隣の美人なお姉さんはアルファで憧れだった高校の先輩でした。

プロローグ

「先輩いっけぇー！！」
「すっげぇー！かっけぇー！」


グラウンドを颯爽を駆け抜けていくその姿は誰もが見惚れ、歓声をあげる。


学園内で行われた陸上大会。

他校との試合。


ぶっちぎりで走り抜き大会を優勝した橘樹智景たちばなちかげ先輩。

俺が高校2年の時に見た最後の夏の大会だった。


それから半年後、橘樹先輩は学園から姿を消した。


噂では故障したとか、他校の生徒のやっかみで怪我をさせられたとか、退学になったとか、色んな噂が出回ったけど誰も本当のことを知らなかった。


先輩の走る姿が好きだった。先輩の笑顔が好きだった。俺にとって先輩は憧れだった。


憧れが恋心に変わったのは意外に早かったけど、俺は先輩とちゃんと話したことがなかった。

挨拶や応援はしてたけど、話す機会がなかったんだ。先輩は人気者だったから。


先輩は今どこにいるんだろう？



俺の部屋には先輩の絵が飾られている。俺が描いた絵だ。


美術の授業中にグラウンドを走る先輩を描いたのだ。それしか思いつかなかったから…。


その絵を見ながら思いをはせる。



もう一度、先輩に会いたいと…。今度こそちゃんと話をしたいと…。


それが叶わぬ願いだと知りながら…