腐女子 異界で悶絶する【改訂版】

逆ハーレム編 ３人目の男の決断

　

　深夜、皆が寝静まった後、シーツの中に包まってスヤスヤ寝ているカナを腕に抱きながら眠る忍の部屋を訪れる体格のいい男がいた。

　ノックをする前に、「どうぞ」と中から声がする。

　「そうか……決めたか」
　「……自分でもどうしてこうなったか、わからん。でも、あいつが俺の手の中に入るチャンスがあるのなら、やっぱり見逃すわけにはいかない。なさけないが、やっぱり俺はただの男だ。団長と名乗る己が情けない」
　「わたしは嬉しいよ。ヴァン。君がその気になってくれて。カナも喜ぶだろう」
　「！！！ 俺は……あいつが喜ぶかどうかはわからない。でも、この想いは……自分でもどうして良いかわからないほど……」

　「沸き起こるんだろう？腸はらわたから……」

　紫紺の瞳が冷たさと熱さを両方存在するかのように不思議な光り方をする。

　「ああ、そうだ。煮え繰り返りそうだ。いまあんたの腕に抱かれているそいつを見ているだけで、恐ろしいほどの嫉妬が湧き上がる」

　カナをじっと見ていた目を横にそらす。

　「ふふふ、わかった。ヴァン団長。君をカナを夫の候補に認めよう。これからどうなるかはまあ彼女次第だか……」

　忍がそっと柔らかな白いカナの手をシーツから出すと、その手をヴァンのほうに差し出す。

　「ヴァン、触れることを私が許す。ここに彼女に忠誠を誓え。そうすれば、私は一応、お前を認める」
　「……あんたに認められるとかはちょっと癪（しゃく）にさわるが……俺の腹はもう決まっている」

　ゆっくりと寝台の側の床に跪くヴァン。
　愛おしそうにカナの手を自分の手にとり、寝ているカナを見つめる。

　「カナ。お前を一生愛したい。他の男がいるのは気に入らんが、俺がお前の側にいたい。我が騎士としての命、男としての責務、おまえにすべて捧げる。我が姫。ここに忠誠を誓う」

　戦いをくぐりぬけて来た男の体からしか発せないような濃厚なフェロモンを出しながら、ゆっくりとカナの小さな手に口づけを落とす。

　「カナ。ああ……ぁ……愛している」
　「……」

　忍はその様子を無言で見守る。
　彼の想いはその表情から読み取れない。

　「それでは、またヴァン……明日。楽しみだね」

　氷の微笑の男が別れを告げた。