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五年目の事件
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自分が指揮した辺境の国境警備隊は、全員の昇進した。
皆、肩を抱きながら喜び合った。
隊員の何名かは、これからの後輩のために、自ら辺境に残る決心をする。
残りの多くは好きな場所への配属届けの希望が出来た。
この王都にも何名か配属された。
自分は総大将になってしまったため、なかなか全員に会えないが、それぞれ自分の夢に向かって頑張っているようだった。
全ての者が一気に騎士に上がれる訳ではない。
だから、騎士団にもちろんは入れない者もいた。
王都の城廻りの警備などを経験して、入団テストに受かれば騎士の見習いとして、一歩が踏み出せる。
長い道のりなのだ。
自分の場合は全てをしなかった。
聖女付きの警護に立候補するには他薦と自選がある。
毎年度開かれる、国が主催している無階級のトーナメント戦での優勝者は、自動的に推薦されるのだ。
自分はそれだった。
つまり、自分は叩き上げの平民が、運よく聖女付きになったのだ。
もちろん、妬みも凄かった。
もっと貴族階級で位の上の物が選ばれるべきだと言う意見もあった。
だが、もちろん、そう言う人も貴族枠で出ているのだ。
あの円陣の中に、公爵クラスの騎士もいた。
でも、サキは自分に落ちてきてくれた。
それは、新鮮かつ、驚きの経験だった。
絶対自分のような無骨者が聖女付きなんてありえないと思ったからだ。
君は本当にこの世にいないのだろうか?
五年目になってもその想いは消えることがなかった。
そんななか、元国境警備隊のレオに会った。
こいつは最初は飛んでもない抜けている奴かと思ったが、訓練と生まれつきの直観の良さで、ぐんぐんと力を伸ばしてきた奴だった。
あ、言い忘れたが、あのスライムに飲み込まれたのは、レオだった。
あの経験からレオは魔物にすごい興味を見せ、自分で色々調べるようになっていた。
だから、いつも王宮の図書館でそういうものを研究しているレオをよくみかけた。
会えば、お互いに近況を話しあう。
大将になってから、なかなか会えないから、話す時間も短くなる。
そんなレオが司書に質問しているのを耳に挟んだ。
『すいません。”パンダ”っていう生き物が乗った図鑑か本ってありませんか?』
耳を疑った。
探している司書が、しばらくしてレオに告げている。
首を振って彼女が対応しているところを見ると、該当する書籍がないと言っているのだろうっと察しがついた。
疑問が浮かび、すでに足がレオに向かう。
あちらは自分に気がついて、礼をしている。
まあやはり大将に手を公の場で流石に振れないのはよくわかる。
二人だけなら全然問題がないが……。
声をかけた。
「何を探しているのだ?」
「ああ、リューク隊長、いや大将、聞いてください。ある生き物について調べたいんですけど、ないんですよ。聞き間違えなのかな~、やっぱり。まあ、そう思って看板は作っちゃったし、いいんですけど……あ、すみません、弟を迎えにいく約束していたんです。大将! 失礼します」
「さっきお前、何を……」
「あ、リューク大将、よかったら、うちの路地裏で知り合いが、”占い”やっているんです。結構、当たるって人気なんです。よかったら来てください。あ、お忍びでお願いします。みんな英雄が来たら、ビビっちゃうんで!」
話しかける暇もなく、あいつは走り去った。
犬みたいな奴だ。
慌ただしい。
だが、先ほど、奴が調べていた物が気になった。
司書に確かめる。
司書がうる覚えに答えた。
「確か、パンティとか、パンダとかだった気がします」
自分の心臓が高鳴った。
まさかと思う。
皆、肩を抱きながら喜び合った。
隊員の何名かは、これからの後輩のために、自ら辺境に残る決心をする。
残りの多くは好きな場所への配属届けの希望が出来た。
この王都にも何名か配属された。
自分は総大将になってしまったため、なかなか全員に会えないが、それぞれ自分の夢に向かって頑張っているようだった。
全ての者が一気に騎士に上がれる訳ではない。
だから、騎士団にもちろんは入れない者もいた。
王都の城廻りの警備などを経験して、入団テストに受かれば騎士の見習いとして、一歩が踏み出せる。
長い道のりなのだ。
自分の場合は全てをしなかった。
聖女付きの警護に立候補するには他薦と自選がある。
毎年度開かれる、国が主催している無階級のトーナメント戦での優勝者は、自動的に推薦されるのだ。
自分はそれだった。
つまり、自分は叩き上げの平民が、運よく聖女付きになったのだ。
もちろん、妬みも凄かった。
もっと貴族階級で位の上の物が選ばれるべきだと言う意見もあった。
だが、もちろん、そう言う人も貴族枠で出ているのだ。
あの円陣の中に、公爵クラスの騎士もいた。
でも、サキは自分に落ちてきてくれた。
それは、新鮮かつ、驚きの経験だった。
絶対自分のような無骨者が聖女付きなんてありえないと思ったからだ。
君は本当にこの世にいないのだろうか?
五年目になってもその想いは消えることがなかった。
そんななか、元国境警備隊のレオに会った。
こいつは最初は飛んでもない抜けている奴かと思ったが、訓練と生まれつきの直観の良さで、ぐんぐんと力を伸ばしてきた奴だった。
あ、言い忘れたが、あのスライムに飲み込まれたのは、レオだった。
あの経験からレオは魔物にすごい興味を見せ、自分で色々調べるようになっていた。
だから、いつも王宮の図書館でそういうものを研究しているレオをよくみかけた。
会えば、お互いに近況を話しあう。
大将になってから、なかなか会えないから、話す時間も短くなる。
そんなレオが司書に質問しているのを耳に挟んだ。
『すいません。”パンダ”っていう生き物が乗った図鑑か本ってありませんか?』
耳を疑った。
探している司書が、しばらくしてレオに告げている。
首を振って彼女が対応しているところを見ると、該当する書籍がないと言っているのだろうっと察しがついた。
疑問が浮かび、すでに足がレオに向かう。
あちらは自分に気がついて、礼をしている。
まあやはり大将に手を公の場で流石に振れないのはよくわかる。
二人だけなら全然問題がないが……。
声をかけた。
「何を探しているのだ?」
「ああ、リューク隊長、いや大将、聞いてください。ある生き物について調べたいんですけど、ないんですよ。聞き間違えなのかな~、やっぱり。まあ、そう思って看板は作っちゃったし、いいんですけど……あ、すみません、弟を迎えにいく約束していたんです。大将! 失礼します」
「さっきお前、何を……」
「あ、リューク大将、よかったら、うちの路地裏で知り合いが、”占い”やっているんです。結構、当たるって人気なんです。よかったら来てください。あ、お忍びでお願いします。みんな英雄が来たら、ビビっちゃうんで!」
話しかける暇もなく、あいつは走り去った。
犬みたいな奴だ。
慌ただしい。
だが、先ほど、奴が調べていた物が気になった。
司書に確かめる。
司書がうる覚えに答えた。
「確か、パンティとか、パンダとかだった気がします」
自分の心臓が高鳴った。
まさかと思う。
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