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記憶の中の君(番外的な話)

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『侑くん』

『侑くん見て、これ』

『侑くん、こっちだよ』

『もぉ、侑くんの意地悪』

『俺…侑くんが好き…』

『…っ…やだ…侑くん…しっかりして…侑くん…』

『…っ…侑…司…』




「っ」

夢か…。


日本に戻ってきて、あいつの傍に少しだけ近付いて見るようになった夢。

いや、正確に言うならば、昔の記憶が蘇っているだけ。

自分の記憶の中にいる幼いあいつが蘇って出てきてるだけ。

こっちに戻ってきて、実家にいるが、いまだにあいつには会ってない。隣の家なんだけどな。

あいつの両親とは会った、あの人らとも話はした。

だが、あいつは本当に俺の事を覚えてないらしい。まぁ、それはそれでいい。

あの時、俺は確かにあいつに言ったんだ。忘れろと、俺の事も今起きたことも忘れろと。

まさか、それが暗示になって本当に忘れるとは思わなかったが、それでも辛い思いを覚えていないならそれでいい。


あいつが志望した高校は全寮制の男子校だ。なんでそんなとこを選んだのかはよくわからねぇけど、それはあいつの自由だ。

俺も受験は済ませた。結果も出てる。

俺も、あいつも、合格だったらしい。なぁ、腐れ縁の奴ら全員が同じと受けて、全員合格ってんだからすげぇなおい。

来月から、俺は寮生活に入る。そして、俺はあいつと再会することになる。

覚えてないから俺を見てもわからねぇんだろうけどな。


俺の記憶の中にいるあいつ、梅村陽葵はずっと幼いままだ。

早く、俺と同じ年のあいつに会いたい。

記憶の中のあいつじゃなくて、本物のあいつに。


6年はあまりにも長かったなと思う。


だが、その6年も意味のある6年だった。


怪我の治療もあったけど、あいつを守るために覚えたスキル。力。知識。

今度こそ、俺はあいつを守るために6年間、日本から離れた地で過ごした。それは決して無駄ではない。

俺自身はそう思う。


夢の中の陽葵は幼くて、可愛くて、保護欲をそそられる。今のあいつはどう成長してるのか楽しみだ。


再来週になれば寮に入るための準備が始まる。


俺は記憶のないあいつと再会するのを楽しみにしながら、入寮するための準備を始めるのだった。



Fin

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