてタイガがエボル・ギアを作った生みの親でもある。

「さすがタイガさんっす!まさか自分のアイディアをこんな形で速攻で作り上げるなんて、さすが天才科学者っす!」

元気いっぱいでシルクハットにマントを身につける青年の名前は【アスカ】だ。セブン・ギアーズの中でも最年少のため全員には基本的に敬語なマジシャン。タイガの発明のヒントはアスカからの何気ない一言だった。

「いやいや、アスカ。さすがの天才科学者の吾輩でもこんな事は思いつかなかったよ。さすが若い柔軟な発想には追いつかないね。」

「まぁ、これで明日の総力戦は私達マギ・ワールド連合の勝利でサウザンド・デイ戦争も終幕って訳だな。」

聖書を片手にテーブルの上にある紅茶を一口飲んでいるメガネに長髪の神父の名前は【ケンジ】。セブン・ギアの参謀的な存在。細かい分析と洞察力で相手の裏を書く策士。神父のくせに煙草、酒、博打をする生臭坊主。

「拙者は争いが無ければ、それで良いでござる。拙者の目の前で人が倒れていくのは真っ平御免でござるよ。」

ソファーの上で胡座をかき、瞑想をしているのは【リュウジ】。漢の中の漢で武士道を貫き、常に戦う時は死の覚悟を持って戦いに挑み、卑怯な手を使わずまさに正々堂々な戦いぶりをする武芸者であり、また時に戦場での作戦に迷った際には占いをしてどちらが良いかを的中させる凄腕の占い師でもある。

「それは僕も同感ですよ。傷は治せても死んだ者は生き返させられない。死んだらお終いですし、愛する人や大切な友人に家族に会えなくなるって考えると悲しくなります。」

リュウジの隣で座る白衣姿の優男は【コウタ】。見た目そのまんまの優しく、おおらかな性格だが、その中に熱い信念を持ってる。目の前で困った人を見掛けると助けずに居られない医者だ。

「それより!早くこの戦争を終わらせてオラのロックンロールでみんなを笑顔にさせるっぺよ!音楽は魂の叫びだからこそ、みんなが熱くなれるし夢中になれる!それだから、みんなが幸せになれるっぺ!」

音楽を熱く語る田舎者丸出しの男の名前は【ヤマト】普段の言葉は訛りが強いが彼は作詞・作曲し更にヤマトが路上ライブすれば、みんなが集まりヤマトの歌声を聴いた観客は笑顔になって帰って行くという音楽の才能の塊の音楽家。

すると俺達の集まるコテージのドアからノックの音が聞こえてきたので俺は立ち上がりドアを開けると若い兵士が数人立っている。

その若い兵士と言うのは獣人の住む【ズーパーク】と鳥人の住む【スカイバード】と魔法使いが住む【ウィザー】に武人の住む【ウォーリア】の国の若い兵士達であった。彼らとは幾多の戦場で最前線で戦い同じ釜の飯を食ってきた仲間達だ。

「セブン・ギアーズ様!全てパンサー王からお聞きしました!」

「自分もです!ガルーダ王から明日の総力戦について!」

「何故ですか?!総力戦は貴方達7人だけで敵の表から全面的に戦わないといけないのか?!」

「我々は貴方達が居たからこそ生き残れたのにどうして?!」

順番にズーパーク人、スカイバード人、ウィザー人、ウォーリア人の若い兵士達が俺達に食い入る様に詰め寄ってくる。

「王達め……あれほど、この作戦は他の兵士達には極秘で内密にと念を押しといたのにな……なんか適当に誤魔化しておいて欲しかったな。」

俺は頭を抱えながら軽く頭痛を覚えるのである。

「あーあ。私達の作戦がバレてしまったか。」

ケンジはタバコを取り出し口に咥えてマッチで火を付けて溜息を混じらせながら煙草を吹かす。

「まぁ、秘密はだいたいすぐにバレてしまいますので仕方がないと思いますよ?ショウ君。」

ニコニコと笑顔を絶やさないコウタ。言ってる事は間違いじゃないんだけどさ。

「確かに、そなた達の言う通り、今回の作戦は極秘扱いで我々と王達の間でしか連絡を取り合わず、そなた達に一切の連絡をしなかったのは申し訳ないでござる。」

リュウジはソファーから立ち上がり若い兵士達に深々と頭を下げる。

「しかし何故ですか?セブン・ギアーズ様達は表から正面攻撃で他の味方達は薄手になった裏門から攻撃するというのは?!」

「そ、それはっすね。明日の総力戦にはカイジン達を殲滅命令が世界政府から達しておりましてね。それには、かなり激しい戦いになるっすから。」

「だからって、自分達が蚊帳の外なんてあんまりです!」

ウィザー人の若い兵士がアスカに詰め寄り、アスカは困り顔をしながら答えるが、ヴィザー人の若い兵士は納得がいかない様子。

「まぁまぁ、若い兵士達よ。落ち着くね。吾輩達は君達、若い兵士が戦場で先陣を切って戦う勇敢さにはとても感動したね。だが、これは戦争。いつ死んでもおかしくないね。君達には待っている者達が居るね。大切な友人、愛する恋人、そして家族。待っている者達が居る以上は生き残らなければいけないね。」

タイガの言葉に【待っている者達】という言葉は俺達セブン・ギアーズには無いもの。とうの昔に待っている者達が居ない。しかし、この若い兵士達には友人、恋人、そして家族が待っているんだ。だから戦争から生きて帰って来なくちゃいけないんだ。

「それに私は、この戦争で何人も何十人も何百人と数え切れない人数の人達を弔って埋葬してきたんでね。もう亡くなって残された人達の悲しい顔は見たくないんでね。」

ケンジは煙草の火種を灰皿に押し潰して悲しい目をしながらも苦々しく笑う。

「それは同感ですね。僕もこの戦争で救えなかった命が数え切れないほどでしたね。そして亡くなる直前の顔と声は一人一人覚えています。共通して言えるのは待っている人の名前と《生きたい》って言う意志です。だから貴方達は心配しないで僕達に任せて下さい。」

コウタは医者で戦場で傷付いた兵士達に全力で治療した。そして助けられなかった命があるたびに涙を流していたのを覚えている。

「それによ!若い兄ちゃん達っ!ちゃんと生きて帰ってきたらオラのリサイタルコンサートを無料で聞かせてやるから楽しみにしてるっぺよ!ファニー&ピース!笑顔で平和。それが一番だっぺ!」

ヤマトはウィザー人とウォーリア人の若い兵士と肩を組んではニカッと笑いながら語る。ヤマトの歌が大好きだって言っていた兵士も勿論居た。だが、無残にもカイジン達の襲撃で呆気なく死んでしまった日には滅多に涙を見せないヤマトでさえ大きな声で泣き叫んだほどだった。

「約束する。例え敵の数が何十人。何百人、何千人と襲い掛かろうと俺達は絶対に死なねぇ。必ず戻ってきて平和になったらお前達と一緒に美味い酒飲んで馬鹿騒ぎするって約束するぜ。」

「必ず……必ずでずよね!!」

「勿論だ。」

若い兵士達は涙を流しコテージを後にして俺達は明日の総力戦の為に早めに休み、翌朝を迎える。

迎えた翌朝。

俺たちカイジン軍の本拠地であるファントム城へと辿り着く。
ファントム城は鬱蒼とした森林の中に高めの丘の上に石材で造られた城であり、城を中心とした周りを囲う高く厚い城壁。

ここまで来るのに鬱蒼とした森林をかき分けなくちゃいけないのに、更に着いたらバカ高くて分厚い城壁に丘の上にそびえ立つ城。

こりゃ攻め落とすには骨が折れるってもんだよな。

「リュウジ。この辺で大丈夫か?」

俺は鬱蒼とした森林の中から、ひときわ大きな幹から2つに枝分かれした特徴的な原木を指差しながらリュウジに聞く。

「うむ。拙者の占いでは、2つに首別れした竜に似た木の前で戦をするのが吉と出てる。」

昨日、若い兵士達が帰った後に俺達は最後の作戦会議としてタイガの発明品をどの場所で使うかで考えていた。

コレをどのタイミングで使うかで戦争の勝利が決まる鍵だ。タイミングを誤れば俺達の負けは必死だ。だからこそ使う場所を考えなくちゃいけない。

牧師のケンジがマジシャンのアスカと科学者のタイガの3人で偵察を行った時にアスカはその周りの景色を撮影したものと地図を照らし合わせた結果、複数の候補が上がり、最後にリュウジの占いでこの場所に決定した。

「確かに、この場所なら見晴らしが良いな。ちょうど城からアップダウンだから敵は攻め込む時も私達のいる所まで駆け上がらなくちゃイケナイからな。」

ケンジは丘の下を眺めながら何か納得したように頷く。

「これは、また暴れがいがありそうな戦さ場だっぺよ!ここならオラが全力出しても大丈夫そうだっぺ!!」

「ヤマトさん!それは自分も一緒っす!これで今まで戦ってきて死んでいった仲間の分まで戦い抜くんですから……」

ヤマトの元気百倍の言葉にアスカも顔を俯きがちに憂いながら頷く。

「まぁ、ヤマト君、アスカ君。思う存分暴れ回って多少ケガするのは構いませんが、お願いですから死ぬのは勘弁願いたいものですよ。傷やケガは治せても死んだら医者の僕でもお手上げですからね。」

コウタはヤマトとアスカの間に割って両方の肩を組みながら優しい顔でニコニコと笑いながら言う。

「我らの城の前に人間どもを発見したぁああっ!全員、集合ぉぉおおっ!!」

カイジン軍の1人が俺達を見つけた途端に鶴の一声で一瞬にして城壁を飛び越えてきたカイジン軍が数万人と現れる。
やはり、いつ見ても禍々しい内面が滲み出た様な狂気に狂った顔をしてやがる。

「おやおや。そうこうとしているうちに敵さんが吾輩達に気付いたようだね。」

「まぁ、こんだけカイジン軍が居るなら概ね作戦は開始して良いか?」

「そうだね。私達に気付いてからまだまだカイジン達は私達に目がいってるからまだ増えると思う。」

「うむ。天は拙者達に味方したようでござる。」

「こんだけ居ればオラ達が気兼ねなく大暴れが出来るってやつだべ!!」

「一気に片付けましょう!そして自分達だけじゃなく、みんなが平和で暮らせる明日の為にも!」

「やる気満々なのは良いですけど、ちゃんと僕が治療できる範囲で帰ってきてくださいね。」

俺達は各々に覚悟を決めて、腹をくくり、そして平和になる世界の為だけに戦争に参加してきた。

この世界で生き辛いと思い考えてた俺達だからこそ、この世界で必要とされる事が何よりも喜びであり自分の自信にもなった。

だからこそ、この戦争に勝たなくちゃいけないんだ。
1番は平和で笑顔で暮らしたい人達が大勢いることなんだけどさ。

「みんな準備は良いか?」

「いつでも構いませんよ。」

「さっさと、おっ始めるっぺよ!」

「自分も準備オーケーです。」

「吾輩も準備満タンね。」

「私もだ。」

「拙者も覚悟は決まったでござる。」

俺の掛け声にコウタ、ヤマト、アスカ、タイガ、ケンジ、リュウジの順番で言う。

これで終わるんだ。血で血を洗う見苦しい戦争を俺達の手で全て終わらせるんだ。

そんで俺達は上着の懐からエボル・ギアを手に取る。
エボル・ギア。それは手の平サイズの歯車をデザインにして、その能力は魔法鉱石、精霊の力、モンスターの力、そしてタイガの天才的な科学の結晶による俺達の力。

エボル・ギアの発動条件は俺達の声帯認証。
発動時はエボル・ギアに向けてこう叫ぶ。

「「「「「「「変身っ!!」」」」」」」

【Evolve gear start GURARISU】

俺は全身を灰色の炎に身を包まれ、その炎を振り払うと黒をベース複眼に黄色の複眼にシルバーのラインが入り右手には短剣を逆手に持つ鎧の戦士である【グラリス】に変身。

【Evolve gear start TITAN】

ヤマトは全身を緑色の炎に包まれ、その炎を振り払うと筋肉隆起に顔はデスメタルな感じのペイントが入りギターを掲げる鎧の戦士である【タイタン】に変身。

【Evolve gear start OGRE】

コウタは全身を紫色の炎に包まれ、その炎を振り払うと心に静かな怒りを宿し、頭には2本の角を有する鬼をイメージし大きな医療メスを持つ鎧の戦士である【オーガ】に変身。

【Evolve gear start SOGGY】

アスカは全身を青色の炎に包まれ、その炎を振り払うとシルクハットに長いマント胴体にスカルの紋様をイメージし銃を片手に持つ鎧の戦士である【サギー】に変身する。

【Evolve gear start VORUGU】

タイガは全身を黄色の炎に包まれ、その炎を振り払うと金色をベースに片目の複眼は赤く、反対の目はキズで無く。狼をイメージさせる鎧の戦士である【ウォルグ】に変身する。

【Evolve gear start ZERONOS】

リュウジは全身を白色の炎に包まれ、その炎を振り払うと黒い面に周りには白く彩られた隈取り、パーカーのフードを被り首には大きな数珠の鎧に槍を担ぐ戦士である【ゼロノス】に変身する。

【Evolve gear start FAIERO】

ケンジは全身を赤い炎に包まれ、その炎を振り払うと右半身は黒をベースに赤いライン。左半身は白をベースに赤いライン。そのラインを辿ると悪魔をイメージし背中には鎖で巻かれた棺を担ぐ鎧の戦士【ファイエロ】に変身する。

「こ、こいつらぁああ!!お尋ね者のセブン・ギアーズじゃあねぇかぁぁあっ!!!」

「お尋ね者って、俺達カイジン達には相当悪名高いようだな。」

「まぁ、私達が介入するまでカイジン軍はかなり優勢だって話だからね。」

「おぉ!オラ達、敵まで有名だなんて照れるっぺなぁ!」

「いや!ヤマトさん。それ褒められた言葉じゃないっすよ!でも、まぁ敵だから仕方ないっすね。」

「てか、僕達。とうとう素顔までバレてしまったようですけど、今日で最後ですから関係ないですね。」

「コウタ殿の言ってる事は正解でござる。ここからは正々堂々と正面から戦うでござるよ。」

「少し待つねリュウジ。正々堂々はもうちょい待つね。作戦を開始するね。」

これから戦うって時にいつもと変わらず余裕綽々と軽口を叩く俺達にタイガは今回の作戦で使う手の平サイズのスイッチを取り出す。

「この天才科学者の吾輩の歴史に名を刻む発明をとくと見よ!ポチっとな。」

タイガはその秘密兵器のスイッチボタンを押すと一瞬にしてマギ・ワールド連合の兵隊がゾロゾロと現れる。

「な、な、な、なにぃぃいいい!!転移魔法だとぉぉおお!!全軍に告ぐ!全軍ファントム城の正面門前に集まれぇぇえええ!!!」

カイジン軍は無線でそう叫ぶと更に城壁門前にカイジン軍が溢れかえり、カイジン軍は雄叫びを上げながら丘を降りて俺達を討ち取ろうと数万人のカイジン軍が俺ら7人に向かってくる。

その瞬間にファントム城の裏手から大砲を打ち鳴らし城壁の壁を打ち砕く様な轟音が鳴り響く。

「なぁにぃごとだぁぁああ!!裏で何が起きている?!」

(連絡します!ファントム城の城壁裏門にてマギ・ワールド連合の総攻撃が始まった模様!!)

「そんなわけがないっ!決して有り得ないぃぃ!何故ならばマギ・ワールド連合の全軍は我々の前にいるのだからなぁぁあ!!」

(だが、しかし全軍が正面門前に集中しているため、裏門前は手薄になっております!!)

「ぐぬぬぬ!!何故だ?!何故だぁああ!!」

カイジン軍の現場監督が有り得ない現状に困惑する顔を他所に反対の丘に立つ俺達は作戦の成功を確信した。

「どうやら、この戦争は俺達の勝利だな。」

「タイガさんのスイッチを押した瞬間にマギ・ワールド連合本部に連絡入れたっす!」

「まぁ、この吾輩の作った発明とは幻。見かけのフェイクね。」

「はい。ポチっとな。」

続けてタイガは再度、スイッチボタンを押すとマギ・ワールド連合の映像を消すと何事も無かったように周りには俺達7人だけとなる。

「これはぁああ!我々を騙しあったなぁぁあ!!セブン・ギアーズめぇぇええ!!」

カイジン軍の1人が高らかに怒号を上げるが、こいつらは今まで、この世界の住人を騙し、生態系を狂わせ、人々を苦しませ、幸せを奪い、恐怖のドン底に陥れた連中。慈悲も情けも無用だ。

「よし!ヤマト、アスカ、ケンジ!作戦通り正面門前の連中を任せたぞ!!」

「了解だっぺよ!ショウ!」

「私に任せておきな。」

「コウタさん、リュウジさん、タイガさん。そしてショウさん。ご武運を!」

ヤマト、アスカ、ケンジの3人はそう告げると先陣を切って丘へ駆け下りる。そして其々、身に付けている武器を持ち構えるとヤマト、ケンジ、アスカの3人ベルトのバックルを2回タッチする。

「さぁ、オラの天国への片道切符ソロライブだっぺよ!」

【Heavy Rock the end】

ヤマトはエレキギターを構えて骨太で破戒的な音撃をカイジン軍に叩き混むように演奏すると一瞬にしてカイジン軍は塵となり爆風で砂埃と化す。

「お祈りは終わったかな?私から最後の贈り物です。」

【Death Penalty the end】

ケンジは担いでいた棺を降ろし鎖を解くと棺が勢いよく開いた瞬間にブラックホールの如く怪人が次々と吸い込まれ、その叫びは悲痛な賛美歌と化す。

「さて、これからショータイムの時間っす。今日はカイジン達が突如と消えちゃうイリュージョンっす。」

【Launcher Strike the end】

アスカは片手サイズの拳銃からサイズから銃口、グリップ、スコープ、ストック、マガジンと次々とパーツが掛け合わさり拳銃からマシンガンサイズになり銃口からミサイル型のエネルギー弾を放つとカイジン軍は消し炭の如く燃え尽きる。

カイジン軍をヤマト、ケンジ、アスカが一掃してくれたお陰で道が拓けた為、俺とコウタとタイガとリュウジで城の中へと乗り込む為、丘を駆け下りてからファントム城の城壁前へと向かう。

「行かせないぞぉぉ!」

「邪魔だ。」

「ぐぇえ!!」

城へ乗り込ませない為、俺に襲い掛かるカイジンを短剣で急所を的確に突き刺しさすと、カイジンは胸から血を流し力無く倒れこむ。

「奴等をこの城へと近付けさせる……ごふぉ……」

「すいません。あまんまり相手にしていると時間がないので。」

コウタはメスで一太刀を浴びせるとカイジンの首を跳ね上げて頭は宙に舞い転げ落ちると首から下は血しぶきを浴びて倒される。

「見えてきたね。吾輩とリュウジの同時攻撃で門をこじ開けて正面突破ね」

「承知したでござる」

タイガとリュウジはベルトのバックルを2回タッチする。

【Kill Fang the end】

タイガの両手の甲から3本の鉤爪が飛び出し、その鉤爪にはエネルギーが集中して両手を広げてその鉤爪を交差しながら切り裂くと交差した鉤爪のエネルギーを放つ。

【Cyclone Break the end】

リュウジは槍を構えて槍の矛先にエネルギーを集中的に宿した瞬間に身体を高速で回転させ竜巻の如く攻撃。

タイガとリュウジの同時攻撃に高くて分厚く頑丈なファントム城の城壁および正面門を大破させて俺、コウタ、タイガ、リュウジはカイジン王の居ると思われる城の頂上へと階段で駆け上がる。

その途中、次々と襲い掛かるカイジン達を1体、また1体と確実に息の根を止めながら3階に上がると見た事あるカイジンが俺達の目の前へ立ちはだかる。

「やぁやぁ。セブン・ギアーズの諸君。久しぶりですなぁ。」

鮫を思わせるような姿に左右には4つの目を持ち好戦的で血生臭いような雰囲気に立つカイジン軍の幹部スクアーロ。

「特にリュウジ。あの時はどうも。」

「あぁ、忘れもしない。女、子供を痛めつけた挙句に虐殺する貴様の姿を一度たりとも忘れたりしない。」

「良いねぇ。声は冷静でも心は怒りでいっぱいだぁ。」

俺達とスクアーロが出くわしたのは別の戦さ場の近くで民間人がカイジン達に襲われているという連絡をもとに俺とリュウジで駆け付けると、それは酷いととしか言いようのない状況だった。

着いた際には時既に遅く周りを見渡す限りは残された人の片腕やら骨の見えた片足に潰された頭が殆どだった。僅かな希望で生存者を探した結果。

力なく倒れ込む1人の女の子を襲うとしてるスクアーロ。そして目の前には人としての原型を留めていない姿をした両親。

俺とリュウジはすぐさま応戦してスクアーロを退けるが少女はリュウジに抱き着き涙を流しながら言った。

『お願い……あのカイジンを……私の大好きなパパとママの仇を討って!!』

『その約束。しかと受けたでござる』

そう静かに少女と約束を交わしたリュウジだがスクアーロはそんなの関係なしにニタニタと笑う。

そして如何にも下衆で下品極りない性格が分かる声をするスクアーロに俺は沸々とハラワタが煮えくり返りそうになるがリュウジは冷静な面持ちで話す。

「拙者は怒るという感情は持ち合わせてはおらぬ。しかし拙者には約束があるでござってな。」

「もしかして、あの時、食い損ねた女の……」

俺はスクアーロに飛び掛かろうとした瞬間にリュウジに静止される。

「黙れ。その下卑た口を閉じろスクアーロ。貴様は拙者が討ち取るでござる。コウタ殿、タイガ殿。そしてショウ殿。これは戦争で身勝手は承知でござるが……」

「大丈夫です。リュウジ君。僕が貴方に何を言ってもきっとやるんでしょ?」

「吾輩もあの時、現場には居合わせては居なかったが将来、有望な子供を手にかかるとは万死に値するね。」

「リュウジ。約束したんだろ?あの子とよ。なんなら果たさなくちゃ漢の名が廃るぜ?」

「かたじけない。」

リュウジは俺とタイガとコウタに頭を深々と下げてから一歩を踏み出し槍を構えてスクアーロに向けて叫ぶ。

「スクアーロ!貴様と一騎打ちを申し込む!正々堂々と、いざ!尋常に勝負っ!!」

「まぁ良いだろう。これで1人食えるんだからね!」

するとリュウジ対スクアーロとの一騎打ちが始まる。
死ぬなよ……リュウジ。

「コウタ!タイガ!俺に掴まれ!イッキに駆け上がるぞ!!」

「そうはさせ……ちっ!」

スクアーロは上の階に行かせないように俺らを仕留めようとするがリュウジの槍がそれを制止する。

「貴様の相手は拙者でござる!よそ見をしていると死ぬぞ!!」

「小癪な!」

コウタとタイガが俺にガッチリとオンブに抱っこの状態で捕まった後にベルトのバックルを1回タッチする。

【Speed Light attacker】

その瞬間に目にも映らない速さで階段を駆け上がる。俺のグラリスの能力である高速移動。高速移動によって速い攻撃やズラかる時に大いに役立つ能力。

俺は階段を駆け上がる途中でカイジン達を薙ぎ払いながら見て行くと段々とマギ・ワールド連合の兵隊達も見えてきてる。

よし、作戦は成功のようだ。後は俺らが怪人王を倒せば、この戦争は終わりだ。

俺はスピードを緩めず上の階に駆け上がりカイジン王の居る屋上まで駆け上がり、屋上のまでたどり着き、屋上の扉を蹴り飛ばすと吹き飛び視界が開けて屋上に着いた。

「ふう。まるで絶叫マシーンに乗ってる気分だね。」

「それよりもカイジン王は何処にいるんでしょうね?」

「おい、あそこにオズワルド王にキュロス王、更にパンサー王とガルーダ王が何か立ち尽くしてるぜ?」

「行きましょう。」

俺らは魔法使いの国ウィザーの王様であるオズワルド王。武人の国ウォーリアのキュロス王に獣人の住む国ズーパークのパンサー王と鳥人の住む国スカイバードのガルーダ王に駆け寄る。

「王たち。いったい何をしてるだ?」

「おぉ。セブン・ギアーズのショウ。それにコウタとタイガじゃねぇか。ちょうど俺らがカイジン王を討ち取ったところだ。」

4人の王達の目の前には右手は消し炭にされ、左足の膝や足首はあらぬ方向に捻られ、左手は骨が見えるほど肉は裂かれて、右足は何かに溶かされたように腐敗。そして頭は撥ねられ頭を剣で貫かれいる悲惨な遺体。

その姿は紛れもなくカイジン王の遺体であった。

カイジン王の亡骸を確認した後に俺、コウタ、タイガはエボル・ギアの変身を解く。

【Evolve gear sleep】

3人同時に変身を解くとエボル・ギアの機械音が静かに鳴り響く。

俺は鉛色に濁り曇っていた空は晴々と太陽を見せて鳥達がさえずりながら飛び立つのを見つめる。

そうか……カイジン王はこの各国を代表する王様達の手で討ち取ったなら、それで良い。これでサウザンド・デイ戦争が終結か……

「それよりパンサー王にガルーダ王!だいぶ傷が深いです!今すぐ治療を!!」

コウタはパンサー王とガルーダ王が身体の至るところに滴り落ちる血液を見て慌てて医療用のバックを持ち出す。

「済まない。コウタ君。これくらいの大丈夫だ。」

「パンサー王の言う通り。我々は自己治癒力が高いため、これくらいの傷なら1日で完治する。」

「し、しかし!ガルーダ王。」

確かに獣人や鳥人。今、ここに居ない魚人達は自己治癒力が高く、人間では深手の傷や怪我をすぐに完治してしまう。

それを他所にキュロス王は見下し口調で言う。

「まぁ、動物達がそう言うなら無理にしなくても良いんだと思うんだがなぁ」

「辞めぬか!キュロス!!」

「おぉ、怖い怖い。」

キュロス王の差別的な発言に一喝するオズワルド王に飄々と右から左へと聞き流すキュロス王。

「それよりも君達の仲間の手当てをした方が良い。」

するとパンサー王は扉の入り口からリュウジを肩組みながら担ぐヤマトとアスカ。そしてタバコをふかしながら歩いてくるケンジもあらわれる。

「リュウジ!」

俺はすぐさまリュウジの前に詰め寄るとリュウジは座り込む。

「仇は……仇は打ったでござるぞ……」

「わかった。もう喋らなくて良い。コウタ!リュウジを頼む!」

「分かってますよ!ショウ君。すぐ手当しますからねリュウジ君。」

「かたじけない。」

コウタは急いで医療用バックから手際よく消毒薬や綿花を取り出し止血しながら軟膏を塗り包帯を巻き始める。

「そんでカイジン王は?」

「俺達がついた頃には王達が討ち取っていた。」

「なるほど。どれどれ。」

ケンジは煙草を咥えながらカイジン王の遺体に近付き十字架を指で描き合掌。

「まぁ、これだと生き返る事はなさそうだ。私達の完全勝利だ。」

「これで……やっと平和が訪れたんっすね。」

「これで、みんなが笑顔で暮らせる世界を迎えられるっぺ。」

「吾輩は研究に没頭出来るね。」

その後にマギ・ワールド連合本部にカイジン王を討ち取り、サウザンド・デイ戦争もマギ・ワールド連合の勝利で終わった事が告げられる。

「タイガ君。」

「なんだね?ガルーダ王。」

「今後、貴方は研究に没頭するって聞いているが、是非ともスカイバード国で研究はどうかな?」

「おぉ!それは願ってもない話。吾輩の様な人間がスカイバードへ足を踏み入れて貰えるとは何とも光栄だね!」

タイガは胸を躍らせながら喜んだ表情でガルーダ王に近付く。

「いえいえ。貴方の発明はアッと驚かせられるばかりで。」

「おぉ!これはまた嬉しいね。是非ともスカイバード国で研究をさせてもらうね。」

どうやらタイガはスカイバード国で色々と研究を没頭するみたいだな。

「ケンジ牧師。」

「なんかようです?オズワルド王。」

「ケンジ牧師は旅を続けるのかな?」

「いや、昨日の話した時点で戦争が終わったら私達セブン・ギアーズはそれぞれ別の道を行くって話したんで予定は特にない。」

「それなら我の国で戦災孤児の教会を任せても良いかね?」

「戦災孤児ねぇ……可愛いシスターいっぱい付けてくれるなら。」

「そういう店ではないのだが……シスターやらお手伝いは集めよう。」

「なら、その話は乗った。」

ケンジはオズワルド王に握手をガッチリとする。ウィザー国で戦災孤児の住む教会を任せてもらうみたいだな。

「おい。リュウジ。」

「キュ、キュロス王。」

「まぁ、怪我人は座ってな。」

キュロス王はしゃがみ込みリュウジに近付き、話掛ける。

「このケガが治ったら俺の国に来な。お前をコロシアムでの武者修行だ。悪い話じゃねぇだろ?」

「武芸者に取って有難き幸せ。」

「ハハハハハ!さすが武芸者!その性格、気に入った。」

キュロス王は立ち上がり高らかに笑うとその場を離れて立ち去る。リュウジはウォーリア国のコロシアム戦士として活躍する予定だ。

「ショウ。実は折り入ってお願いがあるんだが良いかね?」

「何ですか?パンサー王。」

「実はこの戦争でズーパークのハンター特に男手が減ってしまってな。これからまたモンスターの繁殖時期になるんでな。」

「はい。」

「そこで君にはズーパークで野生モンスター狩りをお願いしたい。良いかな?」

「了解です。元々、俺はハンターをやっていたので嬉しいです。」

俺はこれからズーパークで1人のハンターとして生きる事になる。

「コウタ、ヤマト、アスカはどうするだ?」

そう。この3人はこれからどうするんだ?戦争が終わった俺達に行き場ない。平和な世界に戦士は要らないから。人々と溶け込んで生活していくしかない。

「僕はモンスター地帯とズーパークの境目に診療所を立てて、ゆっくりと過ごします。」

「オラは1人旅をするっぺよ!野宿しながらストリートライブとかして生活して、みんなを楽しくするっぺ!」

「自分もヤマトさんと一緒で1人で旅をしながら大道芸して笑顔にさせたいっす!」

コウタ、ヤマト、アスカのそれぞれの道を行く。

一緒だった俺達は寂しい気持ちがあるけどサヨナラではない。どんなに離れていても同じ世界、同じ空の下に居る。
そう思うと寂しい気待ちはどこ吹く風ってやつだ。

そして2日後に開かれた戦争終結の凱旋フィナーレを最後にセブン・ギアーズは活動休止という名の事実上の解散という形となる。

俺達がそれぞれの道を歩み出し、生活して変わる時代に人々が変わらず笑顔と平和に過ごす世界。


物語の始まりはサウザンド・デイ戦争が終結してから8年後の月日が経った所から始まる。

それは俺とカイジン王の娘【リミカ】との出会いから動き出す。


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