上 下
13 / 63

急募 癒し係

しおりを挟む
 風邪も良くなり、またにわか商売を始めた。
 まだ王宮に入れる手段がなかなか見つからず、ただ漠然と日々が過ぎていった。

 焦っている自分にレオさんは、ちょっとツテがあるので聞いてみると言ってくれたけど、果たして、門番の君がどうやって私を忍び込ませるのかちょっと不安になる。

 あ、厨房とかいいねと思うが彼によると最近募集があったばかりで、しばらく厨房などの職の募集はないだろうと言われた。
 がっくりとしていたところに、朝起きたら、レオさんに今日はここに来いと言われて、来てみたら人だかりがあった。
 目の前の所謂、求人広告を凝視する。
 ここは所謂、江戸時代とかの高札たかふだ場みたいなところで、みんなが集まっている。
 まあネットとかないから、この掲示板でいろいろ細かい王宮からの募集が載るそうだ。
 その紙切れを見る前に、すでにそれを見た人達がジロジロと自分を見てくる。

 一応、格好はパンダだ。

 最初は、ただパンダのためにそういう注目を浴びていたと思った。

 いやいや、募集要項を読んで、心臓が飛び出しそうになった。

 そ、そうだよね。
 …………分かりますよ。
 だって、どう考えても、これってしか当てはまる人、いなくないですか?

 【王立騎士団の癒しのカウンセラー募集
 ・秘密厳守出来る人。
 ・人を和ませることが得意な人。
 ・全身にの模様があり、ふわふわな外見であること。
 ・占いが得意であること。
 ・人の話を聞くのが得意で、良いアドバイスが与えられるもの】

 いや、最初の二つはいいでしょう。
 秘密厳守は、仕方がない。
 でも、ふわふわで白黒って何!しかも、全身?

 「おーい。それってパンティさんにぴったりじゃないか」

 隣のおっちゃんが話す。
 レオさんのうちの近所のおっさんだ。

 「そうよ。いいじゃない、パンティさん、仕事探していないの?」

 また常連さんに声をかけられた。

 「え? あ、まあ探していないといえば、嘘になりますが……」

 思ったより長期滞在になりそうな今、収入は必要だった。
 レオさんは大丈夫ですと言ってくれるが、一人の門番の収入が二人の妹と弟を支えるのに精一杯ぐらいのことは知っている。
 そこへ自分が居候だ。手に入ったお金は全て彼らにあげている。
 まああのリュークからのお金も受け取りを拒否されながらも、エリカちゃんに拝み通して受け取ってもらった。

 でも、長くなれば、また食費がかさむ。

 しかし、この掲示板、どう考えてもこの条件は怪しいとしか思えなかった。
 名指しで王宮騎士団に入れと命令されているような気がした。
 それとも、これって新手の指名手配? とか、思っちゃう。

 そこへレオさんがやって来た。

 「あ、パンティさん、見ましたか?」

 いつも外ではパンティと呼んでもらっている。
 なぜか自分のことを絶世の美女と勘違いしている三兄弟が、自分の素顔での外だしを許してくれないからだ。

 「……あ、え、あの求人、見ましたよ。でも、ちょっと怪しすぎて……」
 「でもチャンスですよ。王宮に入れます。ただ住み込みっていうのが、僕としては不安ですが……パンティさんで入り込んで、はやくその魔術師さんに会われたら……それに、」

 レオは実はこの求人には自分が絡んでいると言おうとしたが、思わぬ咲の言葉で言葉を飲み込んだ。

 「パンティさんをずっと続けなくても、まあ、いいんじゃない。別に、顔見せしたって……」

 自分は言った瞬間、黙ってしまったレオを見た。
 唖然とした顔のレオさんが目の前にあった。
 
 顔色、めっちゃ、悪くなったよ!!


しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

処理中です...