41 / 76
お付き合い編 ケヴィンとのデート
しおりを挟む「カナ、今日はありがとう。わたしと“デート”してくれて」
なぜかデートなのに仕事着の燕尾服をきたケヴィンが微笑みながら、わたしに話しかける。
二人で黒塗りの箱型馬車に乗っている。
お忍び用なのかわからないが、外見はあまり装飾感がない小ぶりな馬車であるが、内側は大層に豪華だ。 赤のベルベットのクッションとるオーク材に所々、金箔の装飾がなされた豪華な内装。ちょっとお姫さまが自分の執事と愛の逃避行に出た感じがする。
しかも、私の好みをおさえた黒の燕尾服なんです。ケヴィンったら、ありがとう。福眼。
どうやって、フェリスを巻いてきたのかなと疑問に思う。
なぜなら、デートの情報はなぜか王宮を駆け回り、ヴァン団長まで迫ってきたからだ。
一応、団長とのデートはオッケーしたけど、大丈夫だよね。
「ううん、そんな。全部決めてくれてありがとう。本当楽しみ」
窓から見える景色に目を奪われる。
石畳の道並みをじっとみながら、マーケットやら人々がカゴなどに買い物したり、子供たちが輪投げで遊んでいるのを横目で楽しむ。
これから行くところはケヴィンの実家に近い避暑地らしい。
どうやらケヴィンは貴族の出身だけれど、代々王家につかえる血筋で、ほぼ王宮に住み込みの生活を送っている。まあ、それはフェリスも同じだからね。王子だもんね。
「これから行くところは、この国の貴族達が避暑地としてよく訪れるところで、貴族達がセカンドハウスなどが建ち並ぶところです。山の麓に湖があって、とても綺麗なところです」
「へえーー、それは楽しみだね。」
「ただ、わたしはただのしがない貴族の身の上……貴女を楽しませるセカンドハウスがありません。申し訳ないです」
「え、そんなこと。気にしないで。フェリスじゃないんだから、やめようよ。そんな持ち物自慢」
ケヴィンが自分をじっと見ていた。
破顔した笑顔が可愛いと思ってしまう。
「ふふ、カナってやっぱり、面白い。持ち物自慢なんて」
ケヴィンの顔に明るさが戻る。
馬車はすでに林道を走っていた。
砂利道をそのまま馬車は進む。
まっすぐの田舎道だ。
春先のため、新緑が綺麗だ。
考えてみると、こっちの世界に来てからのほうが、自然を楽しめる体になっていた。
ゲーム三昧からゲームのなかに入ってしまったのだから……。
御者からはまったく私たちが見えない。
異界の世界でも、目に見える自然は日本と同じだ。
ちょっとただ緑の風景を見ているだけなのに、懐かしい気分になる。
そうだ。あんまり旅行とかこの王宮から出たことなかったなーと思っていると、目の間に座っている美形が私をじっと見ていると思いきや、視線をパッと外される。
さっきの会話から幾分か時間が経っていた。
もうすぐ着くのかなと思った。
ケヴィンったら、具合でも悪いのかと思う。
なぜなら、ケヴィンは急に目的地が近くになってくるにつれて無言になったからだ。
頬は桃色だし、手はぎゅっと前に握って自分の膝の上で固まっている。
「だ、大丈夫? なにか具合悪いの? もしかして、馬車苦手?」
乗り物酔いしているのかと心配して、声をかけると、ふっとため息をついたかと思うと、ちょっと微笑みが浮かぶ。
「カナ。貴女という人は……どれだけわたしは貴女に狂わされるのでしょうか?」
急にケヴィンが立ち上がり、そのふわっとした男性的な色香を匂わせて、わたしの隣に座る。
意味がわからないが、かれの色香にあてられる。
ああ、この匂い素敵。
彼に面している体の横が熱い。
「カナ、ちょっといいでしょうか」
ええっと言っているうちにケヴィンの男らしい片腕がわたしの肩に回される。
そして、もう一つの大きい白い手が、わたしの手を握る。
美しい長い黒髪の男が、熱情を潤わせた目線でわたしを見つめる。
よく忍はわたしのことを鈍感とか、腐女子とかいろいろバカにするけれど、
それだって、こんなわたしでも、これだけはわかる。
だって、
こんな
色っぽい視線。
胸がきゅんとしちゃう。
ケヴィンはわたしのことが好きなんだ。
最初はすごい鉄仮面、冷徹のケヴィンだったけど、意外にシャイで、言葉はストレートだ。
「カナ……。口付けしてもいいですか?」
揺れる馬車の中で、突然、上半身を引き寄せられて、黒髪がわたしの頬にかかる。
決して、強靭とまで言えなくても、細い体から引き締まった筋肉と何とも言えないほのかな色香が彼の黒の燕尾服から漂う。
彼の二つの指で顎をくいっと上げられる。
あ、これって。
女の子の憧れ、アゴくいじゃんと思った私であったが、その後は他の感覚が支配し、私を酔わせる。
あああ、ケヴィン……。
やさしく甘い彼の唇が私のを奪う。
まずは唇と唇だけの軽いキス。でも心臓はうるさいくらいに鳴っている。
彼の瞳が自分を射っている。
「……愛してる」
また蕩けるような顔と麻薬のような囁きで私を砕けさせる。
深く悩ましいほどのいやらしさで、ケヴィンは舌を私の口の中に入れ始めた。
絡みつく唾液をさらに舐め回すように彼の舌が激しく蹂躙する。
「はあ……あっ」
口から欲情と快感が混じった声を漏らしてしまう。
こんなに男性的な部分が潜めていたその瞳を見つめ返した。
彼の目がまるで野獣のように燃えているようだった。
もう気がついたら、後頭部に彼の手がガシッと抑えられ、もうキスされまくりだ。
「あああ、最初に会った日から、こうやってあなたにキスをしたかった」
壮絶な色気で、その瞳が私を悶絶へと導く。
この深いキスがとてつもなく永遠に続く。
「あ、それって……あ、だめ……そこ……そんな」
どこにそんな獰猛なものを隠しているのかわからないほど彼のキスは心も身体も震わせていく。
ああ、わたしの下腹部がジンジンしてきた。
ケヴィンの唇が白い糸をひきながら、私の唇を離れる。
ああ、わたしに明らかに欲情を向けている彼の目はとっても愛おしい。
そのねっとりとした舌をわたしの赤みをました頬、耳へと移り出す。
首を思いっきり吸われる。
あああ、いたっ
「……今日だけ、貴女を独り占めしたい」
ペロンとさっき強く吸ったところを舐め、今度は首元をどんどんさがってキスを重ねてくる。
ああ、彼の唇が胸の双方の上をなぞり始めた。
下半身がぞくぞくしだした。
もう完全に彼の思い通り状態だ。
デートのしょっぱなから!!!
こんな悶絶状態なんて!!
(まだまだ続きます)
0
お気に入りに追加
1,098
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる