会長様ははらみたい

槇瀬光琉

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20話

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永尾に神谷への接近禁止命令を発令して、半月が過ぎて、永尾は一人で考えこむ時間が増えたらしい。小泉や絹笠が教えてくれた。

少しは永尾は冷静になれたということだろうか?


冷静になればその分だけあの男はちゃんと考えるんだけどな。




「神尾くんはさ、一人で背負いすぎだよね」
三条に保護されて、風紀委員室に来た愁先輩が俺を見ながらそんなことを言う。
「そう思いますか?」
苦笑を浮かべながら返事をすれば

「うん。僕のことも、恭のことも、静のことも、永尾くんのことも、ううん。全部だね。全部一人で背負いこんでる。ガス抜きしないと神尾くんが倒れちゃうよ?」
指折り数えながら言われる言葉にますます苦笑が浮かぶ。

「そうでもないですよ。恭先輩は放置ですし、愁先輩は三条に任せてますからね。風紀の方は引継ぎがあるからどうしても俺がやらないとダメだし、聖は先生たちに任せてますからね」
全部背負い込んでるわけじゃない。分担してる部分はある。

「分担してても、結局は全部見てるでしょ?それじゃ意味がないよ」
腐っても先輩。1年間、一緒に風紀委員にいたわけじゃないなと思った。
「大丈夫ですよ。本当に分担してやってるんで」
書類に手を出しながら答えれば

「恭のこと…よかったの?」
急にそんなことを聞かれた。
「どういう意味ですか?」
その言葉の意味はどういう意味だろうか?

「恭を放置しててよかったのかなって。暴君を放置してるのも正気の沙汰じゃないよね?」
なんて言われて、あぁ、って思った。
「あの人は放置してますけど、情報がないわけじゃないんで大丈夫です」
俺は別に放置してるけど、完全に放置してるわけじゃない。

「あー、やっぱり神尾くんはそういう子だよね」
俺の言葉に今度は先輩が苦笑を浮かべる。
「あの人を自由にさせてたら後片付けが大変ですからね。今クソ忙しいのにこれ以上厄介ごとは増やしたくないですよ」
これは本心だ。あの人はちゃんと監視しておかないと後々大変なことになるんだ。

「じゃぁ、静のことは?」
急に神谷のことを聞いてくる。
「神谷は先生が見てくれてますよ。一緒に今後のことで勉強してます。これからどうしていけばいいのかっていうのを経験者から教わってる最中です。まだ初期だから安定するまでどうした方がいいとかって教えてもらってますよ」
俺と話をしてから、顧問2人ともちゃんと話し合ったと本人から聞いたし、顧問2人からも聞いた。そして、今後どうしていくかという話し合いもしたらしい。授業の問題もあるし、出産するときのこともあるからな。

「ほら、やっぱり背負い込んでる」
なんて言われた。
「仕方ないですね、神谷のことは、神谷本人が恭先輩や先生たちと話し合いたくなかったんで…。俺が間に入ることで、やっと本人も先生たちと話し合いができたって言ってました」
神谷自身が落ち着きを取り戻し、いつもの神谷に戻ったんだ。だから今は本当に勉強をしてる最中だ。

「本当はそれだけじゃなかったんでしょ?」
なんて言われた。
「なにがですか?」
なんのことかわからず聞き返せば

「恭に聞いたよ。恭の実家にいたって…」
少しだけ呆れたような顔になる。
「あー、それを聞いたんですか。そうですね、神谷の実家に一人で行ったら先輩に鉢合わせしました。そこで、色々と話ました。神谷のことも神谷の気持ちも」
風紀委員長として、話した方がいいと判断して俺は神谷と永尾の実家に顔を出したんだ。今回のことを話すために…。

「で?永尾くんはどうだったの?」
それも気になったんだなとか思った。
「呆れると思いますよ。あいつには許嫁なんていなかった。確かに小学生の時はいたみたいです。でも中学をあがる頃にその話はなくなったそうですよ。だから実家にはそんな相手はいない。母親からは早く嫁を見せに来いって伝えてくれって言われました」
俺が永尾の所での話を口にすれば先輩は口をあんぐりと開けていた。

「ねぇ、永尾くんってバカなの?えぇ、それを信じてた静はどうするの?」
不満気にそんなことを口にする。
「それ神谷に伝えたらやっぱりバカだね健汰はって呆れてました。でもそれを聞いて益々決心が決まったみたいだったんで、よかったのかなって。永尾本人にはまだ伝えてないんで、頃合いを見計らって伝えようと思ってます」
神谷はこの話を聞き頭を抱えていた。何のために自分がこんなにも悩んだんだって…。呆れてたし、怒ってたな。

「やっぱり永尾くんは変なところでおバカなんだね」
溜め息交じりに愁先輩が言う。完全に永尾は先輩たちにおバカ認定されたな。
「冷静なときはすごいんですけどね。さてと、そろそろ先輩の迎えが来る頃ですね」
時計を見ればそろそろ三条が先輩を送り届ける時間だった。

「早いね、ここで神尾くんと話してると時間が過ぎるのが早いよ」
先輩も同じように時計を見て、溜め息交じりに応える。
「そろそろ、時間だけど大丈夫ですか?」
三条が声をかけてくる。

「うん、大丈夫だよ。いつもごめんね三条くん」
愁先輩は立ち上がりながら答えてる。
「三条、悪いが頼むな」
俺はそんな三条に愁先輩を頼む。

「わかった。先輩行きましょう」
三条は先輩を連れて風紀委員室を出ていった。


この時、俺は妙な胸騒ぎがしていた。だから、メールで三条に連絡だけはしといた。


きっと、大丈夫だとは思うけど…。


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