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ヒロインさんは居るんですか?
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(…何だか…丸め込まれた気がするわ…)
アルベール王子との密約を交わした後、話はとんとん拍子に進んでいき、レナリアは正式にアルベールの婚約者となった。
そして、学園を卒業するのと時を同じくしてアルベール王子は王籍から外れ、公爵位を賜り、それからレナリアの卒業を待って婚姻…と決まった。
レナリアは知らなかったのだが、元々上の王子たちと年齢が近い事から婚約者候補としての話は来ていたらしい。
今回臣籍へと下る形になるが、それでも公爵からのたっての希望とあって、レナリアの両親はもとより、本人も断ることなどできる訳も無かったのだが…
(まぁ…どうせならアルベールさまのところへ嫁ぐ方がいいわよね。気兼ねが要らないもの)
こうやって考えてみると、良縁の気がしてくる。
何だか気分が上昇してきたレナリアは、今日も今日とて萌えを供給するために萌えスポットへと軽やかに足を進めた。
…が。
「…私、萌スポットへ行く予定だったんだけど…」
「え? ここからでも見えるし。どうせなら一緒に萌えようよ」
何故か、王族専用スペースへと拉致られていた。
もごもごとお菓子を頬張りながらレナリアが淹れるコーヒーを待っているアルベール。
ため息一つ落として、レナリアもアルベールの横へと腰を下ろし、訓練場を眺めながら会話を楽しむことにした。
「…そういえば…結局王位争いが無くなったわけだけど…ヒロインはどうなったの?」
最近では二人きりの時は砕けた言葉遣いになっている。
「あ、それなんだけどね。ヒロインが…接触してこないんだよ」
「それってストーリー展開が変わったせいでフラグが立たなくなったって事?」
「…う~ん…それがよくわからなくて…」
アルベールいわく、ヒロインらしき令嬢は存在しているし、セドリック第一王子の周辺に姿を見せているらしい。
「…確かにいるんだけど…兄上の目につかないようにしてるみたいなんだ」
「…それって…」
「うん…恐らく…」
ヒロインも転生者―――
「でも、もし転生者なんだとしたら…ストーリー展開が変わってることは気づいてるだろうし…その上でなおかつ玉の輿目指すならそれなりの行動してると思うんだけど…」
「それなんだよなぁ…。最初は様子伺ってるんだろうな、と思って…話を捻じ曲げた俺としては申し訳ない気がしてそのまま放っておいたんだけど…全然行動に移らないんだよなぁ…」
「そもそも、展開知ってて玉の輿狙いじゃないなら近づかないだろうしね」
「それも考えた。後、根本的にラノベの内容を知らないのかも…って可能性も考慮したんだけど…しっくりこないんだよ」
実のところ、今現在アルベール王子の臣籍降下については公表されていない。時期としてアルベールが学園を卒業する時に、同時にセドリック王子を王太子として公表するつもりなのだ。
つまり、ヒロインがこの世界観を知らず、シンデレラストーリーだけを夢見ているのならば、アルベールにも粉をかけてきているだろう。
だが、ヒロインはアルベールには全く興味を示さず…むしろ積極的に避けてさえいるようなのだ。
「…私がいるからじゃないの? わざわざ婚約者がいる相手にちょっかいかけるよりはいない方狙うでしょ」
「まぁそうなんだけどさぁ…。もしラノベって知らないにしても、乙女ゲー脳だったとしたら…レナを悪役令嬢ポジにくらいするかなぁ…と」
「うわ、やだよめんどくさい。そんな電波来たらソッコー熨斗つけて放り出すからね」
「ちょっと冷たくない?! 仮にも結婚する相手に向かって!!」
「兄貴の尻狙ってる人に言われても…」
「俺が狙ってるんじゃないから!! 俺が萌えるのはキャラとしてのお宅のお兄さんであって、CPとしてはセドリック×エドモンだから!!」
「身内萌えな上、さらにうちの兄が右かよ」
ぽんぽんとやりあえるこの一時は、レナリアにとってとても楽しいもので、彼女は密かにこれからの未来が明るいことを喜んでいた。
アルベール王子との密約を交わした後、話はとんとん拍子に進んでいき、レナリアは正式にアルベールの婚約者となった。
そして、学園を卒業するのと時を同じくしてアルベール王子は王籍から外れ、公爵位を賜り、それからレナリアの卒業を待って婚姻…と決まった。
レナリアは知らなかったのだが、元々上の王子たちと年齢が近い事から婚約者候補としての話は来ていたらしい。
今回臣籍へと下る形になるが、それでも公爵からのたっての希望とあって、レナリアの両親はもとより、本人も断ることなどできる訳も無かったのだが…
(まぁ…どうせならアルベールさまのところへ嫁ぐ方がいいわよね。気兼ねが要らないもの)
こうやって考えてみると、良縁の気がしてくる。
何だか気分が上昇してきたレナリアは、今日も今日とて萌えを供給するために萌えスポットへと軽やかに足を進めた。
…が。
「…私、萌スポットへ行く予定だったんだけど…」
「え? ここからでも見えるし。どうせなら一緒に萌えようよ」
何故か、王族専用スペースへと拉致られていた。
もごもごとお菓子を頬張りながらレナリアが淹れるコーヒーを待っているアルベール。
ため息一つ落として、レナリアもアルベールの横へと腰を下ろし、訓練場を眺めながら会話を楽しむことにした。
「…そういえば…結局王位争いが無くなったわけだけど…ヒロインはどうなったの?」
最近では二人きりの時は砕けた言葉遣いになっている。
「あ、それなんだけどね。ヒロインが…接触してこないんだよ」
「それってストーリー展開が変わったせいでフラグが立たなくなったって事?」
「…う~ん…それがよくわからなくて…」
アルベールいわく、ヒロインらしき令嬢は存在しているし、セドリック第一王子の周辺に姿を見せているらしい。
「…確かにいるんだけど…兄上の目につかないようにしてるみたいなんだ」
「…それって…」
「うん…恐らく…」
ヒロインも転生者―――
「でも、もし転生者なんだとしたら…ストーリー展開が変わってることは気づいてるだろうし…その上でなおかつ玉の輿目指すならそれなりの行動してると思うんだけど…」
「それなんだよなぁ…。最初は様子伺ってるんだろうな、と思って…話を捻じ曲げた俺としては申し訳ない気がしてそのまま放っておいたんだけど…全然行動に移らないんだよなぁ…」
「そもそも、展開知ってて玉の輿狙いじゃないなら近づかないだろうしね」
「それも考えた。後、根本的にラノベの内容を知らないのかも…って可能性も考慮したんだけど…しっくりこないんだよ」
実のところ、今現在アルベール王子の臣籍降下については公表されていない。時期としてアルベールが学園を卒業する時に、同時にセドリック王子を王太子として公表するつもりなのだ。
つまり、ヒロインがこの世界観を知らず、シンデレラストーリーだけを夢見ているのならば、アルベールにも粉をかけてきているだろう。
だが、ヒロインはアルベールには全く興味を示さず…むしろ積極的に避けてさえいるようなのだ。
「…私がいるからじゃないの? わざわざ婚約者がいる相手にちょっかいかけるよりはいない方狙うでしょ」
「まぁそうなんだけどさぁ…。もしラノベって知らないにしても、乙女ゲー脳だったとしたら…レナを悪役令嬢ポジにくらいするかなぁ…と」
「うわ、やだよめんどくさい。そんな電波来たらソッコー熨斗つけて放り出すからね」
「ちょっと冷たくない?! 仮にも結婚する相手に向かって!!」
「兄貴の尻狙ってる人に言われても…」
「俺が狙ってるんじゃないから!! 俺が萌えるのはキャラとしてのお宅のお兄さんであって、CPとしてはセドリック×エドモンだから!!」
「身内萌えな上、さらにうちの兄が右かよ」
ぽんぽんとやりあえるこの一時は、レナリアにとってとても楽しいもので、彼女は密かにこれからの未来が明るいことを喜んでいた。
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