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二度目は間違えたくないという件です

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 「あ……」っと思わず声が漏れた。
 頭から被っているものの隙間から見える景色に見覚えがあったから。
 まさかっと冷や汗が流れてしまう。

 ここはあの自分がミリアム王国の市井だったから。
 今まで起こった事を振り返ってみた。

 最後の学祭の催しで、借りたパンダの着ぐるみごと、学校の階段を降りていたら、見事に転び落ちた。
 ああ、きちんと親友、ともちゃんのアドバイスを聞いて、座って待っていれば良かったと、宙を浮きながら、反省した。
 でも、どうしても執事カフェ、見に行きたかったから。
 大原君があの執事衣装を着てサーブしているらしいと、みんな大騒ぎしているからだ。

 み、見たいよね。
 学校一人気のある彼だ。
 みんな我先にと、行列らしい。

 パンダのめっちゃ重いぬいぐるみが頭からのしかかる。
 ちょっと学祭を回りたいと言ったら、生徒会の宣伝も兼ねて着ていけよと、生徒会会長でもあり、学祭の鬼委員長でもある八坂くんに脅かされたからだ。
 入りたくないのに無理矢理、鬼委員長に、彼の『うーーん、片山さんのようにが効く人がいると、助かるから、ぜひ入ってくれないか』という言葉に絆されて入ったのもつかの間、単なる鬼委員長の使となったのと自覚したのは、数週間後だった。

 どうやらこの着ぐるみさん、意外とレンタル料、高いらしい。
 生徒会主催のたこ焼き屋台のチラシを人束持たされた。
 『働けよ。あと、それ汚すな……』
 まじ、鬼だ。

 気分を切り替えて、さあ、蓮司様を見に行こうと、るんるんと三階から降りようとしたら、思いっきり足を踏み外した。
 同級生の自分の名前を呼ぶ声が耳の中にこだました。

 ああ、たこ焼き屋台のチラシが空を飛ぶ!
 鬼委員長のお怒りの顔が浮かぶ……
 いや、もうこの高さ、死んじゃうでしょ、私!

 だって、はい、こんなことも前にありましたよ。
 ああ、私は死んでしまうんだっと、自分の人生の不運という名の幸運を噛み締めた。

 でも、いまの現状は頂けない。
 もう一度、パンダの着ぐるみの間から町並みを見渡した。

 また汗が、じとっと流れ出た。

 二度目だから、冷や汗を出しているのではない。
 格好が思いっきりパンダだからでもない。
 自分がここでとして、ドラゴンを退散させて名声を得ていたからでもない。
 自分にとっては大したことない戦いだったし、転生聖女というチートな方法でドラゴンをやっつけたから。

 ハラハラ、ドキドキで楽しかった。
 イケメン騎士や王子、美形神官までもが、ちやほやしてくれて、まるで乙女ゲームだったし。
 もちろん、聖女の務めには色々慣例やら、儀式、礼法などあって、それを学びながら、散々愚痴をいつも一緒にいてくれたリュークにこぼしていた。

 彼の顔は一年経っても忘れられない。

 が、いい気になっていたのだ。
 天罰が下ったに違いない。
 だって、前回、聖女として召喚された時、いつもの日本人代表みたいなヌメ~っとした平たい顔ではなくて、豪華絢爛、金髪の青目の美少女として転生していたのだから……。

 そして、イケメンに囲まれ三昧。
 これでモチベーションが下がる乙女など、いるのだろうか?

 生まれて初めて異性の視線に写ったという気がした。
 今までの自分は、誰かの視線のなかではいつも通行人Aなのだったから。
 つまり居ても居なくてもいい人なのだ。
 
 でも、調子をこいているだけでは無かった。
 ドラゴンを退させるお仕事で忙しかったし、デートとか、お付き合いとかそんなことなんて一切なかった。
 ただ、皆が聖女に優しくしてくれただけなんだけど、それは自分にとって、特別な時間だった。
 
 それがいけなかったのでしょうか。
 モテ過ぎってまじ怖いと思いました。
 まあ聖女様だったから仕方がないと思ったけど……。
 でも、神さま、不公平過ぎませんか?
 そう、ある日、紅茶を飲んでいたら、なんと私、されちゃったんです。
 死んでよくわかりました。
 殺した犯人、さっぱりわかりませんでした。

 最後にいつも一緒にいてくれた聖女専属騎士だったリュークが、叫びながら、自分を抱いていたことを覚えている。
 その眉目秀麗な顔立ちの眉間にシワを寄せていた。
 でも、最後に彼が言った一言が忘れられない。

 「サキ、許してくれ…」

 そう言ったよね?
 覚えていますよ!
 はっきりと!

 死んじゃう人に、そういう意味深なことは言わないでくれと思うの。
 だって、質問しても、返事聞けないし!!
 それって、私を事を謝っているの?
 息も絶え絶えに、質問が出なかった。

 片山咲、十八歳。

 もしかして、恋した相手に毒殺されたかもしれない場所に、わたくし、戻ってまいりました。
 もう二度と、殺されたくはございません…!





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