ファウスト−FAUST-

藤田吾郎

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第5話 新たな戦士-さぁ堕天使よ断罪を行う-

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「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」

「1人です。」

「お1人様で?」

「はい。」

「新規お客様入ります!」

俺はいつもの様にオジサンとオバサンの店で住み込みで働いてる。古風な店ながらも、いつも店は商売繁盛。今日も昼と夜問わず多くのお客様が来店してくれる。

時間は夜の9時15分。

そろそろラストオーダーの時間は9時半だからお客さんももう来ないだろう。だけど、ここ数日は何かとボッーっとする事が多いな。

数日前に優菜と温泉旅行に行きべリアルを倒した後にヨハネが出てきた時の話を思い返す。



『久しぶりですね大翔さんにダビデ。』

相変わらず不気味な笑顔をみせるヨハネ。全く何しに来やがったんだ?

『おい、何か用か?』

『お久しぶりです。ヨハネ様。今日は何か用で?』

ヨハネは笑みを絶やさずに俺達に話し掛ける。

『いえ、用事と言うより少し報告を。』

ちょっと何を言いたいのか解らないから質問を返す。

『報告ってなんだ?ヨハネ。』

するとヨハネは不気味な笑顔から真顔になり話し始める。

『実は、さっきも言った通り報告が2つありまして。』

『だからなんだ?』

勿体振るので少しイラついた態度で話す。

『まずは1つ目の報告。大翔さんがさっき倒したノームと言うべリアルで精霊族は全員倒した事になります。』

『って言うと何だ?』

『べリアルの中でも精霊族は三下中の三下。ですのでこれからもっと強いべリアルが出現します。ですので、大翔さんのサポートをお願いしますねダビデ。』

『かしこまりました。全力でマスターをサポートします。』

『お願いしますね。』

ダビデはヨハネにペコリと頭を下げる。

『それで2つ目は?』

『2つ目は。近々ですが大翔さんの目の前に新しい仲間が現れます。』

俺はその瞬間に自分の耳を疑いヨハネの言葉を聞き返す。

『いったいどういう事だ?!いったい誰だ?!いつ現れる?!』

俺は冷静さを失い質問をヨハネにぶつけるが当人のヨハネは至って冷静の様子。

『まぁ落ち着いて下さい。大翔さん。その人は大翔さんとお知り合いですので。』

『いや!落ち着けるかよ!更に誰だし?!』

『あっ私はそろそろ帰りますので。』

『てめえ!人の話を聞け!帰るな!』

そう言った後にヨハネは次元の歪みの元へそそくさと帰っていった。

『あんの野郎!』

『まぁマスター。その内、解る事ですので早く帰らないと。』

『ん?やべぇ!』

俺はふと腕時計を見ると旅館の朝飯の時間だと気付いて全力疾走で旅館に戻った。



あれから数日。べリアルは音沙汰も無しで現れる気配も感じない。

ったく!いったい誰なんだよ!俺の知り合いって!

すると店のドアが開く音が聞こえ俺は振り向くとお客が入ってきた。

「すいません。まだ大丈夫ですか?」

「えぇ、大丈夫ですよ。お1人ですか?」

「はい。」

「新規お客様入ります!」

そのお客は上着を椅子に掛けて座り、お客は随分と若い男で年齢は俺と優菜と同じかちょっと歳上に見える。

黒髪の短髪で顔も整っていて、白のYシャツに黒のベスト黒のデニムパンツをはいていた。

でも、俺には初対面には思えなかった。何処かで見たことあるようなぁ……でも誰だっけ?ん~……思い出せないな……

「あっ、すいません。注文良いですか?」

「あっ、はい!」

すると若い男のお客に呼ばれ行くと男は俺に話し掛けられる。

「あれ?もしかして大翔?」

ん?なんで俺の名前を?いや待てよあの顔は見たことある。

「もしかして、祐司か?!」

そして、男は嬉しそうな顔で立ち上がり両肩を手で掴んだ。

「やっぱり大翔だ。俺の事を覚えてたんだ!」

「久しぶりだな祐司。もう高校卒業して以来か?」

「うん!そうだよ!大翔は元気してた?」

俺は祐司の無邪気な言葉に少し胸をチクリと痛むのが分かる。数ヶ月前までは元気にしてた……むしろ幸せの絶頂だったが……

「どうしたの?大翔。なんか悪い事を言った?」

「いや、元気にしてたぜ俺は。」

そうだ。祐司は昔から勘が鋭い奴だったからな。

「そうか、元気なら良いや。あっ、そーだメニュー頼まないと!…オススメとかないかな?」

「ん~。今日はオムライスかな?」

「んじゃオムライスをお願い。」

「おぉ、じゃあオムライスを1つお願いします!」

祐司は頼み俺はオムライスを書き込み厨房にいるオジサンとオバサンにオムライスを頼んだ。

するとオジサンはオムライスを作り始め、オバサンは俺に近付いてきた。

「ひろ君。あのお客さんって、ひろ君のお友達?」

「えぇ、はい。高校の時の友達です。」

「あら~、カッコイイお友達だねぇ。」

「まぁ、はい。」

゙カッコイイ゙を強調して言うオバサンに少し苦笑いをして返すしかなかった。まぁ、実際カッコイイから仕方ないんだけどさ。昔からモテてたからなぁ……

あの顔に無邪気な性格だから、ほぼ毎日ラブレターが下駄箱の中に入ってたな。当の本人である祐司は恋愛に興味が無いためか少し苦笑いしつつ困ってた様だけどな。

おまけに祐司は女子だけでもなく男子にもあの無邪気な性格で人気があったから誰も嫌いになる奴はいない程の人気者。

え?俺か?俺は全くモテた事がない!


「オムライスお願い。」

「はーい。」

オムライスが出来たので俺は厨房から祐司の元へオムライスを運ぶ。

「お待たせしました。オムライスです。」

「おぉ~凄く美味しそう!頂きます!」

祐司はスプーンを掴み一口食べ始めた。
オムライスを口に運び祐司は美味しそうに食べる。

「このオムライス凄く美味しい!フワフワの半熟の卵にデミグラスソースが掛かってライスも程よくケチャップの味と混ざって絶妙な味!こんな所に美味しいレストランがあるなんて知らなかったよ!」

「おぉ~気に入ってくれたか?」

「勿論だよ!俺この店の常連さんになろう!」

祐司は相当気に入ってくれてオジサンもオバサンも嬉しそうだな。

祐司はその後も美味しそうに食べてオムライスを完食した。

「いや~美味しかった!」

「そうか。祐司?そういや今は何やってんだ?」

「ん?大翔忘れたの?俺、お巡りさんだよ。」

すかっり忘れてたぜ。

「あぁ~、そういや、そうだったな……」

「って言うより警視庁の生活安全部の刑事かな。少年犯罪に麻薬の取締り、などが仕事かな。まぁほとんどは少年犯罪の方かな?俺は。」

「少年犯罪は結構見てる方は辛いだろ?」

「まぁね。まだ夢も希望もある少年、少女が犯罪に手を染める事が見てられなくてね……」

「……」

「更に親や教師、いや大人達に見離されて犯罪を染める子供達が殆んどだね。」

「そうか、それで自暴自棄にか……」

「中には犯罪に巻き込まれる子供もいて死んじゃったり、心に大きな傷も抱えたり……今日もまだ16歳の女の子がドラッグに手を出してね……」

「……」

「幸いまだ所持で使う所だったけど、ドラッグは一回でも使うと後には戻れなくなるからね……」

祐司は今にも泣きそうな雰囲気で少し辛そうに話す。

でも、さっきまで辛そうにしてた祐司はふと時計を見た。

「あっ、もう明日も仕事だから帰るね!はい、お会計。」

そう言って祐司は会計を済ませて店の扉を開けて出ていった。


まだ夢も希望にも溢れてる子供達。その子供達が世間の大人達によって見離されて犯罪に走る。

そして、自暴自棄になり犯罪に手を染め、挙げ句の果てには自分自身も犯罪に巻き込まれる。

「なんだか祐司の奴、辛そうだったな。」

そうポツリと独り言を呟き店の片付けをしていると頭に耳鳴りの様な音が響いてくる。

こんな時にべリアルか。でも、まだオジサンとオバサンも店の片付けをしているし、どうやって誤魔化すか?そうだ!この手があったか!

「すいません。オジサン、オバサン!」

「どうしたんだね大翔君?」

「どうしたのぉ?ひろ君?」

「祐司の奴、店に忘れ物したみたいなんで今からバイクで追いかけて届けに行きますね。」

「あら~そう。わかったわぁ。」

「行ってらっしゃい大翔君。」

オジサンとオバサンの了解が得たので急いでエプロンを取り投げ捨てる様に椅子に置いて部屋にあるダビデとバイクの鍵を取りに2階に行く。

部屋のドアを開けてダビデは俺に叫ぶ様に言った。

「マスター!べリアルです!急いで!」

「わかってる!」

俺は急いでダビデとファウストグローブを持ち出し下へ駆け降りる。バイクに跨がりエンジンを掛けた後にダビデが話し始める。

「道案は私がします。」

「おぅ!頼んだ。」

俺はアクセルを回し、走り出しす。バイクを走らせながら、ふと疑問に思った。
べリアルが出てくるのも久しぶりだ。ここ数日間は全く出現しなかった。

べリアルが出る場合は俺かダビデにべリアル出現の合図があるはずだ。ここ数日間、出てこなかった理由は?

べリアル側の何かの罠か?それとも何かをする準備だったのか?

「マスター。べリアルです。」

俺は一端思考を中止させてバイクから降りる。

「初メマシテ仮面ノ戦士。私ハ魔族ノ゙ヘイムダル゙ト言イマス。」

礼儀正しく深々と頭を下げるヘイムダルというべリアル。

ゴツゴツの筋肉隆起の上に金ピカの鎧を身に纏う騎士のべリアルの様だ。

「サァ、仮面ノ戦士。私ト戦イ、ソノ命ヲ貰イマス!」

「戦ってはやるが。命は差し出す気はねぇよ。」

「ナラ、チカラヅクデ!」

「やってみな!」

ファウストグローブを嵌めて両手を腹部に当てるように構え、ファウストバックルを出現させて、ファウストフォンを開き、CLEARボタンを押し、さらENTERボタンを押す。

【Standby OK Master】

ダビデの機械音が鳴る。

すると剣を抜いたヘイムダルは俺に襲い掛かろうとしたが、難なく避けた後。

「変身!」

掛け声と同時にファウストフォンをファウストバックルに入れてる。

【Wake Up Change】

ダビデの機械音と同時にファウストに変身。


「さぁ、裁きの時間だ。」

両手の掌を合わせ地面に両手を着きしゃがみながら、地面を着き、何かを出す様なイメージで手を挙げると地面から銀色の槍を出す。

俺ははヘイムダルに向けて槍を振り回し、同時にヘイムダルも剣を捌いき、お互いに武器を交差させて武器同士が、ぶつかり合い火花を散らす。

ヘイムダルの攻撃を避けてボディーに突き刺そうとしたが、あの鎧で、さらに筋肉の固さの上、全く刺さらない。むしろ固すぎるため俺の手がジーン、ジーン痺れた。

ヘイムダルは一瞬の隙をついて剣を上から降り下ろし俺は槍でガードしたが、槍はガードしきれず見事に真っ二つに割れ、俺にも肩からボディーへとダメージを喰らい後ろの壁に背中がぶつかる。

「くっ……」

「フゥ……」

ヘイムダルは余裕な感じで俺に近付いてくる。

「モォ、終ワリカ?」

「ほざけ!」

俺は立ち上がり両手の掌を合わせて左の手首の甲を添える。

【Left Arm Blade】

ダビデの機械音と共に左の手首の甲から剣の刃の部分が出て、すぐさまヘイムダルに駆け寄り切りつけようとしたが、ヘイムダルは剣でガードした。

俺はヘイムダルの態勢を崩そうしたが、奴の馬鹿力に完璧に圧されてる。そのまま、壁に追い詰められ、少しでも力を抜けば、自分の刃が顔に近付く程の距離になる。

馬鹿力をどうにかしないと確実に殺られるぞ。どうにか距離を置いて戦いけど、後ろには壁だ。少しでも気が緩めば確実に殺られるのは目に見えてる。

どうする?武器を代えるのも一端、距離を置いて両手を合わせないとだし考えている内に刃が俺の顔まで数センチまで迫ったきやがった。

畜生!どうすれば……?


【Gun Ready】

何か機械音が聞こえ、銃弾の音が5発ほど聞こえ、その瞬間にヘイムダルは、うつ伏せに倒れ込んだのが分かる。その瞬間に俺は銃を撃った正体が見える。

ソイツは赤とオレンジの中間の色を基本として、目から鼻下にあたる部分は菱形で緑色をしている。ソイツの右手に持っている銃の銃口からは硝煙が出ている。


しばらくするとヘイムダルが起き上がり怒り激しく言う。

「貴様カ!私ノ邪魔ヲシタノハ?!マァ、良イ!貴様カラ消シテカラ仮面ノ戦士ヲ倒ス!サァ名乗レ!」


ソイツは静かにこう言う。

「断罪の使徒……アパスル。」

「行クゾ!アパスル!」

ヘイムダルは剣を構えアパスルに向かって走る。
アパスルは銃のグリップのボタンを押し始めた。

【304 Sword Ready】

304とボタンを押し、機械音が鳴った後、銃身を逆手に持ち、銃口から細長い剣が出てくる。アパスルは剣を逆手に持った状態でヘイムダルを迎え撃つ。

お互いの剣が交わった瞬間にヘイムダルの剣が、まるで溶岩にでも入れた様に溶かされた。

「ナニ!」

「はあぁ!」

アパスルは、そのままヘイムダルに切りつけ、ヘイムダルの鎧は溶かされ、アパスルが切りつけた痕が、くっきりと残っていた。

「グッ……ナンダ!コノ熱サ!」

ヘイムダルは片膝を着き苦虫を噛み潰した様に言う。俺も何が何だか解らない。いきなり出てきてヘイムダルというべリアルと戦う。今はっきり言える事は俺と同じべリアルを倒すのが目的だが、そのアパスルという奴が味方なのか敵なのか解らない。

もしアパスルがべリアルを倒すのが目的だとしても、考え方が俺とは全く逆かもしれないから、同じ味方とは限らない。


「行くぞ……」

【242 Reject Ready】

アパスルは再びグリップのボタンを242と押す。すると剣は銃口に収まり、アパスルは銃をベルトの右脇のポケットにしまう。

銃をしまった瞬間に右足の膝下から炎を纏い、ヘイムダルに蹴り掛かる。

前蹴り、下段蹴り、回し蹴りと連続で喰らわす。

「ウゥ……グッ……」

ヘイムダルは熱さと痛さを同時に喰らいよろめく。

「止めだ。」

アパスルは、もう一度、銃を取り出し、グリップのCLEARボタンを押す。

【Reject Energy Charge】

機械音が鳴りCLEARボタンを押したと同時にベルトから右足に雷が纏い始め雷が纏ったと同時にアパスルは銃を再びしまい跳躍する。

【Heat Break】

機械音と同時にアパスルの必殺技ヒート・ブレイクをヘイムダルは喰らい、爆発した。俺が苦戦していたヘイムダルというべリアルをあっさり倒したアパスル。

いったい何者で誰なんだ?そして、ゆっくりとアパスルが俺に近付いてくる。もしかすると襲われるかもしれない。

俺は左手首の甲にある刃を構える。

「そんな警戒しなくて良いよ。」

アパスルは銃身とグリップを外し、変身を解き続けると見た事ある顔が現れる。

「ねぇ。大翔。」

それは紛れもない。さっき数分前まで俺の店にいた男。俺の高校時代の友達でもある藤田祐司だ。俺もアパスルの正体が祐司だとわかったので変身を解く。

「なんで祐司が?」

「まぁ、色々と事情があってね。その前に、この子を紹介しないとね。」

すると祐司が持っている携帯電話に手足が生えて話し始める。

「俺はぁ、ご主人の付き人のぉマーレって言うもんでぇ!」

マーレという祐司の付き人は江戸っ子の、べらぼう口調で話始めた。

「宜しくな。マーレ。」

「おうよ!」

すると、ダビデもひょっこり出てきて祐司に自己紹介。

「初めまして、藤田祐司様。マスターの従者をしています。ダビデと言います。」

マーレとは対象的に丁寧な言葉使いで挨拶する。

「相変わらず、堅苦しいぃ挨拶だたなぁ!てめぇは!」

「相変わらず、貴方は品の無い言葉使いですね。」


どうやら二人共、知り合いの様だ。

「んだとぉ!てめぇは!喧嘩売ってんのかぁ?!」

「その喧嘩っぱやい性格は治っていないようですね」

「やろうってのか?!」

「良いですよ。その代わり高価買い取りで返品不可ですよ。」


どうやらダビデとマーレは馬が合わない上に犬猿の仲の様だ。

さすがに俺も祐司も二人の間に入って、取り敢えず、その場は収まったが、2人共、納得がいかずに少し機嫌が悪い様子。

そんな事よりも俺は祐司から聞きたい事が結構あるので質問をする。

「祐司。何故お前がこの力を?」

祐司は少し俯いて答えた。

「話が長くなるけど大丈夫?」

俺は黙って頷いて祐司は話始めた。

まず、俺は警視庁の生活安全部の刑事、主に少年犯罪に麻薬の取締りって言うのは表向きの配属場所。

本当の配属場所は警視庁第零課公安なんだ。

第零課公安は警視庁の中でも極一部の幹部しか認識されてない課で裏世界の取り締まりに、決して表沙汰にならない事件を請け負う課なんだ。

俺はある日、警視総監から直々の命令である事件を調べていた。人が無惨にも認識が解らないってくらい殺られた死体についてね。

顔は人とは思えない形、そして、腕や足は胴体から引き剥がされた様に取れて、胴体には噛み千切られていた。

明らかに人間がやったとは思えない反抗だったが、上司の見解は精神異常者による快楽殺人としてたけど、俺には人間が行った殺人だとは思えなかった。

むしろ人間ではない何かの゙化け物゙が行ったとしか思えなかった。でも、俺は立場上、第零課公安部の中でも、一番年下で下端だから、そんな事を言った所で上司や先輩に笑い者にされるだけ……

だって、この世の中にお化けやら、宇宙人やら、怪物がいるなんて見た事がないから信じる人がいないか!仕方無く俺は上司の言ゔ精神異常者による快楽殺人゙という事で自分を納得させる事で仕事に全うした。


第零課公安部は当初は事件の現場にある証拠が見付からず犠牲者を出し続けた。だけど、度重なる犠牲者の死体現場の周辺が、ほぼ同じ距離で、殺害する日にち、時間帯と犯人のパターンを見つけ、ある場所に目星をつけた。

そして、犯人が出てくるであろう場所に俺と先輩に上司の三人で拳銃を装備して現場に赴いた。だけど俺達が見た物は予想を反するものだった……

いや、むしろ俺だけの勘は運悪く当たったのかな?その姿は人間じゃない…怪物だ。怪物が楽しそうに人を何回も何回も刺してそりゃ生々しく刺さる音が聞こえて人が死んだかと思えば人を喰いはじめた。

肉のちぎれる音。
骨が噛み砕かれる音。
地面には大量の血。
鼻を突き刺す様な生臭い鉄の匂い。

俺達が見ているのを気付くと怪物がゆっくり口元からニヤケ出した。そして、怪物はゆっくりと少しずつ俺達に近付いてきた。


まるでその目は新しい玩具を見付けた無邪気な子供の様な目で見てくる。


俺達はすぐに怪物に拳銃で発砲した。
だけど何発も銃弾を撃ち込んでも、怪物は無傷で怯みもしない。俺は手持ちのナイフで突き刺そうと怪物に駆け込んだけど、すぐに振り払われたよ。

あの怪物は俺らからすると虫を振り払うくらいの力だったかもしれないけど、そんなの比じゃない、力で振り払われたよ。

俺は後頭部を壁にぶつけたせいか一回、気を失ってね。

あれから、どれくらいの時間が経ったか解らないけど目を覚ましたんだ。でも、俺が見たのは先輩や上司の無惨の死体。

先輩は地べたが血の海になって、背骨が見えるくらい引き裂かれて、脳みそも半分くらい見えて片方の目玉が抉られてる。

上司はまだ息があるのに何回も何回も胴体を刺されて、右手、右足、左手、左足と順番に刺して、あの時の上司の苦しみ叫ぶ声が忘れられないよ。


俺は何が何だか解らずにパニックって泣き叫んだよ。そしたら、怪物が俺の声に気付いて近付いてきたんだ。

ゆっくり、ゆっくり、まるで俺への死のカウントダウンの様に俺は立ち上がるのがやっとで怪物に抗う術も逃げる事も出来ないくらい身体中が痛くてさ。

そして、怪物が俺の目の前まで来て長い爪を振り抜いた瞬間に死ぬ事を覚悟したよ。

あぁ……俺、死ぬんだなって思って目を閉じると中々、身体に痛みが襲ってこなかったんだ……

目を開けてみると俺の目の前に白い光があったんだ。

その光は手で目を覆い隠したい程に眩しい光で怪物はその光を見て苦しんでいた。すると光の中からベルト、携帯電話、銃身みたいな物が俺の目の前に落ちてきた。

『ベルトを腰に巻いて、携帯電話を180度に開いてと銃身を差し込め、そして、ベルトの右脇に入れろ。そうすれば力を与える。』

光が俺に話掛けた。普通の人間なら信じないかもしれない。だけど何故かその時は光が言っている事が信じられた。やっぱり自分が生きるか、死ぬかの瀬戸際になると何でも信じられるのかな?

すると光はスッと消え、やっぱり自分が生きるか、死ぬかの瀬戸際になると何でも信じられるのかな?

俺は言われた通り、ベルトを腰に巻いて、そして、携帯電話を180度に開き織り込んでCLEARボタンと、ENTERボタンを、押す。

【Are You Ready? Master】

携帯電話から機械音が聞こえ更に銃身を差し込んで、最後にベルトの右脇に入れる。

【Wake Up Change】

すると、赤とオレンジの中間の色を基本として、目から鼻下にあたる部分は菱形で緑色をした奴に変身した。

最初はこの姿にビックリしたよ。まるで怪物と戦う戦士みたいでさ。すると、さっきまで激痛だった痛みが嘘の様に消えて、逆にどんどん力が、みなぎってきたよ。

俺は怪物が立ち上がったのを見計らって飛び蹴りを入れた時はビックリだよ拳銃でもビクともしなかった怪物がダメージを受けてる姿を見て、また更にビックリしたよ。


倒れ込んだ怪物に馬乗りに乗って、ひたすら殴ったよ。許せなかったんだ。
先輩や上司をこんなにして惨殺した、あの怪物を殺そうと思ったんだ。

殴って。
殴って。

怪物が悲鳴をあげようと、もがき苦しんでいようと先輩や上司はもっと痛かったはずだ!もっと苦しんで悶えていたはずだ!

そんな怪物が許せない!
殴って……
殴って……
ひたすら殴って……


先輩には、結婚まで約束した彼女がいて来月には挙式だったのに……上司には愛する奥さんがいて、大事な一人娘もいて……
明日は娘さんの誕生日だから娘さんの欲しがってた玩具を買って、喜ぶ顔が見たいって言ってたに……

コイツは……
コイツは!

周りの人からも大事な人を奪うのか?!愛する人、愛する家族をお前が勝手に奪い取るのか?!

そんな勝手が……そんな勝手が許される訳がないだろうがあぁ!!

もう、俺の手が痛かろうが何だろうが殴り続けたよ……

でも、怪物は俺を振りほどいて逃げて行った……

俺は変身が解けて再び気を失った……

俺が気が付くと病院の中だった。
そして、目の前には第零課公安部の部長。そして、部長は静かにこう言う。

「今回の件は非常に残念だ。俺は優秀な部下を二人も無くした。これは俺のミスだ。でも、お前だけでも助かったのは幸いだ。今回の件、お前が退院したら話してくれ……」

俺は静かに頷くと部長は退室した。

部長が去っていくと俺は病院の屋上へと上がった。
見上げてみると雲が一つもない綺麗な星空…

俺は静かに涙を流し声を殺して泣いていると後ろから話し掛けられた。

『あの怪物の正体を知りたいですか?』

俺は後ろを振り返るとローブ被った一人の男が立って、その男はヨハネと名乗った。俺はヨハネから色々と聞き出し怪物の存在は、神に反逆した堕天使べリアル。そして、俺が変身した戦士、炎から生み出され、炎を扱う断罪の使徒アパスル。

最後に、これから俺と戦う事になる魔物を葬り去る錬金術師ファウストの存在。全てを聞いた後、ヨハネは何処かに消えて、俺も部屋に戻った。


数日後、俺は退院し、警視総監と数人の幹部。そして、第零課公安部長を交えて今回の件は人ではなく怪物である事。怪物の正体は過去に神に反逆した堕天使べリアルである事。

べリアルの対抗手段はこのアパスルの力以外に対抗出来ない事。初めは、みんな半信半疑だったが、警視総監と部長は俺の言っている事を信じてもらい、俺は死んだ上司の後釜として第零課公安部の課長。

警視総監、直々の対べリアルとして俺を密偵とさせてくれた。


ついでに言うとべリアルが現れると頭に耳鳴りが響く様な音が聞こえるだけどさ、いつも駆け付けてみるとべリアルは跡形も無く倒されていた。

べリアルを倒したと思われるファウストを探そうにも、もう現場から去っている。だからヨハネにはファウストの事は詳しくは教えて貰わなかったから今日まで、ファウストの存在が半信半疑だったんだ。

まさか魔物を葬り去る錬金術師ファウストが大翔だと思わなかったし本当にビックリしたよ。

話終え祐司は顔を下に俯く。その目には憎しみに満ち溢れている。だがその瞳の奥には哀しみもある。

俺にも祐司の気持ちが痛いほど分かる。
目の前で人が無惨に殺され、自分は手も足も出ず、目の前の敵に抗う程の力も無い。ましてや自分だけが生き残るという辛さ……

祐司も俺と一緒で、ほとんど境遇が同じ。

理不尽にも目の前で殺され、残された奴の辛さを知っている人はそうはいない……

だから祐司にこう言うしかない。

「祐司。お前もべリアルに自分の周りにいる人が殺されたんだな。だから、俺と一緒にべリアルを1人残らず倒すぞ。」

「一緒に戦ってくれるの大翔?」

「当たり前だ。俺達はダチだろ?」

「そうだね。よろしく。」

お互いに握手を交わし、今日は、この辺で帰る事にする。

近い内にお互いにとっても復讐の元凶となったべリアルが出てくるとも知らずに……

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