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驚き(番外的な話)
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俺は信じられないものを見るかのような目で目の前の景色を見ていた。
風紀委員室に用事があり、書類を持って来たところだった。生徒会長として仕事をするようになって2週間が経ったころの出来事だ。
「イヤ、それ可笑しいから絶対にぃ」
「そうじゃねぇだろ」
「いいえ、委員長それはまた違いますって」
この部屋の長が座る場所にドカリと腰を掛けているのは風紀委員長である菊池侑司。で、その両脇を固めているのが俺の古くからの知り合いである男たち。鍋谷洋翔と二村暁嗣だった。
この3人はこんなにも仲が良かったのか?
もしかして元から知り合いだったとか?
そんな疑問が浮かんだと同時にチリリと胸の奥が焼ける感じがした。
「あれ?梅ちゃんじゃん。どったの?」
扉を閉めた状態で立ち尽くしてる俺に気が付いた鍋谷が声をかけてくる。
「あっ、いや、書類を持って来たんだ…」
うん、これは嘘じゃない。
「何かあったんですか会長」
歯切れの悪い言葉を言う俺に二村が聞いてくる。俺はグルグルと頭の中で考えて、考えぬいて溜め息をついた。
そして…
「お前たちは古くからの知り合いなのか?なんか見てたら恋愛距離をしていたカップルが久しぶりに会ったみたいな感じに見えたんだ…」
そう、遠く離れ離れになっていた恋人と久しぶりに会えてはしゃいでいる。そんな雰囲気をこの2人は晒していた。
俺の言葉に鍋谷と二村が顔を見合わせ小さく笑う。
「あははは。梅ちゃんサイコー。例えがサイコーだよ」
「そうですね。残念ですが、恋人ではないですが…」
意味が分からん。ムッとした顔になったのがわかったのか笑みを浮かべたまま
「委員ちょ―とはずっと昔からの知り合いなんだよぉ。本当に久しぶりのさいか~い。6年ぶりだねぇ~」
「そうですね、委員長はご家庭の都合で渡米してしまったので、この場所で再会できて少し浮かれてますね」
鍋谷と二村が教えてくれる。
「俺…菊池のこと知らないけど?」
そうポツリと呟いたら2人の顔から笑顔が消えた。
なんでだ?
「お前とはクラスが違ったし、学校でも会ったことがなかったからな」
今まで黙っていた男が溜め息交じりに告げてくる。その途端に2人がちょっとだけ安心した顔になった。
「クラスが違う?でも学校は一緒だったのか?」
う~んっと考えるがまったくもって思い出せない。小学3年の頃から前のことが思い出せないのだ。小学3年の頃の記憶ですらあやふやでもある。
「そうだな。まぁ、わりと小さい頃に俺も渡米したから会ってたとしても記憶に残ってねぇと思うぞ。こいつらは手紙のやり取りをしてたからこうして再会を喜んでるんだ」
俺の言葉に小さな笑みを浮かべて答えてくれた。鍋谷と二村はうんうんと頷いている。
納得できるような納得できないような不思議な感覚だった。
「梅村、書類を貸せ。仕事なんだろ?」
1人で悩み始めた俺に菊池が手を差し出す。
「あっ、あぁ。悪いな頼む」
俺は慌てて持っていた書類を菊池に渡した。菊池はそれを受け取り手早く処理をして俺に返してくれた。
「あんまり考えこむなよ。人と関わるのが苦手なヤツが考えても思い出せねぇぞ」
なんて、言われた言葉にドキリとした。
何故この男はそんなことを知っているのだろうか?
「邪魔したな」
俺は溜め息をついて、部屋を出た。そして、チリチリと痛む胸の原因を考えながら生徒会室へと戻っていった。
Fin
風紀委員室に用事があり、書類を持って来たところだった。生徒会長として仕事をするようになって2週間が経ったころの出来事だ。
「イヤ、それ可笑しいから絶対にぃ」
「そうじゃねぇだろ」
「いいえ、委員長それはまた違いますって」
この部屋の長が座る場所にドカリと腰を掛けているのは風紀委員長である菊池侑司。で、その両脇を固めているのが俺の古くからの知り合いである男たち。鍋谷洋翔と二村暁嗣だった。
この3人はこんなにも仲が良かったのか?
もしかして元から知り合いだったとか?
そんな疑問が浮かんだと同時にチリリと胸の奥が焼ける感じがした。
「あれ?梅ちゃんじゃん。どったの?」
扉を閉めた状態で立ち尽くしてる俺に気が付いた鍋谷が声をかけてくる。
「あっ、いや、書類を持って来たんだ…」
うん、これは嘘じゃない。
「何かあったんですか会長」
歯切れの悪い言葉を言う俺に二村が聞いてくる。俺はグルグルと頭の中で考えて、考えぬいて溜め息をついた。
そして…
「お前たちは古くからの知り合いなのか?なんか見てたら恋愛距離をしていたカップルが久しぶりに会ったみたいな感じに見えたんだ…」
そう、遠く離れ離れになっていた恋人と久しぶりに会えてはしゃいでいる。そんな雰囲気をこの2人は晒していた。
俺の言葉に鍋谷と二村が顔を見合わせ小さく笑う。
「あははは。梅ちゃんサイコー。例えがサイコーだよ」
「そうですね。残念ですが、恋人ではないですが…」
意味が分からん。ムッとした顔になったのがわかったのか笑みを浮かべたまま
「委員ちょ―とはずっと昔からの知り合いなんだよぉ。本当に久しぶりのさいか~い。6年ぶりだねぇ~」
「そうですね、委員長はご家庭の都合で渡米してしまったので、この場所で再会できて少し浮かれてますね」
鍋谷と二村が教えてくれる。
「俺…菊池のこと知らないけど?」
そうポツリと呟いたら2人の顔から笑顔が消えた。
なんでだ?
「お前とはクラスが違ったし、学校でも会ったことがなかったからな」
今まで黙っていた男が溜め息交じりに告げてくる。その途端に2人がちょっとだけ安心した顔になった。
「クラスが違う?でも学校は一緒だったのか?」
う~んっと考えるがまったくもって思い出せない。小学3年の頃から前のことが思い出せないのだ。小学3年の頃の記憶ですらあやふやでもある。
「そうだな。まぁ、わりと小さい頃に俺も渡米したから会ってたとしても記憶に残ってねぇと思うぞ。こいつらは手紙のやり取りをしてたからこうして再会を喜んでるんだ」
俺の言葉に小さな笑みを浮かべて答えてくれた。鍋谷と二村はうんうんと頷いている。
納得できるような納得できないような不思議な感覚だった。
「梅村、書類を貸せ。仕事なんだろ?」
1人で悩み始めた俺に菊池が手を差し出す。
「あっ、あぁ。悪いな頼む」
俺は慌てて持っていた書類を菊池に渡した。菊池はそれを受け取り手早く処理をして俺に返してくれた。
「あんまり考えこむなよ。人と関わるのが苦手なヤツが考えても思い出せねぇぞ」
なんて、言われた言葉にドキリとした。
何故この男はそんなことを知っているのだろうか?
「邪魔したな」
俺は溜め息をついて、部屋を出た。そして、チリチリと痛む胸の原因を考えながら生徒会室へと戻っていった。
Fin
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