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第1章クローズβ版
無力
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そうか、僕はエヒメちゃんをダンジョンに残してきてしまったのか。
エヒメちゃんの泣き顔が頭から離れない。彼女は生きているのだろうか。いや、あの状況で助かるなんてできるハズもない。何もできなかった自分が憎い……。
ガチャッ
部屋のドアが開いた。
「エヒメちゃん!?」
「いや、違うよ。……大変だったみたいだな」
しかし、入ってきたのは、僕の兄の海幸彦だった。兄は僕に似てなくて太っていて、まだ20歳なのにおっさんっぽい顔をしている。だがかなり強い。国内でも5本指に入るほどの強さの海の大勇者だ。弱い僕とは比べ物にならない。似ているのは兎耳くらいだ。
「お前が血まみれで瞬間移動してきてすぐ医者を呼んで、通話でA姫の声が聞こえてたのを思い出して女王様に確認したら、あの黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)ダンジョンに行ってるって言うじゃねぇか。それですぐ救援隊を瞬間移動で送ったが救援隊は全滅、女王様はダンジョンに複数の邪神が居る可能性が高いとして、討伐の準備をしているから、A姫もすぐに救助される。俺も討伐隊に参加するが、お前はゆっくり寝て休んでいろ。王国最強の四天王も同行するからすぐ片がつくはずだ。じゃあ行って来る」
兄の海幸彦が部屋から出て行くと、後悔がせきを切った様に溢れ出し頭の中がグチャグチャになった。
あんな状況じゃエヒメちゃんはどう考えても助からない、今さら救助に行っても手遅れだ。僕を討伐隊に入れなかったのは僕が弱くて足手まといになるからだ。僕がもっと早くこの世界と向き合ってLvや技術を上げていれば、今こんな事にならずに済んだかもしれない……。
頬をとめどなく涙がつたい、嗚咽が止まらない。
僕が、現実逃避してゲームなんかしていたから……。
僕は手元にスマートホンが無いのに気付いた。
こんな時だけど、無いと落ち着かない。どこにあるんだ。
ベッドから降り、部屋をでてリビングに行くと、机にスマートホンが置かれていた。
僕は飛びつく様にスマホを手に取り、画面を起動させてパスワードを入力する。
ブーッブーッ
《パスワードが違います》
あれ?
スマホをよく見る。これは、僕のではなく兄、海幸彦のスマホだ。間違えて僕のスマホを持って行ってしまったのか……。
ゲームがしたい、僕が無力なのはゲームばかりしていたのが原因だけど、今は嫌な事ばかり考えてしまうからゲームをしてこの気持ちをどうにか紛らわしたい。ツクヨミさんにも会いたい。話がしたい……。
そんな風に自分に言い訳をして、前にたまたま見た兄のパスワードを打ち込み、ゲーム【天の岩戸ダンジョン!】をダウンロード開始した。
ダウンロードを待つ間イライラして情けなくて涙が次々と出てくる。早く終われよ。
ダウンロードが完了してゲームを起動する。
タイトル画面を押して気付いた。僕のスマホじゃないからプレイヤーデータが無い。
あなたのキャラクターを作ってくださいと、ゲーム説明キャラクターのカカシちゃんが指示をだしている。
仕方なく、前回と同じ自分のキャラクターを作った。《その名前のキャラクターは既に存在します》とでて、同じ名前をつけれなかったので、名前は【ヤマヒコ2】にした。
その後ゲーム説明を飛ばして、新規で貰ったダイヤ50個で10連ガチャをする。
画面に表示された、洞窟の入り口をふさぐ大岩、通称【天の岩戸】を指で横にスライドさせ、大岩が動いて中から10個の光の玉がでてきたので押す。
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
何でこんな時に限って運が良いんだよ……。
エヒメちゃんの泣き顔が頭から離れない。彼女は生きているのだろうか。いや、あの状況で助かるなんてできるハズもない。何もできなかった自分が憎い……。
ガチャッ
部屋のドアが開いた。
「エヒメちゃん!?」
「いや、違うよ。……大変だったみたいだな」
しかし、入ってきたのは、僕の兄の海幸彦だった。兄は僕に似てなくて太っていて、まだ20歳なのにおっさんっぽい顔をしている。だがかなり強い。国内でも5本指に入るほどの強さの海の大勇者だ。弱い僕とは比べ物にならない。似ているのは兎耳くらいだ。
「お前が血まみれで瞬間移動してきてすぐ医者を呼んで、通話でA姫の声が聞こえてたのを思い出して女王様に確認したら、あの黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)ダンジョンに行ってるって言うじゃねぇか。それですぐ救援隊を瞬間移動で送ったが救援隊は全滅、女王様はダンジョンに複数の邪神が居る可能性が高いとして、討伐の準備をしているから、A姫もすぐに救助される。俺も討伐隊に参加するが、お前はゆっくり寝て休んでいろ。王国最強の四天王も同行するからすぐ片がつくはずだ。じゃあ行って来る」
兄の海幸彦が部屋から出て行くと、後悔がせきを切った様に溢れ出し頭の中がグチャグチャになった。
あんな状況じゃエヒメちゃんはどう考えても助からない、今さら救助に行っても手遅れだ。僕を討伐隊に入れなかったのは僕が弱くて足手まといになるからだ。僕がもっと早くこの世界と向き合ってLvや技術を上げていれば、今こんな事にならずに済んだかもしれない……。
頬をとめどなく涙がつたい、嗚咽が止まらない。
僕が、現実逃避してゲームなんかしていたから……。
僕は手元にスマートホンが無いのに気付いた。
こんな時だけど、無いと落ち着かない。どこにあるんだ。
ベッドから降り、部屋をでてリビングに行くと、机にスマートホンが置かれていた。
僕は飛びつく様にスマホを手に取り、画面を起動させてパスワードを入力する。
ブーッブーッ
《パスワードが違います》
あれ?
スマホをよく見る。これは、僕のではなく兄、海幸彦のスマホだ。間違えて僕のスマホを持って行ってしまったのか……。
ゲームがしたい、僕が無力なのはゲームばかりしていたのが原因だけど、今は嫌な事ばかり考えてしまうからゲームをしてこの気持ちをどうにか紛らわしたい。ツクヨミさんにも会いたい。話がしたい……。
そんな風に自分に言い訳をして、前にたまたま見た兄のパスワードを打ち込み、ゲーム【天の岩戸ダンジョン!】をダウンロード開始した。
ダウンロードを待つ間イライラして情けなくて涙が次々と出てくる。早く終われよ。
ダウンロードが完了してゲームを起動する。
タイトル画面を押して気付いた。僕のスマホじゃないからプレイヤーデータが無い。
あなたのキャラクターを作ってくださいと、ゲーム説明キャラクターのカカシちゃんが指示をだしている。
仕方なく、前回と同じ自分のキャラクターを作った。《その名前のキャラクターは既に存在します》とでて、同じ名前をつけれなかったので、名前は【ヤマヒコ2】にした。
その後ゲーム説明を飛ばして、新規で貰ったダイヤ50個で10連ガチャをする。
画面に表示された、洞窟の入り口をふさぐ大岩、通称【天の岩戸】を指で横にスライドさせ、大岩が動いて中から10個の光の玉がでてきたので押す。
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
《激レア》天叢雲剣
何でこんな時に限って運が良いんだよ……。
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