団長、それはやり過ぎです。

ディアナの想い

　待ち合わせの場所にたどり着くと、兄のガイザーが怒って待っていた。

　ちょっと顔色の優れないディアナを見て心配する。

　「大丈夫？　遅かったじゃないか。心配したぞ。ディアナ。なにか疲れた様子だ。早く外に馬車を待たせているから、こっちの裏門から出るんだ。メイドのナターシャに言ってある。君が館の裏門から入るのを手伝ってくれるはずだ。彼女にはいつもお世話になっているからね。でも、本当？　ディアナ、顔色が悪いよ。なにかあったんじゃないか？」

　「ち、ちょっと転んで腰を打って、歩けないの、あんまり、早く……」

　片足を引きずりながら、ディアナは歩いていた。
　ここで、心配させていはいけないと思う。自分の為でも、イーサンの為にも。それに、アリスの事を考えるとここは頑張らなくてはならなかった。

　「まったくドジだな。わかった、手を貸せ。おれがおぶってやる」
　
　妹思いのガイザーはディアナをおぶって、裏門の外に待ち構えてた馬車にディアナを乗せた。
　気丈に振舞うディアナの涙には気がつかなかった。

　「だいじょうぶ。やっぱり夜更かしすると疲れるわね。帰って、湯浴みをしたいけど、明日までお預けかしら？」

　馬車に乗り込むと、無理をして笑顔をつくる。
　ガイザーは、
　「大丈夫。メイドのナターシャに言えば、夜中でも朝方でも湯浴みの準備ぐらいしてくれるはずだ。今日はご苦労様。でも、こんなお転婆は今晩限りだからな。もう二度とかわいい妹をこんな男世帯のところに一人で連れてはいけないよ」
　と言ってくる。

　その言葉を聞いて、ちょっとまた涙が出そうになる。

　本当にそう。
　あんな行為、好きな人としかできない。
　でも、よかった。
　私はあんなに恋い焦がれていたひとと、例え一回でも、ああやって結ばれたではないか。

　なんて幸せなの。
　彼が誰かの代わりであっても、自分を求めて、美しいといってくれたことには変わりない。

　とても悲しい気持ちと、でも、なにかに救われたような気持ちが心の中を交差した。

　ただ、あとは平和に過ごしたい。
　時期をみて、修道院に入る意志を両親に告げようとディアナは思う。

　しかし、その計画も後にみるみるうちに、状況が変わってくるのであった。