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7話
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「いつまでそこにいるつもりなの?」
急にそんな声が聞こえて驚いて顔を上げればそこには少しだけ困った顔をした立華さんがいた。
「えっ、あっ、ごめんさない」
立華さんの顔が見れなくて俺は思いっきり顔を逸らした。
「いつまでもそんな所にいたら他の人の迷惑でしょ。立って」
少しだけキツい口調の立華さん。俺は大人しくいうことを聞き立ち上がった。
立華さんは俺が立ち上がると腕を掴んで少し足早に歩きだした。
意味がわからなかった。声をかけようと思ったけど出来なくて黙って立華さんについて行った。
立華さんが連れてきたのは立華さんの部屋だった。
「入って」
やっぱり少しキツい口調で言われ
「お邪魔します」
俺は立華さんの部屋にあがった。
「ここで待ってて」
リビングに俺を残し立華さんはどこかへ行ってしまった。俺はリビングにあるソファの陰に隠れるように座った。
「なんで、そんなところに座ってんだよ」
そんな言葉に驚いて顔を上げればそこには、女性の姿ではなく、男の立華さんがいた。
「えっ?本当に…先輩…なんですか?」
そこに立っているのは間違いなく橘樹先輩だった。
「これで満足か?」
その言葉は冷たい。
「ご…ごめんなさい…俺、あなたの気持ちも考えないで…本当に失礼なことばっかり言って…」
自分のことばかりで立華さんのことを考えてもいなかった。
先輩には先輩の理由があって女性の姿をしていたのに、それなのに俺は先輩に会いたいと言ってしまった。立華さんが困るし、傷付くのをわかっていながら…。
「…俺に会ってどうするつもりだったんだ」
さっきよりも優しい言葉で聞いてくる。
「…ずっと気になってたんです…高2の時の突然いなくなってしまって…変な噂も広まってたし…」
これは本当のこと。ずっと気になってた。忘れてたわけじゃないんだ。でも、先輩を探す術もなくて、他の先輩にも聞けるわけがなくて、結局は今まで会うことも出来ずにいた。
「会ったとして、何も変わらないだろ?」
会っただけでは変わらないかもしれない。でも…
「…先輩のことが憧れでした。でも…その憧れが恋心に変わりました。だからと言って自分の気持ちを押し付ける気はないんです。本当に会いたかったんです。でも…先輩には迷惑ですよね」
会って話がしたかった。ただそれだけだった。
「いいのか?俺は発情してるお前をやっちまった男なんだぞ?」
そんなことを言われ驚いた。でも…
「あの日は俺があなたと離れたくなかったんです。発情してるときに人と会うべきじゃないのはわかってるのに…俺はあなたに会いたくて、傍にいたかったんです。だから俺は後悔してません」
俺はあの時、本当に一緒にいたかったんだ。
「俺が酷い奴だったらどうするんだ。下手したらお前、望まぬ妊娠だってする可能性だってあったんだぞ」
少しだけ苦し気な顔をする。
「俺の知ってる先輩はとても優しい人です。立華さんの姿だったあなたは本当に優しい人でした。そんな人が酷い男なわけないじゃないですか」
口数の少ない人だった。でも優しい人だというのを知っている。立華さんの姿だったときも優しかった。そんな人が酷い男なわけがない。
俺の言葉に先輩が黙り込んでしまった。
俺はやっぱり先輩に会うべきじゃなかったのかな?
俺は小さく溜息をつき自分の膝に顔を埋めた。
先輩、ごめんなさい。
急にそんな声が聞こえて驚いて顔を上げればそこには少しだけ困った顔をした立華さんがいた。
「えっ、あっ、ごめんさない」
立華さんの顔が見れなくて俺は思いっきり顔を逸らした。
「いつまでもそんな所にいたら他の人の迷惑でしょ。立って」
少しだけキツい口調の立華さん。俺は大人しくいうことを聞き立ち上がった。
立華さんは俺が立ち上がると腕を掴んで少し足早に歩きだした。
意味がわからなかった。声をかけようと思ったけど出来なくて黙って立華さんについて行った。
立華さんが連れてきたのは立華さんの部屋だった。
「入って」
やっぱり少しキツい口調で言われ
「お邪魔します」
俺は立華さんの部屋にあがった。
「ここで待ってて」
リビングに俺を残し立華さんはどこかへ行ってしまった。俺はリビングにあるソファの陰に隠れるように座った。
「なんで、そんなところに座ってんだよ」
そんな言葉に驚いて顔を上げればそこには、女性の姿ではなく、男の立華さんがいた。
「えっ?本当に…先輩…なんですか?」
そこに立っているのは間違いなく橘樹先輩だった。
「これで満足か?」
その言葉は冷たい。
「ご…ごめんなさい…俺、あなたの気持ちも考えないで…本当に失礼なことばっかり言って…」
自分のことばかりで立華さんのことを考えてもいなかった。
先輩には先輩の理由があって女性の姿をしていたのに、それなのに俺は先輩に会いたいと言ってしまった。立華さんが困るし、傷付くのをわかっていながら…。
「…俺に会ってどうするつもりだったんだ」
さっきよりも優しい言葉で聞いてくる。
「…ずっと気になってたんです…高2の時の突然いなくなってしまって…変な噂も広まってたし…」
これは本当のこと。ずっと気になってた。忘れてたわけじゃないんだ。でも、先輩を探す術もなくて、他の先輩にも聞けるわけがなくて、結局は今まで会うことも出来ずにいた。
「会ったとして、何も変わらないだろ?」
会っただけでは変わらないかもしれない。でも…
「…先輩のことが憧れでした。でも…その憧れが恋心に変わりました。だからと言って自分の気持ちを押し付ける気はないんです。本当に会いたかったんです。でも…先輩には迷惑ですよね」
会って話がしたかった。ただそれだけだった。
「いいのか?俺は発情してるお前をやっちまった男なんだぞ?」
そんなことを言われ驚いた。でも…
「あの日は俺があなたと離れたくなかったんです。発情してるときに人と会うべきじゃないのはわかってるのに…俺はあなたに会いたくて、傍にいたかったんです。だから俺は後悔してません」
俺はあの時、本当に一緒にいたかったんだ。
「俺が酷い奴だったらどうするんだ。下手したらお前、望まぬ妊娠だってする可能性だってあったんだぞ」
少しだけ苦し気な顔をする。
「俺の知ってる先輩はとても優しい人です。立華さんの姿だったあなたは本当に優しい人でした。そんな人が酷い男なわけないじゃないですか」
口数の少ない人だった。でも優しい人だというのを知っている。立華さんの姿だったときも優しかった。そんな人が酷い男なわけがない。
俺の言葉に先輩が黙り込んでしまった。
俺はやっぱり先輩に会うべきじゃなかったのかな?
俺は小さく溜息をつき自分の膝に顔を埋めた。
先輩、ごめんなさい。
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