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12話
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「吉峰が安定期に入ったってなんでわかったんだ?」
ふいに拓輝がそんなことを聞いてくる。
「妊娠初期に俺は愁先輩に逢ってるんだ。まぁ、聖の暴走の時だったんだけど…。そん時にもう既に妊娠してるのに気が付いた。けど、俺自身が聖のことで手一杯だったから確認できなかったんだ」
そう、聖の発情の暴走時に一度、愁先輩には会ってる。あの人も風紀委員だったからオメガ用の非常ベルの理由は知ってる。あの教室の近くで会ってたけど、声をかける余裕もなかった。聖が危険な状態だったから…。
「そういうことか。そこから計算すれば安定期に入ってるってわかるな」
俺の説明に拓輝が納得する。
「あの二人は高校を卒業したら海外に行くって言って計画的に子作りしてたから良かったんじゃないのかな」
以前愁先輩に聞いたことがあった。
愁先輩自身が身体が弱いのでどこか空気のいい自然の多い場所で生活したいと。その話に恭先輩がのらないわけがなくて、二人で色々と計画を立てて、まだ十代のうちに子供を作って三人で海外に行こうって話してるのを俺は風紀委員室で聞いていた。色々と恭先輩に振り回されてるのが俺なんだが…。
「お前…本当に見事に厄介ごとに巻き込まれたな」
拓輝が苦笑を浮かべる。
「あの人に関わった時点で終わってる。邪魔して悪かった。そろそろ戻らないと三条が切れる」
俺は溜め息交じりに答えて、風紀委員室に戻るために校医の部屋を出た。
出た瞬間に聖がいてビックリした。
「あっ、大我ここにいたのか」
それはまるで俺を捜してたかのような口ぶりだった。
「何かあったのか?」
だから用があるのかと聞けば
「あーっと、引き継ぎの件とかで少し相談がしたかったんだが…今度でいいや」
俺の顔を見て、今度でいいという。
「生徒会室に戻るなら送るぞ。俺も風紀委員室に戻るから」
歩きながら話せばいいと意味を込めて聞けば
「あー、うん。送ってもらおうかな」
なんだか歯切れが悪い。
「何を隠してる?」
歩きながら聞けば
「えっと…。色々と聞きたいことがあったんだけど…自分の中でまとまらなくて諦めた」
同じように歩きながら観念して答える。
「それは俺のことか?それとも他のことか?」
何に対してなのかを聞けば
「本当に色々だ。大我のこともだし、風紀のこともだし、俺の知らなかった世界が多すぎる。だから悩んだ」
ぽつりぽつりと話し出す。
「そうだな、聖が知らないことが多すぎるかもしれないな。特に今回のことは尚更に悩むことになったかもな」
永尾に接近禁止令を出したあの時、聖が風紀のことについて神谷から色々と聞いたと俺に言った。聖が知らなかった風紀の内部の事情、第2の性のシステム、会長の椅子に座らせた理由、それらを一度に知ることとなった。
俺が言わずにいたことを聖は自分で疑問に思い神谷に聞いた結果、色々なことが起こっていたのを知り俺に確認しようにもどう聞いていいのかわからずますます悩んだんだろう。
「今回の一件が終わったら今後のことも踏まえてゆっくり話し合うか?」
だから、俺は聖が納得できる環境を作る役目がある。それが俺の責任でもあるからだ。何も知らないまま生徒会長という椅子に座らせた俺の責任。この男を守るためにしたことだ。俺の勝手なエゴだとしても…。
「頭使いたくない。それぐらい今の俺は頭の中がグチャグチャなんですが?」
なんて少しだけ膨れた顔で言ってくるあたり聖らしい。
「そこはほら、紙に箇条書きで書きだしていけばいいんじゃないのか?そういうの聖は得意だろ?」
そういう工程が得意なのは知ってるんだ。お前ならできるだろ?と言ってやれば
「なんか大我はズルいな」
なんて言われた。これはあれだ、少し拗ねてるな。知らないことばかりで拗ねてるなこいつ。
「今に始まったことじゃないだろ俺がズルいのは?」
俺が何も言わないのは聞かれないからだって知ってるはずなんだけどな。
「そうだよ、神尾大我はそういうやつだ。俺の知らないところで色んなことをやっていく。最後に終わってから俺は知らされるんだ。本当にズルいやつ」
なんて力説された。
「そう怒るな。全部、落ち着いたら話してやるから。じゃぁ、終わったら気をつけて帰れよ」
生徒会室に送り届けて、別れようと背中を軽く叩けば腕を掴まれた。
「どうした?」
それが気になって声をかけたら
「無理するなよ。大我が委員長として忙しいのはわかってる。だけど、ムリだけはするなよ」
ジッと俺を見ながら言われた。
「わかってる。大丈夫だ。じゃぁ、もう戻らないと」
俺はそんな聖に小さく笑って軽く手を振り今度こそ風紀委員室に戻るために別れた。
俺のわがままに付き合わせてるのはわかってるんだ。
本当は聖が甘えたいのはわかってるんだ。
だけど、今それを叶えてやれないのは神谷と永尾の問題があるから…。
片付けなきゃいけない問題が色々とあるから…。
ふいに拓輝がそんなことを聞いてくる。
「妊娠初期に俺は愁先輩に逢ってるんだ。まぁ、聖の暴走の時だったんだけど…。そん時にもう既に妊娠してるのに気が付いた。けど、俺自身が聖のことで手一杯だったから確認できなかったんだ」
そう、聖の発情の暴走時に一度、愁先輩には会ってる。あの人も風紀委員だったからオメガ用の非常ベルの理由は知ってる。あの教室の近くで会ってたけど、声をかける余裕もなかった。聖が危険な状態だったから…。
「そういうことか。そこから計算すれば安定期に入ってるってわかるな」
俺の説明に拓輝が納得する。
「あの二人は高校を卒業したら海外に行くって言って計画的に子作りしてたから良かったんじゃないのかな」
以前愁先輩に聞いたことがあった。
愁先輩自身が身体が弱いのでどこか空気のいい自然の多い場所で生活したいと。その話に恭先輩がのらないわけがなくて、二人で色々と計画を立てて、まだ十代のうちに子供を作って三人で海外に行こうって話してるのを俺は風紀委員室で聞いていた。色々と恭先輩に振り回されてるのが俺なんだが…。
「お前…本当に見事に厄介ごとに巻き込まれたな」
拓輝が苦笑を浮かべる。
「あの人に関わった時点で終わってる。邪魔して悪かった。そろそろ戻らないと三条が切れる」
俺は溜め息交じりに答えて、風紀委員室に戻るために校医の部屋を出た。
出た瞬間に聖がいてビックリした。
「あっ、大我ここにいたのか」
それはまるで俺を捜してたかのような口ぶりだった。
「何かあったのか?」
だから用があるのかと聞けば
「あーっと、引き継ぎの件とかで少し相談がしたかったんだが…今度でいいや」
俺の顔を見て、今度でいいという。
「生徒会室に戻るなら送るぞ。俺も風紀委員室に戻るから」
歩きながら話せばいいと意味を込めて聞けば
「あー、うん。送ってもらおうかな」
なんだか歯切れが悪い。
「何を隠してる?」
歩きながら聞けば
「えっと…。色々と聞きたいことがあったんだけど…自分の中でまとまらなくて諦めた」
同じように歩きながら観念して答える。
「それは俺のことか?それとも他のことか?」
何に対してなのかを聞けば
「本当に色々だ。大我のこともだし、風紀のこともだし、俺の知らなかった世界が多すぎる。だから悩んだ」
ぽつりぽつりと話し出す。
「そうだな、聖が知らないことが多すぎるかもしれないな。特に今回のことは尚更に悩むことになったかもな」
永尾に接近禁止令を出したあの時、聖が風紀のことについて神谷から色々と聞いたと俺に言った。聖が知らなかった風紀の内部の事情、第2の性のシステム、会長の椅子に座らせた理由、それらを一度に知ることとなった。
俺が言わずにいたことを聖は自分で疑問に思い神谷に聞いた結果、色々なことが起こっていたのを知り俺に確認しようにもどう聞いていいのかわからずますます悩んだんだろう。
「今回の一件が終わったら今後のことも踏まえてゆっくり話し合うか?」
だから、俺は聖が納得できる環境を作る役目がある。それが俺の責任でもあるからだ。何も知らないまま生徒会長という椅子に座らせた俺の責任。この男を守るためにしたことだ。俺の勝手なエゴだとしても…。
「頭使いたくない。それぐらい今の俺は頭の中がグチャグチャなんですが?」
なんて少しだけ膨れた顔で言ってくるあたり聖らしい。
「そこはほら、紙に箇条書きで書きだしていけばいいんじゃないのか?そういうの聖は得意だろ?」
そういう工程が得意なのは知ってるんだ。お前ならできるだろ?と言ってやれば
「なんか大我はズルいな」
なんて言われた。これはあれだ、少し拗ねてるな。知らないことばかりで拗ねてるなこいつ。
「今に始まったことじゃないだろ俺がズルいのは?」
俺が何も言わないのは聞かれないからだって知ってるはずなんだけどな。
「そうだよ、神尾大我はそういうやつだ。俺の知らないところで色んなことをやっていく。最後に終わってから俺は知らされるんだ。本当にズルいやつ」
なんて力説された。
「そう怒るな。全部、落ち着いたら話してやるから。じゃぁ、終わったら気をつけて帰れよ」
生徒会室に送り届けて、別れようと背中を軽く叩けば腕を掴まれた。
「どうした?」
それが気になって声をかけたら
「無理するなよ。大我が委員長として忙しいのはわかってる。だけど、ムリだけはするなよ」
ジッと俺を見ながら言われた。
「わかってる。大丈夫だ。じゃぁ、もう戻らないと」
俺はそんな聖に小さく笑って軽く手を振り今度こそ風紀委員室に戻るために別れた。
俺のわがままに付き合わせてるのはわかってるんだ。
本当は聖が甘えたいのはわかってるんだ。
だけど、今それを叶えてやれないのは神谷と永尾の問題があるから…。
片付けなきゃいけない問題が色々とあるから…。
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