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第38話 飛んで火に入るダブステップ 3
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話が逸れて、歩みは進み、辿り着くは校門前。
げ、と言葉を漏らす愛依に何事かと華澄は顔を向ける。
華澄の視線を校門の方へと向けさせる愛依。
校門へ向かう生徒たちが何やら恐る恐る歩みを進める様子が見えて華澄は首をかしげる 。
「違う違う、あっちあっち」
愛依の注意に華澄はもう一度愛依の指先に視線を送り辿る。
辿った先に紺の背広姿の男と濃緑の背広姿の男が立っていた。
校門を潜る生徒たちを睨みつけている。
「私のこと、捜してるんだ・・・・・・」
「え、もしかして昨日文哉くんを追いかけてたヤクザですか?」
「そう、正確には私と文哉君を追いかけてた、ってとこかな。文哉君は私を助けてくれて巻き込まれた感じ」
「うーん、文哉くんの場合、巻き込まれたっていうか巻き込まれに行ったって感じじゃないですか?」
「まぁ、それはそうかも」
うんうん、と華澄は頷いてその場で屈伸運動を始める。
「え、カスミン、何してんの?」
「準備運動です」
「え、なんでこのタイミングで?」
「ちょっとお話聞いてきますね」
「いや、話聞くのに準備運動要らなくない?」
「もしもの備えですよ」
手足に身体の準備を整えた華澄は、よしっ、と一言言って千代田組の二人に向かっていった。
テクテクテクテク。
「もしもしどーも、ヤクザさん?」
ビシッと右手を大きく天へ伸ばし、まるで横断歩道を通る合図。
何故かキリッとした表情を浮かべる華澄。
「は? なんだ、中学生か、オジョーチャン? 俺らは高校生のネェチャン捜してて忙しいんだよ、どっか行きな!」
濃緑の背広姿の男、平家がその大きな手を振りあっちいけとジェスチャーをする。
左頬が赤く腫れていて、華澄はそれを見て何やら誇らしくなった。
文哉に蹴っ飛ばされたのだろう。
「失礼な、私も立派な女子高生です。あ、立派かどうかはちょっと怪しいか。せ、正式な女子高生です」
「正式じゃない女子高生ってなんだよ・・・・・・っているか、正式じゃない女子高生、世の中に一杯」
「あ、エロい目で見るのは止めてくださいよ。条例違反です」
「目だけで条例違反なら、今頃ムショが溢れかえってるよ。ってか、エロい目で見るか、俺はロリコンじゃねぇ!」
平家のツッコミは徹夜の疲れから声量の調整が効いておらず、まるで恫喝のように校門前で響く。
周りの生徒たちが身体をビクつかせながら、平家と華澄のやり取りを見ていた。
「オイ、平家、何やってんだ? 警察に通報されるぞ。さっき教師に睨みきかせて引っ込ませたのが無駄になるじゃねぇか」
紺の背広姿の男、馬宮が平家の肩を小突く。
数分前に二人を校門前から退かせようと校舎からひょろ長い身体をした教師がやってきたが、睨みをきかせたら帰っていった。
何々先生はまだ来てないのかー、と捨てゼリフを言う後ろ姿はどこか兄貴分に助けを呼びにいくみたいで、どちらがチンピラかわからなくなった。
もちろん、学校前で女子高生を探す自分達が一番チンケだと自覚はしていた。
「う、うるせー、馬宮。テメェもさっさとあの女、捜せよ」
「あの女、って私のこと?」
華澄の後ろから愛依が顔を出す。
自分より小柄な華澄の肩を持って盾のようにしながら、少し屈んでひょっこりと。
憧れのハイキック王子の影響かふいに無謀な行動に出る華澄を抑えに、千代田組の二人に見つかることを覚悟の上でついてきていた。
華澄は愛依を守るように腰に手を当て仁王立ちに構え直した。
妙に胸を張り大きく見せようとする様が逆に小柄な身体を強調していた。
ふん、と力強く鼻息を一吹き。
「あ、ネェチャン、やっぱり登校してきたか」
「私をまだ探してるってことは、八重はまだ見つかってないってことですよね?」
「ああ、まったく千代田組総出で探してるがお嬢の目撃情報はこれっぽっちもねぇ」
平家は人差し指と親指を紙一枚入る程度に開けて見せる。
自分でやってて情けなくなるぜ、とその間の薄さに嘆く。
夜通しの捜索で得られたのは二つ三つドラッグの売人を懲らしめたぐらいだった。
ついでのお掃除にはなったがそのぐらいの掃除なら普段からやっているし、それぐらいでこの街から撤退するほど外のやつらは物分かりがいいやつらではない。
この街は千代田組の縄張りだ、と喧伝しても若いヤツらには届かないだろう。
今も組長の娘を拐われているという、絶賛イメージダウン進行中だ。
秘密裏に探せれば良かったが、総出の捜索というおおっぴらな事態にすぐになってしまい情報の早い裏社会ではすぐにバレてしまった。
そう、バレてしまったのだ。
「なぁ、ネェチャン、改めて聞くが前に買ったクスリの売人について教えてくれねぇか?」
「あ、いや、だから、私はあの時きりだから、知らないんですよ、本当に」
「頼む、ちょっとの情報でもいいんだ。クスリの売人なんて今やこの街じゃゴキブリ並みに増えてきてやがって、潰しても出てくるもぐら叩きだ。特定できる情報が少しでもありゃ助かるんだ」
平家と馬宮の二人で二つ三つ。
千代田組総出でその何倍も。
叩いても出てくるチンピラ集団。
「お嬢の誘拐がバレちまった今、急がねぇと不味い。ヤツらは頭がイカれてるからな、ヤクザを脅すのも難なくやりやがる。組長脅して、この街のドラッグ市場独り占めを企むなんて無茶なことやりかねないんだよ。そう考えると、お嬢争奪戦が始まっちまってるといっても過言じゃねぇ」
誰かが口火を切ったなら乗ってやろうぜ、このビッグウェーブに。
平家が夜中に殴り倒した若いチャラ男の捨て台詞だった。
げ、と言葉を漏らす愛依に何事かと華澄は顔を向ける。
華澄の視線を校門の方へと向けさせる愛依。
校門へ向かう生徒たちが何やら恐る恐る歩みを進める様子が見えて華澄は首をかしげる 。
「違う違う、あっちあっち」
愛依の注意に華澄はもう一度愛依の指先に視線を送り辿る。
辿った先に紺の背広姿の男と濃緑の背広姿の男が立っていた。
校門を潜る生徒たちを睨みつけている。
「私のこと、捜してるんだ・・・・・・」
「え、もしかして昨日文哉くんを追いかけてたヤクザですか?」
「そう、正確には私と文哉君を追いかけてた、ってとこかな。文哉君は私を助けてくれて巻き込まれた感じ」
「うーん、文哉くんの場合、巻き込まれたっていうか巻き込まれに行ったって感じじゃないですか?」
「まぁ、それはそうかも」
うんうん、と華澄は頷いてその場で屈伸運動を始める。
「え、カスミン、何してんの?」
「準備運動です」
「え、なんでこのタイミングで?」
「ちょっとお話聞いてきますね」
「いや、話聞くのに準備運動要らなくない?」
「もしもの備えですよ」
手足に身体の準備を整えた華澄は、よしっ、と一言言って千代田組の二人に向かっていった。
テクテクテクテク。
「もしもしどーも、ヤクザさん?」
ビシッと右手を大きく天へ伸ばし、まるで横断歩道を通る合図。
何故かキリッとした表情を浮かべる華澄。
「は? なんだ、中学生か、オジョーチャン? 俺らは高校生のネェチャン捜してて忙しいんだよ、どっか行きな!」
濃緑の背広姿の男、平家がその大きな手を振りあっちいけとジェスチャーをする。
左頬が赤く腫れていて、華澄はそれを見て何やら誇らしくなった。
文哉に蹴っ飛ばされたのだろう。
「失礼な、私も立派な女子高生です。あ、立派かどうかはちょっと怪しいか。せ、正式な女子高生です」
「正式じゃない女子高生ってなんだよ・・・・・・っているか、正式じゃない女子高生、世の中に一杯」
「あ、エロい目で見るのは止めてくださいよ。条例違反です」
「目だけで条例違反なら、今頃ムショが溢れかえってるよ。ってか、エロい目で見るか、俺はロリコンじゃねぇ!」
平家のツッコミは徹夜の疲れから声量の調整が効いておらず、まるで恫喝のように校門前で響く。
周りの生徒たちが身体をビクつかせながら、平家と華澄のやり取りを見ていた。
「オイ、平家、何やってんだ? 警察に通報されるぞ。さっき教師に睨みきかせて引っ込ませたのが無駄になるじゃねぇか」
紺の背広姿の男、馬宮が平家の肩を小突く。
数分前に二人を校門前から退かせようと校舎からひょろ長い身体をした教師がやってきたが、睨みをきかせたら帰っていった。
何々先生はまだ来てないのかー、と捨てゼリフを言う後ろ姿はどこか兄貴分に助けを呼びにいくみたいで、どちらがチンピラかわからなくなった。
もちろん、学校前で女子高生を探す自分達が一番チンケだと自覚はしていた。
「う、うるせー、馬宮。テメェもさっさとあの女、捜せよ」
「あの女、って私のこと?」
華澄の後ろから愛依が顔を出す。
自分より小柄な華澄の肩を持って盾のようにしながら、少し屈んでひょっこりと。
憧れのハイキック王子の影響かふいに無謀な行動に出る華澄を抑えに、千代田組の二人に見つかることを覚悟の上でついてきていた。
華澄は愛依を守るように腰に手を当て仁王立ちに構え直した。
妙に胸を張り大きく見せようとする様が逆に小柄な身体を強調していた。
ふん、と力強く鼻息を一吹き。
「あ、ネェチャン、やっぱり登校してきたか」
「私をまだ探してるってことは、八重はまだ見つかってないってことですよね?」
「ああ、まったく千代田組総出で探してるがお嬢の目撃情報はこれっぽっちもねぇ」
平家は人差し指と親指を紙一枚入る程度に開けて見せる。
自分でやってて情けなくなるぜ、とその間の薄さに嘆く。
夜通しの捜索で得られたのは二つ三つドラッグの売人を懲らしめたぐらいだった。
ついでのお掃除にはなったがそのぐらいの掃除なら普段からやっているし、それぐらいでこの街から撤退するほど外のやつらは物分かりがいいやつらではない。
この街は千代田組の縄張りだ、と喧伝しても若いヤツらには届かないだろう。
今も組長の娘を拐われているという、絶賛イメージダウン進行中だ。
秘密裏に探せれば良かったが、総出の捜索というおおっぴらな事態にすぐになってしまい情報の早い裏社会ではすぐにバレてしまった。
そう、バレてしまったのだ。
「なぁ、ネェチャン、改めて聞くが前に買ったクスリの売人について教えてくれねぇか?」
「あ、いや、だから、私はあの時きりだから、知らないんですよ、本当に」
「頼む、ちょっとの情報でもいいんだ。クスリの売人なんて今やこの街じゃゴキブリ並みに増えてきてやがって、潰しても出てくるもぐら叩きだ。特定できる情報が少しでもありゃ助かるんだ」
平家と馬宮の二人で二つ三つ。
千代田組総出でその何倍も。
叩いても出てくるチンピラ集団。
「お嬢の誘拐がバレちまった今、急がねぇと不味い。ヤツらは頭がイカれてるからな、ヤクザを脅すのも難なくやりやがる。組長脅して、この街のドラッグ市場独り占めを企むなんて無茶なことやりかねないんだよ。そう考えると、お嬢争奪戦が始まっちまってるといっても過言じゃねぇ」
誰かが口火を切ったなら乗ってやろうぜ、このビッグウェーブに。
平家が夜中に殴り倒した若いチャラ男の捨て台詞だった。
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