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親子と
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「こ、これは凄いな……。これはギルドで買い取る。国が買い取ってくれるだろうからな」
ギルドに戻りダンジョンの魔石とケロべロスの遺体を持ってきてギルマスに見せたら口を大きく開けて固まってしまった。他の職員達も、それを見学しに来た冒険者たちも皆固まり言葉を失う。
「この魔物の素材は相当強力な武器になるぞ。どうする?全てギルドで買い取ろうか?」
「いや、牙は欲しいな。あと毛皮も防具になりそうだから人数分貰っていく。あとはそちらで買い取ってくれ」
イーサンの提案により一人一本の牙と斬った毛皮を貰いあとはギルドで買い取ってもらうことになった。その金額は白金貨100枚にもなった。白金貨は金貨500枚分、金貨一枚で4人家族が半年は暮らせるのでつまり大金という事だ。一人白金貨100枚と素材を受け取り書類にサインを受け取り正式にクエストクリアとなった。
因みに俺はランクがCに上がった。本来なら試験があるがこれほどの大物を仕留め、Aランクの「血の誓い」の後押しもあり試験はパスとなった。10歳でCランクに上がるのは王都のギルマス以来の快挙らしい。
「はぁ!?「血の誓い」のパーティーへの誘いを断った!?」
ギルマスの部屋で報告している最中、イーサンたちが俺を「血の誓い」の誘ったが俺が断った事を教えるとギルマスは驚き頭を抱える。しかしいいリアクションするなこのおっさんは。
Aランクの冒険者は冒険者たちの憧れであり力の象徴だ。それを断るのは非常識らしい。俺には一人でまだやることがある。他人を巻き込むわけにはいかない。
すべての報告を終えた俺たちは酒場で打ち上げをして解散となった。
「本当に一人で行くのか?最後にもう一度。俺たち「血の誓い」に入らないか?」
「ごめん。俺は誰とも組む気はないんだ」
「そう、残念。あーもっとチャールズと一緒にいたかったわ。こんなにかわいいのに」
「何かあったらいつでも呼べよ。お前は俺たちの命の恩人だ。いつでも駆けつける」
「ん。寂しくなる。またね」
ギルドからの依頼が鬱陶し、いや沢山きては旅に出れないので打ち上げが終わり俺はそのまま旅に出ることにした。彼らとの別れは辛いが俺にはまだやることがある。まずは約束していた南東にある「クロス町」に向かうことにする。
街を出て数時間もするとなんだか一人でいるのは久々な感覚がして寂しくなる。だが今回のクエストで死を目の前にして気づいた。やはり俺は、俺には「アニ」の街の悲劇を解決する義務がある。じゃないと俺は前には進めない気がするからだ。
季節はすっかり春になり厚手のローブだと汗ばんできたので薄手のローブに着替えて進む。誰もいない草原をひたすら南に進む。
この頃になって野宿も手慣れたものになった。土魔法で小さな小屋を作りベッドを魔法の袋から取り出して完成だ。料理も一年間作り続けたおかげで様々なものをつくれるようになった。お金もたまったので食材はたくさん買い込んである。米が恋しくなるがこの国では中々米が手に入らない。肉に齧り付きながら進路を確認する。
数日歩き続け近くに馬車が通るがなんだか様子がおかしい。馬車に数名の護衛らしき男たちがいるのだが、全員服に血がついていた。それだけなら魔物と戦っただけだと思うが馬車を操る従者にも血が付いていて不自然に感じる。俺はわざと草原から道に迷った少年のように坑道へとふらふら歩いていく。
「おい!あんなところにガキが一人で歩いているぞ!」
「あ?本当だ!しかも結構可愛い顔してんじゃねぇか!こりゃ帰りにいい土産が出来たな!」
この会話だけでこいつらの正体がわかる。こいつらは殺してもいい人種だ。
「おいおいお嬢ちゃん。こんなところで一人で危ないぜ?俺たちと街へ……へ?」
俺は男に近づくと同時に伸ばしてきた手を斬り落とし一気に腹に剣を突き刺す。刺された男も他の男も何が起きたか分からない様子で唖然としている。その隙に剣を引き抜き男が倒れる前に馬車を取り囲んでいた男たちを斬り捨てていく。
「ま、待て待て!俺たちが誰だかわかってんのか!?」
「知らないね。死ね」
「俺たちは闇ギルド「ハント」のメンバーだガハッ!?」
「知らないよ。そんなの」
従者の男の首を斬り落とし男達の体が一斉に崩れ去っていく。
闇ギルドとは正式なギルドではなく裏の世界に存在する所謂犯罪組織だ。「ハント」とはその中の一つなのだろう。その言葉を頭の片隅に置いておきながら荷台を見る。そこには想像通り少女が一人に女性が一人、手足を縛られて倒れていた。
服が乱れていないことを見るとまだ乱暴はされていないようだ。少し安心して小さく息を吐いてから二人に怪我がないか見ながら揺さぶり起こす。
「ん、ここ、は?あ!モモ!?」
「ん、お母さん?」
「ん、あれ?」
どうやら果物のような名前の少女はこの女性の子供のようだ。二人は自分の置かれている状況を最初は理解できない様子だったが、周りの死体を見た後に剣に血がついた俺を見て状況を把握したようだ。
「こ、子供達だけは勘弁してください!私には何してもいいので!」
ちゃんと把握は出来ていないようだ。剣を魔法で洗い鞘に納めローブのフードをとってギルドカードを見せる。
「お、女の子!?ぼ、冒険者だったのね。という事は助けてくれらの?」
「お母さん。私達助かったの?」
「そうみたい。良かった。本当に良かった」
二人は抱き合いお互いの存在を確かめながらしっかり抱きしめあう。相当怖かったのだろう、二人は未だに震えが止まらない様子だ。
「あ、えと、ありがとう。貴方小さいのに強いのね。良かったら名前を教えてくれないかしら?」
「チャールズ、何があった?」
「そう、チャールズちゃんね。本当にありがとう」
「俺は男なんだが……」
「え!?ごめんなさい。わたしてっきり」
とりあえずお約束のやり取りをした後彼女たちの身に何が起きたかを聞く。彼女達はこれから向かうクロス町から少し西に行ったところにある「ボーズ街」で飲食店を営んでいるらしい。「ボーズ街」は漁業が盛んで飲食店も多くあり、観光地としても人気のある街だそうだ。だが最近街全体の景気が悪化。その原因がボーズ街の治安が悪化したためだという。
彼女たちは魚以外にも小麦や米を使った料理を造るそうだが最近は商人が街に来る回数が減り食材が足りなくなり、仕方なく自ら食材の買い出しに出かけてきたという事らしい。勿論護衛を数名雇って買い出しに来たわけだがその帰り道に男たちに襲われてしまったそうだ。
「護衛の方々は早々にやられてしまいました。護衛の中に「ハント」の仲間がいて不意を突かれたようで。そして私たちは彼らの「売り物」にされそうになったところをチャールズ君に助けられたのよ」
「チャールズ君。改めてお母さんをモモを助けてくれてありがとう。「ハント」は最近出来た奴隷商の仲間らしくて評判最悪なの。もし捕まってたらどうなっていたか……」
彼女達のような一般人にまで「ハント」という名前は広まっているほど有名らしい。「闇ギルド」は本来裏の人間しかその名前を知らないはずなのに。よほど派手に動いているらしい。
「「ハント」についてもう少し聞かせてくれる?」
行先を変更し彼女達を「ボーズ街」に送ってからクロス町に行くことにする。理由は簡単。彼女達が無料で沢山ご飯を作ってくれるというからだ。特にこの世界に来てから全く食べられてない米料理を振舞ってくれるらしい。流石に10年も米を食べないと元日本人としては中々辛いものがあった。
ハントについての情報はあまり多くはなかったが、ここ数年で出来た勢力で奴隷商と明らかに繋がっているらしい。というのも以前街でハントの悪口を言った有権者が次の日に奴隷商に「売り物」として並んだ時期があったそうだ。その為街ではハントに関わる事をいう人間はいなくなったそうだ。勿論騎士が「ハント」を捕まえるため捜査しているが今だにその首謀者は捕まっていないらしい。
「そんな噂が広まり、余計に街に商人が訪れる回数が減ってしまったんです。そして私達は自ら買い出しに行って……」
モモちゃんが馬車を操りそのお母さん(ミカンさんという名前らしい)が荷台で俺に話をしてくれた。話ながら震える彼女はまだ襲われたときの恐怖が残っているのだろう。
その後は特にトラブルもなく街にたどり着くことが出来た。街はかなりの大きさでこの辺りでは一番の大きさを誇るらしい。街は「ハント」の問題なんか知らないかのように賑わっていた。
「流石に毎日落ち込んでいてはご飯が食べていけませんから」
ミカンさんがそう教えてくれた。確かに街で問題があるからといって辛い顔しながら商売をしていてはお客さんも寄ってこないだろう。商売人は強いものだな。
「ここが私達のお店です」
「すぐに準備するからね!そこで座って待ってて!!」
店に辿りつき荷物を降ろした後、閉店中の客席に一人座りお礼の料理ができるのを待つ。店はかなりいい立地にあるようで、客席からは、見晴らしがよく街と海が一望できた。まるでイタリアの海岸の街のように建物は白く海は青く街は傾斜に沿って造られていた。
「お待たせ!この街の名物海鮮パエリアだよ!」
「おお、これは凄い」
思わず驚きの声が出てしまうほど料理はおいしそうで食欲をそそる香りがした。色鮮やかな魚介類にトマトやパプリカなど鮮やかな野菜が彩られ、その下には鉄のフライパンで焼いた香ばしい香りと魚介類に旨味がたっぷり詰まった米が輝いている。思わず我を忘れて最後の一粒まで一気に平らげる。
「ふぅ。ごちそうさまでした」
「あっはっは!!いいやべっぷりだね!お粗末様」
再び親子そろってお礼を言われた後店を出る。あと数日はこの街にいると約束して。お腹いっぱいになったし、海からの心地いい風に髪をなびかせ心地よくなった俺は今日は早めに宿をとり休もうと歩き出したが、怪しい視線を感じ路地に入り屋根に飛び乗ってから視線の感じた場所の上に飛ぶ。
「おい!どうなってやがる!なんであの親子が店にいるんだよ!商品になってる予定だろうが!」
「知らねぇよ!ったくあいつら何やってんだか。帰ってきたら全員殺してやる」
どうやら店を見ていた男たちの正体は「ハント」の仲間のようだ。俺は剣を抜き男達から詳しい情報を聞き出すつもりで飛び降りようとした時、男達の一人の胸に矢が刺さる。
「な!?」
もう一人の男がその矢に気づいた時にはすでにフードを被った奴に壁に押さえつけられ、喉元にナイフを突きつけられていた。
「ハントだな?」
「て、てめぇこんなことしてただで済むと、ぐぁ!?」
フードを被った奴は躊躇わずに男の腕にナイフを突き立てる。
「騒ぐな。お前たちのアジトを教えろ」
どうやらフードの奴も「ハント」のアジトを探している様だった。
ギルドに戻りダンジョンの魔石とケロべロスの遺体を持ってきてギルマスに見せたら口を大きく開けて固まってしまった。他の職員達も、それを見学しに来た冒険者たちも皆固まり言葉を失う。
「この魔物の素材は相当強力な武器になるぞ。どうする?全てギルドで買い取ろうか?」
「いや、牙は欲しいな。あと毛皮も防具になりそうだから人数分貰っていく。あとはそちらで買い取ってくれ」
イーサンの提案により一人一本の牙と斬った毛皮を貰いあとはギルドで買い取ってもらうことになった。その金額は白金貨100枚にもなった。白金貨は金貨500枚分、金貨一枚で4人家族が半年は暮らせるのでつまり大金という事だ。一人白金貨100枚と素材を受け取り書類にサインを受け取り正式にクエストクリアとなった。
因みに俺はランクがCに上がった。本来なら試験があるがこれほどの大物を仕留め、Aランクの「血の誓い」の後押しもあり試験はパスとなった。10歳でCランクに上がるのは王都のギルマス以来の快挙らしい。
「はぁ!?「血の誓い」のパーティーへの誘いを断った!?」
ギルマスの部屋で報告している最中、イーサンたちが俺を「血の誓い」の誘ったが俺が断った事を教えるとギルマスは驚き頭を抱える。しかしいいリアクションするなこのおっさんは。
Aランクの冒険者は冒険者たちの憧れであり力の象徴だ。それを断るのは非常識らしい。俺には一人でまだやることがある。他人を巻き込むわけにはいかない。
すべての報告を終えた俺たちは酒場で打ち上げをして解散となった。
「本当に一人で行くのか?最後にもう一度。俺たち「血の誓い」に入らないか?」
「ごめん。俺は誰とも組む気はないんだ」
「そう、残念。あーもっとチャールズと一緒にいたかったわ。こんなにかわいいのに」
「何かあったらいつでも呼べよ。お前は俺たちの命の恩人だ。いつでも駆けつける」
「ん。寂しくなる。またね」
ギルドからの依頼が鬱陶し、いや沢山きては旅に出れないので打ち上げが終わり俺はそのまま旅に出ることにした。彼らとの別れは辛いが俺にはまだやることがある。まずは約束していた南東にある「クロス町」に向かうことにする。
街を出て数時間もするとなんだか一人でいるのは久々な感覚がして寂しくなる。だが今回のクエストで死を目の前にして気づいた。やはり俺は、俺には「アニ」の街の悲劇を解決する義務がある。じゃないと俺は前には進めない気がするからだ。
季節はすっかり春になり厚手のローブだと汗ばんできたので薄手のローブに着替えて進む。誰もいない草原をひたすら南に進む。
この頃になって野宿も手慣れたものになった。土魔法で小さな小屋を作りベッドを魔法の袋から取り出して完成だ。料理も一年間作り続けたおかげで様々なものをつくれるようになった。お金もたまったので食材はたくさん買い込んである。米が恋しくなるがこの国では中々米が手に入らない。肉に齧り付きながら進路を確認する。
数日歩き続け近くに馬車が通るがなんだか様子がおかしい。馬車に数名の護衛らしき男たちがいるのだが、全員服に血がついていた。それだけなら魔物と戦っただけだと思うが馬車を操る従者にも血が付いていて不自然に感じる。俺はわざと草原から道に迷った少年のように坑道へとふらふら歩いていく。
「おい!あんなところにガキが一人で歩いているぞ!」
「あ?本当だ!しかも結構可愛い顔してんじゃねぇか!こりゃ帰りにいい土産が出来たな!」
この会話だけでこいつらの正体がわかる。こいつらは殺してもいい人種だ。
「おいおいお嬢ちゃん。こんなところで一人で危ないぜ?俺たちと街へ……へ?」
俺は男に近づくと同時に伸ばしてきた手を斬り落とし一気に腹に剣を突き刺す。刺された男も他の男も何が起きたか分からない様子で唖然としている。その隙に剣を引き抜き男が倒れる前に馬車を取り囲んでいた男たちを斬り捨てていく。
「ま、待て待て!俺たちが誰だかわかってんのか!?」
「知らないね。死ね」
「俺たちは闇ギルド「ハント」のメンバーだガハッ!?」
「知らないよ。そんなの」
従者の男の首を斬り落とし男達の体が一斉に崩れ去っていく。
闇ギルドとは正式なギルドではなく裏の世界に存在する所謂犯罪組織だ。「ハント」とはその中の一つなのだろう。その言葉を頭の片隅に置いておきながら荷台を見る。そこには想像通り少女が一人に女性が一人、手足を縛られて倒れていた。
服が乱れていないことを見るとまだ乱暴はされていないようだ。少し安心して小さく息を吐いてから二人に怪我がないか見ながら揺さぶり起こす。
「ん、ここ、は?あ!モモ!?」
「ん、お母さん?」
「ん、あれ?」
どうやら果物のような名前の少女はこの女性の子供のようだ。二人は自分の置かれている状況を最初は理解できない様子だったが、周りの死体を見た後に剣に血がついた俺を見て状況を把握したようだ。
「こ、子供達だけは勘弁してください!私には何してもいいので!」
ちゃんと把握は出来ていないようだ。剣を魔法で洗い鞘に納めローブのフードをとってギルドカードを見せる。
「お、女の子!?ぼ、冒険者だったのね。という事は助けてくれらの?」
「お母さん。私達助かったの?」
「そうみたい。良かった。本当に良かった」
二人は抱き合いお互いの存在を確かめながらしっかり抱きしめあう。相当怖かったのだろう、二人は未だに震えが止まらない様子だ。
「あ、えと、ありがとう。貴方小さいのに強いのね。良かったら名前を教えてくれないかしら?」
「チャールズ、何があった?」
「そう、チャールズちゃんね。本当にありがとう」
「俺は男なんだが……」
「え!?ごめんなさい。わたしてっきり」
とりあえずお約束のやり取りをした後彼女たちの身に何が起きたかを聞く。彼女達はこれから向かうクロス町から少し西に行ったところにある「ボーズ街」で飲食店を営んでいるらしい。「ボーズ街」は漁業が盛んで飲食店も多くあり、観光地としても人気のある街だそうだ。だが最近街全体の景気が悪化。その原因がボーズ街の治安が悪化したためだという。
彼女たちは魚以外にも小麦や米を使った料理を造るそうだが最近は商人が街に来る回数が減り食材が足りなくなり、仕方なく自ら食材の買い出しに出かけてきたという事らしい。勿論護衛を数名雇って買い出しに来たわけだがその帰り道に男たちに襲われてしまったそうだ。
「護衛の方々は早々にやられてしまいました。護衛の中に「ハント」の仲間がいて不意を突かれたようで。そして私たちは彼らの「売り物」にされそうになったところをチャールズ君に助けられたのよ」
「チャールズ君。改めてお母さんをモモを助けてくれてありがとう。「ハント」は最近出来た奴隷商の仲間らしくて評判最悪なの。もし捕まってたらどうなっていたか……」
彼女達のような一般人にまで「ハント」という名前は広まっているほど有名らしい。「闇ギルド」は本来裏の人間しかその名前を知らないはずなのに。よほど派手に動いているらしい。
「「ハント」についてもう少し聞かせてくれる?」
行先を変更し彼女達を「ボーズ街」に送ってからクロス町に行くことにする。理由は簡単。彼女達が無料で沢山ご飯を作ってくれるというからだ。特にこの世界に来てから全く食べられてない米料理を振舞ってくれるらしい。流石に10年も米を食べないと元日本人としては中々辛いものがあった。
ハントについての情報はあまり多くはなかったが、ここ数年で出来た勢力で奴隷商と明らかに繋がっているらしい。というのも以前街でハントの悪口を言った有権者が次の日に奴隷商に「売り物」として並んだ時期があったそうだ。その為街ではハントに関わる事をいう人間はいなくなったそうだ。勿論騎士が「ハント」を捕まえるため捜査しているが今だにその首謀者は捕まっていないらしい。
「そんな噂が広まり、余計に街に商人が訪れる回数が減ってしまったんです。そして私達は自ら買い出しに行って……」
モモちゃんが馬車を操りそのお母さん(ミカンさんという名前らしい)が荷台で俺に話をしてくれた。話ながら震える彼女はまだ襲われたときの恐怖が残っているのだろう。
その後は特にトラブルもなく街にたどり着くことが出来た。街はかなりの大きさでこの辺りでは一番の大きさを誇るらしい。街は「ハント」の問題なんか知らないかのように賑わっていた。
「流石に毎日落ち込んでいてはご飯が食べていけませんから」
ミカンさんがそう教えてくれた。確かに街で問題があるからといって辛い顔しながら商売をしていてはお客さんも寄ってこないだろう。商売人は強いものだな。
「ここが私達のお店です」
「すぐに準備するからね!そこで座って待ってて!!」
店に辿りつき荷物を降ろした後、閉店中の客席に一人座りお礼の料理ができるのを待つ。店はかなりいい立地にあるようで、客席からは、見晴らしがよく街と海が一望できた。まるでイタリアの海岸の街のように建物は白く海は青く街は傾斜に沿って造られていた。
「お待たせ!この街の名物海鮮パエリアだよ!」
「おお、これは凄い」
思わず驚きの声が出てしまうほど料理はおいしそうで食欲をそそる香りがした。色鮮やかな魚介類にトマトやパプリカなど鮮やかな野菜が彩られ、その下には鉄のフライパンで焼いた香ばしい香りと魚介類に旨味がたっぷり詰まった米が輝いている。思わず我を忘れて最後の一粒まで一気に平らげる。
「ふぅ。ごちそうさまでした」
「あっはっは!!いいやべっぷりだね!お粗末様」
再び親子そろってお礼を言われた後店を出る。あと数日はこの街にいると約束して。お腹いっぱいになったし、海からの心地いい風に髪をなびかせ心地よくなった俺は今日は早めに宿をとり休もうと歩き出したが、怪しい視線を感じ路地に入り屋根に飛び乗ってから視線の感じた場所の上に飛ぶ。
「おい!どうなってやがる!なんであの親子が店にいるんだよ!商品になってる予定だろうが!」
「知らねぇよ!ったくあいつら何やってんだか。帰ってきたら全員殺してやる」
どうやら店を見ていた男たちの正体は「ハント」の仲間のようだ。俺は剣を抜き男達から詳しい情報を聞き出すつもりで飛び降りようとした時、男達の一人の胸に矢が刺さる。
「な!?」
もう一人の男がその矢に気づいた時にはすでにフードを被った奴に壁に押さえつけられ、喉元にナイフを突きつけられていた。
「ハントだな?」
「て、てめぇこんなことしてただで済むと、ぐぁ!?」
フードを被った奴は躊躇わずに男の腕にナイフを突き立てる。
「騒ぐな。お前たちのアジトを教えろ」
どうやらフードの奴も「ハント」のアジトを探している様だった。
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