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デートの巻 玖
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早速、船内に案内された。こ、これはすごい。わたしのアパートの部屋が何個、いや何十個入るのだろうか?
「あ、美代様。申し遅れましたが、デッキ内はハイヒールは出来れば危ないので、禁止となっております。ローヒールの靴をお履きのようですが、もし良かったら、こちらにもお着替えや違うタイプの靴などご用意しておりますので、どうぞ良かったら、お使いくださいませ」
給仕係の吉澤さんが丁寧に教えてくれる。吉澤さんは白髪交じりであるが、日焼けが眩しい生き生きした短髪の女性だった。
「ありがとうございます。至れり尽くせりで本当に恐縮してしまいます」
「いえいえ、感謝は蓮司会長に言ってくださいませ。すべてあの方からの指示ですから」
何故かウィンクまで吉澤さんにされてしまう。
船内は多分確認できる限り、五層ぐらいに分かれているようだ。部屋も何部屋あるのだろうか?キッチン、リビングルーム、しかも大画面テレビ付き、バー、マスターベッドルーム、五部屋以上もあるゲスト用ベッドルーム、クルー用リビングルーム、クルー用簡易キッチン、クルー用ベッドルーム、エンジンルームなど、ある意味一つのビルが水の上に浮いているようだ。そして、各部屋にシャワールームまで完備されている。うちのアパートよりでっかいよ。シャワールームが! 一番上には船長達がいる操縦室とデッキが半々となっていた。操縦室の後ろには半外のようなエリアにソファエリアまであった。
しかも、さっき話を聞いていたら、最新の水上ジェット機なども内臓されているので、夏などはマリンスポーツもこのエレーナから色々楽しめるとまで吉澤さんに説明を受けた。
どう考えてもやりすぎです!っと思ったが、そんなことを言ってしまったら、この働いている人達が職なしになって路頭に迷うことになってしまうので、冗談を本気にする蓮司会長の性格を考えて、言葉をのみこんだ。
「今日はまだ寒いから、リビングのテーブルで一緒に食べよう」
「は、はい」
「あ、美代。温かいコートも用意してあるから、一緒に船の出航見ないか?意外と面白いぞ」
蓮司に誘われて甲板に立つ。
「美代、こっちだ」
一応、出航の前に安全確認の為、船長の松永さんから一通りの安全事項を説明を受ける。甲板では救命胴衣は使用してほしいと頼まれる。
「それじゃー、美代を抱きしめても、固いじゃないか?」
蓮司が不満を言うと、
「リビングにお入りの際や、停泊しましたら、結構ですので、最初と最後だけは着用をお願いします」
と言われる。
え、松永さん、何気に出航後は、蓮司会長に私を抱きしめること推奨してませんか! っと美代はキャプテンに突っ込みたかったが、松永さんは、もちろん仕事の為、この場所からすぐに消える。
「あ、美代に言わないとな。悔しいが、一度海に出たら、すべての権限は松永が握る。彼が司令塔だ。だが、美代。お前だけは、俺の物だ。忘れるなよ」
ひぃーー。片頬がまだ腫れが完全に取れず、赤くなっている蓮司が微笑む。
「わ、わかりました。一応、今はキャプテン松永さんの事を聞きましょう!」
二人で救命胴衣をつけながら、一番上の甲板の端から船が繋がれている部分で作業をしている船員達を見る。チームワークだ。二人の船員が器用に桟橋を外し、船と桟橋を繋いでいたロープを解いていく。地上のマリーナの係が桟橋を回収しながら、ロープも回収する。なかなか手慣れ作業で、彼らがプロであることは一目瞭然だ。
汽笛がなる。出発だ。
蓮司がなにか毛布を持ってきて、二人が包まれるようにかぶせた。
「一度海に出れば、もっと寒くなるぞ。入れ、ここに。あ、あれはな、この船は個人用としては、かなり大きいから、一応、湾を出るまでああやって水先案内人がつく」
我々のボートの前に小さなボートが走っていた。
固い救命胴衣がもごもごしているが、蓮司が近いのは変わらない。
なんかもうすでに最高のデートを超えている。やばい。
だんだんと街の光が灯されていく。海の向こうの半島に夕日が沈み、海と空が一体となった、色のハーモニーが作り出されていた。
ピンク、水色、黄色、紫、薄グレーなどの色の洪水が空や海にばら撒かれたような景色だ。
「綺麗……」
「そうだな……」
だんだんと港や光が遠ざかる。二人の間に言葉はなかった。
「美代……こっち向いて」
「蓮司、会長」
振り向いた瞬間、顎を指先で上げられた。
ほとんど消えかかる夕日が蓮司の顔半分だけを照らしていた。
「美代…こんな時に会長だなんて、野暮じゃないか?」
夕日の色が何故か自分の心のように移り変わる。
「……そ、そんな」
「じゃー、言わないなら、言わせてみせるだけか?」
蓮司が美代の唇に軽くキスをする。
「か、会長!」
驚いた美代の顔が赤面する。
ニヤリと微笑んだ蓮司がさらに、美代の肩を抱き寄せ、唇を重ねる。
「ひぃーー!ちょっと、待ってください!」
「どれだけ待てばいいんだ? 今晩までか? 明日か? 来年? 再来年? お前は絶対に逃げる様な気がするんだ。俺から……」
なにか図星なことを言われて、目が泳いでしまう。
それが不味い仕草と分かったのは、すぐに後のことだった。
「あ、美代様。申し遅れましたが、デッキ内はハイヒールは出来れば危ないので、禁止となっております。ローヒールの靴をお履きのようですが、もし良かったら、こちらにもお着替えや違うタイプの靴などご用意しておりますので、どうぞ良かったら、お使いくださいませ」
給仕係の吉澤さんが丁寧に教えてくれる。吉澤さんは白髪交じりであるが、日焼けが眩しい生き生きした短髪の女性だった。
「ありがとうございます。至れり尽くせりで本当に恐縮してしまいます」
「いえいえ、感謝は蓮司会長に言ってくださいませ。すべてあの方からの指示ですから」
何故かウィンクまで吉澤さんにされてしまう。
船内は多分確認できる限り、五層ぐらいに分かれているようだ。部屋も何部屋あるのだろうか?キッチン、リビングルーム、しかも大画面テレビ付き、バー、マスターベッドルーム、五部屋以上もあるゲスト用ベッドルーム、クルー用リビングルーム、クルー用簡易キッチン、クルー用ベッドルーム、エンジンルームなど、ある意味一つのビルが水の上に浮いているようだ。そして、各部屋にシャワールームまで完備されている。うちのアパートよりでっかいよ。シャワールームが! 一番上には船長達がいる操縦室とデッキが半々となっていた。操縦室の後ろには半外のようなエリアにソファエリアまであった。
しかも、さっき話を聞いていたら、最新の水上ジェット機なども内臓されているので、夏などはマリンスポーツもこのエレーナから色々楽しめるとまで吉澤さんに説明を受けた。
どう考えてもやりすぎです!っと思ったが、そんなことを言ってしまったら、この働いている人達が職なしになって路頭に迷うことになってしまうので、冗談を本気にする蓮司会長の性格を考えて、言葉をのみこんだ。
「今日はまだ寒いから、リビングのテーブルで一緒に食べよう」
「は、はい」
「あ、美代。温かいコートも用意してあるから、一緒に船の出航見ないか?意外と面白いぞ」
蓮司に誘われて甲板に立つ。
「美代、こっちだ」
一応、出航の前に安全確認の為、船長の松永さんから一通りの安全事項を説明を受ける。甲板では救命胴衣は使用してほしいと頼まれる。
「それじゃー、美代を抱きしめても、固いじゃないか?」
蓮司が不満を言うと、
「リビングにお入りの際や、停泊しましたら、結構ですので、最初と最後だけは着用をお願いします」
と言われる。
え、松永さん、何気に出航後は、蓮司会長に私を抱きしめること推奨してませんか! っと美代はキャプテンに突っ込みたかったが、松永さんは、もちろん仕事の為、この場所からすぐに消える。
「あ、美代に言わないとな。悔しいが、一度海に出たら、すべての権限は松永が握る。彼が司令塔だ。だが、美代。お前だけは、俺の物だ。忘れるなよ」
ひぃーー。片頬がまだ腫れが完全に取れず、赤くなっている蓮司が微笑む。
「わ、わかりました。一応、今はキャプテン松永さんの事を聞きましょう!」
二人で救命胴衣をつけながら、一番上の甲板の端から船が繋がれている部分で作業をしている船員達を見る。チームワークだ。二人の船員が器用に桟橋を外し、船と桟橋を繋いでいたロープを解いていく。地上のマリーナの係が桟橋を回収しながら、ロープも回収する。なかなか手慣れ作業で、彼らがプロであることは一目瞭然だ。
汽笛がなる。出発だ。
蓮司がなにか毛布を持ってきて、二人が包まれるようにかぶせた。
「一度海に出れば、もっと寒くなるぞ。入れ、ここに。あ、あれはな、この船は個人用としては、かなり大きいから、一応、湾を出るまでああやって水先案内人がつく」
我々のボートの前に小さなボートが走っていた。
固い救命胴衣がもごもごしているが、蓮司が近いのは変わらない。
なんかもうすでに最高のデートを超えている。やばい。
だんだんと街の光が灯されていく。海の向こうの半島に夕日が沈み、海と空が一体となった、色のハーモニーが作り出されていた。
ピンク、水色、黄色、紫、薄グレーなどの色の洪水が空や海にばら撒かれたような景色だ。
「綺麗……」
「そうだな……」
だんだんと港や光が遠ざかる。二人の間に言葉はなかった。
「美代……こっち向いて」
「蓮司、会長」
振り向いた瞬間、顎を指先で上げられた。
ほとんど消えかかる夕日が蓮司の顔半分だけを照らしていた。
「美代…こんな時に会長だなんて、野暮じゃないか?」
夕日の色が何故か自分の心のように移り変わる。
「……そ、そんな」
「じゃー、言わないなら、言わせてみせるだけか?」
蓮司が美代の唇に軽くキスをする。
「か、会長!」
驚いた美代の顔が赤面する。
ニヤリと微笑んだ蓮司がさらに、美代の肩を抱き寄せ、唇を重ねる。
「ひぃーー!ちょっと、待ってください!」
「どれだけ待てばいいんだ? 今晩までか? 明日か? 来年? 再来年? お前は絶対に逃げる様な気がするんだ。俺から……」
なにか図星なことを言われて、目が泳いでしまう。
それが不味い仕草と分かったのは、すぐに後のことだった。
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