お腐れさまの幸せ

鳥類

文字の大きさ
上 下
13 / 17

気づいてしまった痛み

しおりを挟む
「ひぃぃぃぃっ! レナっ! レナ助けてっ!!」
「ちょっとくらいいいじゃない! 兄弟でしょ?! 原作みたいに仲悪いわけじゃないんなら簡単でしょ?!」

 逃げる王子に追う令嬢。
 どうやらコレット嬢は推し以外になら近づける模様です。

「何でいきなり兄上と絡まなきゃならないんだよ! 俺は腐ってるけどゲイじゃない!!」
「そんなことは私の前では瑣末事よ!! 萌えのためなら犠牲を払うことも辞さない!!」
「いやいやお前は全然被害ないじゃん! むしろ喜ぶだけじゃん! 俺大打撃じゃん!!」
「つべこべ言わずに協力しなさいよっ! 私の元々の一推しCPはアルセドなんだからーー!!」

 室内はカオス空間と化していた。
 男爵令嬢に追い回される第二王子。うん、すごいカオス。
 レナリアは被害が及ばないところで二人の追いかけっこを眺めていた。

「あー、三次元にしたら萌えないかと思ったけど、実際目にしたらイケるわね。二次元のみでは味わえなかった萌えを感じられそうな気がする! さぁ! セドさまのところへGOよ!!」
「嫌だよ! 俺は俺に被害が及ばない範囲でBL楽しみたいんだよ!」

 制服とはいえ、スカートというハンデをものともせずアルベールを捕獲したコレットが攻めキャラとして一番推しているアルベールの三次元姿を堪能している。
 余りの勢いに涙目になっているアルベールは、相手が女性であるせいか強く出られないらしくされるがまま。
 そんなアルベールを見て…レナリアの心臓がズキリと痛んだ。

「…何で?」

 ぽつりと落とされた呟きは、二人には届かない。
 アルベールと話すのは楽しい。腐った話ができる唯一の相手だったし、それは彼も同じだったはずだ。
 だからこそ、彼はレナリアを選んだ。気兼ねなく話せる相手として。萌えを共有できる相手として。趣味を理解しあえる相手として。

 そこに…萌え以外の温かな感情が無くとも、一緒に居られる相手だから

 ぎゅっ、と胸の上で拳を握って目を上げると、そこでは未だ二人がじゃれあっている。

(…そういえば…原作では…アルベール王子は、ヒロインに惹かれるんだっけ―――)

 更に痛みを増した胸を押さえて俯いたレナリアに気づかず、アルベールとコレットの攻防は続いている。
 BLだけじゃなくて弟攻めとかどんだけ性癖ぶち込んでんだよ! とか、うるさいわねでも俺さま攻めは正義だからそのまま強気の姿勢で押し倒していらっしゃい! など、内容としてはとんでもない物だが、今のレナリアの目にはきゃっきゃうふふしているようにしか映らない。

「大体! 俺の推しはエドモンだ! エドジェラを密かに楽しんでいたい!」
「まったえっらいマイナーなところへ行きおったわね! もっと王道いきなさい…よ…って…え、もしかして…」

 二人の楽しそう(?)な様子に耐えられなくなったレナリアはそっと部屋を後にしたため、直後にアルベールとコレットの悲鳴が上がった事には気づかなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私はオタクに囲まれて逃げられない!

椿蛍
恋愛
私、新織鈴子(にいおりすずこ)、大手製菓会社に勤める28歳OL身。 職場では美人で頼れる先輩なんて言われている。 それは仮の姿。 真の姿はBL作家の新藤鈴々(しんどうりり)! 私の推しは営業部部長の一野瀬貴仁(いちのせたかひと)さん。 海外支店帰りの社長のお気に入り。 若くして部長になったイケメンエリート男。 そして、もう一人。 営業部のエース葉山晴葵(はやまはるき)君。 私の心のツートップ。 彼らをモデルにBL小説を書く日々。 二人を陰から見守りながら、毎日楽しく過ごしている。 そんな私に一野瀬部長が『付き合わないか?』なんて言ってきた。 なぜ私? こんな私がハイスぺ部長となんか付き合えるわけない! けれど、一野瀬部長にもなにやら秘密があるらしく―――? 【初出2021.10.15 改稿2023.6.27】 ★気持ちは全年齢のつもり。念のためのR-15です。 ★今回、話の特性上、BL表現含みます。ご了承ください。BL表現に苦手な方はススッーとスクロールしてください。 ★また今作はラブコメに振り切っているので、お遊び要素が多いです。ご注意ください。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

失意の中、血塗れ国王に嫁ぎました!

恋愛
私の名前はカトリーナ・アルティス。伯爵家に生まれた私には、幼い頃からの婚約者がいた。その人の名前はローレンス・エニュオ。彼は侯爵家の跡取りで、外交官を目指す優秀な人だった。 ローレンスは留学先から帰る途中の事故で命を落とした。その知らせに大きなショックを受けている私に隣国の『血塗れ国王』から強引な縁談が届いた。 そして失意の中、私は隣国へ嫁ぐことになった。 ※はじめだけちょっぴり切ないかも ※ご都合主義/ゆるゆる設定 ※ゆっくり更新 ※感想欄のネタバレ配慮が無いです

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします

天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。 側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。 それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

公子から令嬢になりました 女体化したら溺愛されるってどうよ…どうですの?

ブラックウォーター
恋愛
ライツ王国の候爵家四男のニコラは、家を継ぐ予定もなく気ままな学園生活を過ごしていた。 ところが、ある朝先祖から受け継いだ体質によって女体化してしまい、生活は一変。 同じように女体化したものたちが集まる寮に入れられ、女の子として生きる修養をすることに。 しかも、女体化したとたん幼なじみである貴公子シャルルに溺愛され初めて…。 馴れない女の体に四苦八苦しつつ、淑女として自分を磨いていく日常が始まる。 自分の性と生、変化してしまった周囲との関係、そしてシャルルの溺愛に戸惑いながら、幸せを探して行く。 ひとまずR15ですが、性的描写が増えた場合R18に移行するかも知れません。

処理中です...