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流れ落ちた涙と触れた熱い手

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珍しく聖が俺の部屋に来ていた。


これと言って特に何かをするというわけでもなくて、ただ、ボーッとソファに座って心在らずでどこを見てるのかさえもわからぬ状態だった。

もしかしたら俺という存在も今の聖にはないかもしれない。

ふと、カレンダーに視線を移し、あぁ、と一人納得をする。


何も言わず、声もかけず、俺はただ、聖の様子を窺っていた。


ポロリと一滴、聖の右目から流れ落ちた。


あぁ、始まったか。


俺は小さく息を吐き聖の前に立ち、そっとその頭を撫でてやる。

「…っ…たぃ、がぁ…」
そんな呟きと共に抱き着いてくる。その身体を抱きしめれば、ギュッと服を握りしめ本気で泣き始めた。


聖唯斗の心の中でいまだに大きくて、深い傷となっている出来事。それは幼い頃に両親に捨てられたということ。そして、今日がちょうどその日。あれから何年も経ってはいるが、捨てられた日がくればこうして聖は精神的ダメージを喰らう。


俺と知り合うまでこの男はどれだけの時間、1人で耐えていたのだろうか?


中学で知り合って5年になるが、中1の頃はこんな話をすることがなかったわけだから、8年、9年ぐらいは1人でこの辛さに耐えてきたということになる。

「…っ…たぃ、がぁ…っ…たぃ、がぁ…」
抱き締めながら聖の頭を撫でていれば何度も俺の名を口にする。
「ん?どうした?」
だから、聖の視線と合うようにしゃがみ込み聞けば

「っ、たい、がぁ」
名を呼びながら首に抱き着き唇を奪われた。その勢いに負け俺は聖を抱きしめたまま後ろに倒れて頭を打った。


打ち付けた頭が痛いが今はそれどころじゃない。いつも以上に不安定になっている聖をどうにかすることが先決なのだ。

「んっ、どうした?どうして欲しい?」
一旦、聖のキスから逃れてどうして欲しいか聞けば
「たぃ、がぁ、して?俺を愛して?」
そんな言葉が飛んでくる。不安定なときは俺の愛情に飢えてるのはわかってる。だから…


あぁ、やっぱりか


と思った。


「わかった。ベッドに行こう」
聖の頬に手を添えて言えばその手に自分のそれを重ねて頷く。俺は身体を起こし、聖を抱き上げて寝室に行き抱いたままベッドに座った。
「ゆい、キス」
聖の顎を掴んで上を向かせキスと告げてからキスを贈った。


触れるだけのキスを何度も繰り返す。次第にそれは深くなり舌を絡め合い、咥内を好き勝手に犯して唇を離せば
「はぁ」
って少しだけ息のあがった吐息を吐き出す。聖の顔中に小さなキスを落としながら、キスを落とす場所を徐々に移動していく。

その間に服の上から手を這わす。片方の手でシャツのボタンを外していけば、同じように俺のシャツのボタンを外していく。どうやら今日はすぐにでも素肌に触れたかったらしい。まぁ、その理由はわからなくもない。俺の温もりで包み込んでもらいたいんだろう。

お互いに服を脱がし合い身に纏うモノがない状態で向かい合い、自分の上に聖を座らせ首筋から肩口にかけてキスを落としていく。勿論、いつもつけている肩口に吸い付きしばらくは消えない痕を残す。身体中に小さなキスを落としたままで、つっぷりと中へ指を入れる。

「んっ、ぁ、ぁ」
小さな声をあげるが嫌がってるわけじゃない。その代わりにキュウキュウと締め付けてくる。本当はもっと色々と感じさせてやりたいんだが、今日の聖はそれを許してはくれない。聖自身が早急に繋がりたいのだ。それを視線だけで訴えてくる。口にすればダメだと言われるのをわかっているからなこの男も。

雑にならないように気を付けながら、聖が受け入れられるように解していく。

「今夜はどういう風がいんだ?」
指を動かしたまま聞けば
「ん、ぁ、たぃ、がぁ、ん、ぁ、この、ままぁ、ん、ぁ」
ぎゅうと首に抱き着き答えてくる。

「わかった」
俺は解きほぐしている指を引き抜き、代わりに聖の腰を掴み引き寄せ、ゆっくりと聖の中に己のモノを入れていく。
「ぁ、ぁ、ぁ、たぃ、がの、ぁ、あつ、ぃ、ぁ、ぁぁ」
俺の首に抱き着き告げてくる。ポロリと流れ落ちる涙。

「ゆいの中も熱いぞ。ゆい、何も考えるな。今は俺に抱かれてることだけを考えろ、感じろ」
流れた涙を拭い告げれば
「ん、ぁ、たぃ、が、のぉ、ぁ、熱、でぇ、ぉれ、を、とか、してぇ、ぁ、ぁ、ん、ぁ」
頬にある俺の手に自分のそれを重ね告げてくる。その間も涙は止まらない。捨てられたことを思い出してるときに聖は泣き虫だから涙が止まらないのはわかってる。だから、俺は好きなだけ聖を泣かせるようにしている。それが例え行為中だとしてもだ。

「あぁ、何もわからなくなるぐらいにな」
俺は首の後ろに手を添え引き寄せ奪うように唇を重ねた。そして、空いてる手で腰を掴むと聖がもっと感じるように、俺以外のことを考えられなくなるように下から突き上げた。



「ぁ、ぁ、やぁ、ぁぁ、ぁ、ぁ、ん、ぁ、たぃ、がぁ、ん、ぁ、ぁ」
俺が下から突き上げ、自らも腰を振り、ただ、ただ快楽だけを拾っている聖の顔は妙に色っぽくて、可愛い。
「ぁ、ぁ、ん、ぁ、たぃ、がぁ、ぁ、ん、ぁ」
小さく首を振る。そろそろ近いか。なんてボンヤリと思うが、自分だって限界は近い。

「ぁ、やぁ、たぃ、がぁ、もぉ、ぁ、きちゃ、ぁ、ぁ、ん、ぁぁ」
俺の首にぎゅうと抱きつき訴えてくる。
「あぁ、我慢しなくていい。好きなだけ感じろ」
腰を掴み下から何度も突き上げてやる。

「ぁ、ぁぁ、たぃ、がぁ、ぁ、ん、ぁ、もぉ、ぁ、いっちゃ、ぁぁ、ん、ぁぁ」
抱き着く腕により一層力がこもる。
「あぁ、イケ、俺もだ」
だから、我慢するなと告げて、いかせるために、自分がいくために勢いよく、奥深く何度も突き上げていけば

「ぁ、ぁぁ、たぃ、がぁ、ぁ、ん、ぁ、もぉ、ぁ、いくっ、ぁ、ぁ、ダメっ、ぁぁぁ」
「っ、くっ」
首を振り、背中に爪を立ててぎゅうと締め付けてお互いの間に精を吐き出した。俺も聖の締め付けに耐え切れずに吐き出す。

「ぁ、はぁ、はぁ、ん」
俺の肩に頭を乗せ荒い息を繰り返す聖。その身体を抱きしめ何度も背中を撫でてやれば
「…ごめん…ありがとぉ…」
俺の肩を涙で濡らしたまま告げてくる。

「謝るな。俺は唯斗のその心の傷を癒すために、幸せにするために、こうやって傍にいるんだ。だから、聖唯斗の特権は使っとかないと勿体ないぞ」
抱き締める腕に少しだけ力をこめて、あやす様に背中を叩けば
「ぅん、一杯使う。もっと、もっと、甘える」
涙を流したまま何度も頷く。

「もう少しこうしててやるから泣きたければ泣け。でも、襲っても責任は取らないからな」
なんて冗談交じりに言えば
「うん。でも俺、大我にならいつでも襲われたい。恥ずかしいけど」
ジッと俺の顔を見て返事をしてくる。

「唯斗、好きだ。これからもずっと俺の傍にいろ。ずっと甘えさせてやるから」
聖の涙を拭いながら告げれば
「うん。俺ずっと大我に甘えてる。だって、俺も大我が好きだもん」
俺の手に自分のそれを重ね、小さく笑う。

俺はそんな聖に小さなキスを贈った。



心の傷はきっといつか癒えるだろう。


それまで俺は何度でも傍にいて甘えさせよう。


不安になって落ち込んでも大丈夫だと気付くまで…


絶対に傍にいると安心できるように…


流れる涙が止まるまで…



Fin


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