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お前だった!やはり
しおりを挟むレオさんとマテオくんは大事をとって馬車で先に帰路についた。
ザック大尉はリュークの代わりに騎士団を指揮していた。
段々と閑散になっていく野原で我々がまだ立ちすくしていた。
リュークや殿下、そして、シモンの心配そうな視線で気がついた。
どうやら、その時、自分は知らずに大きなため息をついていたみたいだった。
エントもただこちらを冷静に凝視していた。
彼には他の人に比べて、その表情に不安な要素は含まれていなかった。
離れていた自分の思考をまたポケットに集中した。
自分が掃除機で吸っちゃったアマイモンって言うふざけた名前、前からなにか心に引っかかっていた。
普通、悪魔といえば、サタンとか、なんとかでしょ。
何か違うのだ。
この世界は……。
オークっていうファンタジーの動物も、自分は以前は知らなかった。
あるやつが教えてくれるまで。
嫌な予感がすっごいする。
しかも、絶対に奴はゲーマーっぽい。
それに、パシリに自分を使うわりには、よく自分にちょっかいを出してきていた。
この、曰く付きのパンダの衣装を頼んだのも、あいつだった。
この世界のことを色々と熟考していくと、どうしても関係なさそうな猫かぶりのあの人のことしか思い浮かばない。
ポケットの中を覗く。
この中に奴がいるのだろうかと?
悪魔を吸っちゃう掃除機が出てくるのなら、これだってアリでしょう?
「──このふざけたの設定の犯人、出てきなさいよ!」
自分がそう言いながら、まるで宇宙のように広がりを見せるポケットに手を突っ込んだ。
ポケットから「な、なんだ! うぎゃーー!!」と声が聞こえた。
シモン、リューク、殿下、それぞれが抜刀する。
予想通り、エントだけは冷静だ。
首を降ってみんなに冷静さを促した。
見守る中、一人の学生服を来た男が自分のポケットから現れる。
どうやら、奴の襟元をぐいっと掴んで出してしまったようだ。
「!!! か、片山!! なんで、え? ど、どうしてぇ」
尻餅を付いている野郎を半分パンダ姿の自分が睨む。
まあ半身パンダの仁王立ちだ。
その言葉は奴にそのままお返ししたい!
「お、お前か!! やっぱり!!」
自分が唸った。
「ど、どうして、あれ、この人、リューク? シモン、あれあれ!!」
初対面なはずなのに、こいつはつらつらと名前を述べる。
ここは異世界。
つまり、こいつはここに来たことがあるか、それとも……違う可能性を指し示しているかだ。
「クッソー!!! やっぱりお前が原因か!」
自分が機嫌の悪い猫のように唸っていた。
「どうした! おい、片山、なんだよ、それ! パンダの着ぐるみ、汚れてるんじゃん! え、待てよ。この図柄……も、もしかして、お前、まじで女神になっちゃった?」
「お前とか言うな!」
自分があの委員長に殴りかかろうとしたら、リュークに止められた。
彼の腕が腰に回る。
「──やっぱり、これ、委員長の……貴方の空想の世界なの?」
掠れた声の自分がこの目の前の学ランをきた男に質問する。
そう、ここに尻餅を付いた男。
あの鬼の委員長。
久我山 任。
「ちょっと片山、パンダの格好。ススだらけ! ど、どうしてくれるんだ! 超過料金…か、かかるんだぞ」
自分がもう耐えられなくなって、委員長の方向に歩み寄ったら、後ろにいたはずのリュークが間に割り込んだ。
彼がぐいっと久我山の襟元を捉えた。
「お前、猫かぶりの委員長だな?」
リュークの低い声と眼光が彼を襲う。
いつもはそれを向けられている相手に対して気の毒だと思うが、今回はありえない。
どうぞリューク様、やっちゃってください!
「え、なんで…俺のこと…」
「答えろ。お前、委員長か?」
「え、あ、はい学祭の実行委員で委員長してます。生徒会もですが…」
唖然としながらも目の前の状況に、学ランの彼がまだ理解していないようだった。
「お前、サキに興味があるよな……」
「─え! あ、その……」
「おい、どうした。答えろ」
リュークの睨みに耐えられるほど、鬼の委員長も鬼ではない。
「ど、どうして、こんな」
グエーーと悲鳴がして、委員長が答える。
襟を引っ張られて苦しいらしい。
「──男らしくないな。どう考えても、彼女を幸せにできると思えない……まあそれでも諦める気にはなれんがな……」
リュークがさらにもっと襟元をあげて、久我山を苦しめた。
「え、すみません。そうです! でも、なんでリュークが! ここなに? う、苦しい!」
リュークが自分を見る。
「お前が何者であっても……譲らないからな。覚えておけ」
意味深なことを言いながら、リュークがこちらを見る。
「縛り上げるか? サキ?」
****
その後、木の根元に久我山が縛りつけられた。
そんなことをしなくてもいいのにとは思うが、リュークの気がすまないらしい。
こんなに激しく気性を表すリュークを初めて目にしてちょっと驚いた。
でも、久我山の話を聞いていると自分の予想は、ある意味見事に当たっていたようだった。
どうやらこの世界、久我山委員長が創作小説として、描いた妄想の世界だったみたいだ。
しかも、それ出来上がったあと、恥ずかしくて、消したとか言いやがる!!
「ちょっと待って、委員長!! その妄想の世界で、わ、私に何をさせたの?」
委員長が、今までにみたこともない赤らめた顔でモジモジとしている。
「あの、君を女神にして、勇者と恋に落ちる話を書いた…」
え?っと今度は自分の頬が赤くなる。
「なんとなく、お前の好みってリュークみたいなのかな…とか想像して…」
なぜかリュークがじっとこっちを見る。
「そうなのか? サキ」
いや、こんな時にその流し目線は辛い。
ちょっと今そんなことを議論している場合ではないのだ。
「……もしかして、その勇者って…リューク」
恥ずかしそうに久我山は頷いた。
ど、どうするんだ!!これって!!
ちょっと待って。
冷静になり、あの溜まりの原因を考える。
その溜まりの話をすると、久我山があちゃーーと顔を歪ませた。
もう一回その溜まりが出た時間帯や出てくるものをリュークと確認する。
「すまん、わけわからんけど、多分、それも俺のせいだわ…」
鬼委員長ががっくりと肩を落とした。
「俺、その時間、RPGしてんだわ。ここに出てくるキャラとか、今リュークが説明してくれた魔物とかみんなカブっているんだよね」
さらに溜まっていた怒りが込み上げて来た。
拳を振り上げようと思ったら、後ろから、リュークに抱きしめられる。
「──おい、クガヤマ、そのストーリーの続きはどうなんているんだ…」
久我山が今度はもっと顔を赤させながら、言いにくそうに声を絞り出す。
「ちょっと、なに、言えないことなの?」
自分も焦って、彼に問いただす。
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リュークを押しのけて、委員長に歩み寄る。
「あの……その……リュークにめちゃめちゃに愛されて…」
なぜかその先、彼が言わない。
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な、何よ。
恥じらった顔を見せたって…
「勘弁してくれよ、それ、本人を目の前に到底言えない。ゴメン……ただ、俺、お前のこと、まじにスッゲー…」
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久我山が焦っていいる。
「ちょっとリューク、邪魔しないでよ」
「──サキ、近過ぎる。こいつから離れろ。クガヤマ、つまり、こういうことか? こういうことを…サキにやらせたのか?」
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「ちょっと、こいつが俺を本気にさせた…」
え? 本気?
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リュークが自分を抱きしめて、激しく自分の唇を奪い始めた。
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ああ、なんかリュークの口を半開きにしていやらしく舌なめずりした。
「こういうことか? それとも、もっとか? こんな人前じゃできないような?」
もう顔から火が吹いてしまいそうな気分だった。
また皆が唖然とする中でリュークが自分を抱きしめ、彼の信じられないような熱いキスがまた降りかかる。
おい! 委員長!
リューク、なに設定で書いたんだよ!!!
片山咲。
人生で初めて気を失った。
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