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結論から言えば、わたしは魔法道具の勉強をなめていた、としか言いようがない。
なんだこれ。難しすぎる。
週に一度か二度、オクトール様の元へ行って勉強していたのだが、全く分からない。
魔法の勉強はある程度出来るし、そもそも制作陣の一人だったんだから何とかなる、と楽観視していた過去のわたしを殴りに行きたい。
冷静に考えたら難しい分野だと分かりそうなものなのに、何故大丈夫だとタカをくくっていたのか。
前世で家電の仕組みや作り方を説明できたか? 圧倒的に否である。
そもそも、入口ですら一般の学校では学ばない時点で察するべきだった。
全然分かんねえ……。
理系の勉強が嫌で、文系に逃げた前世の記憶を持つ人間が学ぶ分野ではない。
まあとりあえず魔法を使ってどうにかする魔法道具てことで! と簡単にご都合アイテムにしていたツケが今ここでまわってきた。理屈を考えて仕組みを作るとこんな風になるんだぁ……。
オクトール様に教えて貰うだけでなく、予習復習を家でしていたら、完全に自分の時間はなくなった。ライターが逃げたから後よろしく! と馬鹿みたいな短期間でベルデリーンルートを書いたときよりはまだ時間的余裕はあるものの、圧倒的に精神的余裕がない。学べば学ぶほど、勉強が進めば進むほど、自分が理解できていない部分や知識不足が浮彫になって、身についている気がしないのである。
自分の未熟さばかりが目ついて、嫌になる。人の目がなければ、勉強道具を全部放り投げて、ベッドの上でだだっこのように泣きわめきたいくらいの気分だ。
――それでも、わたし自身はもちろん、オクトール様の恥にならないようにと考えたら、ここで辞めるわけにはいかない。
何より、アインアルド王子をぎゃふんと言わせるためには、こんなところで止まっているわけにはいかない。
……と、根性論を持ち出したはいいものの、それで頭が良くなるかは全く別の話である。
今日も折角オクトール様に勉強を見て貰っているのに、全然テキストが進んでいない。
「……少し休憩するか?」
よっぽど険しい表情になってしまっていたのか、気を使うような顔でオクトール様がわたしに声をかけてくれる。
魅力的な話ではあるけれど、今ここで手を止めたら、今日はもう頑張れない気がする。
「……もうちょっとだけやる――りますわ」
お淑やかなお嬢様っぽい口調が崩れていく。本当に駄目なのかもしれない。
わたしは貴族令嬢を思い出す為に、座りながら、トントン、とつま先で床を叩いた。――うん、大丈夫。やれる。
わたしは気を切り替えて、テキストの問題へと戻った。
なんだこれ。難しすぎる。
週に一度か二度、オクトール様の元へ行って勉強していたのだが、全く分からない。
魔法の勉強はある程度出来るし、そもそも制作陣の一人だったんだから何とかなる、と楽観視していた過去のわたしを殴りに行きたい。
冷静に考えたら難しい分野だと分かりそうなものなのに、何故大丈夫だとタカをくくっていたのか。
前世で家電の仕組みや作り方を説明できたか? 圧倒的に否である。
そもそも、入口ですら一般の学校では学ばない時点で察するべきだった。
全然分かんねえ……。
理系の勉強が嫌で、文系に逃げた前世の記憶を持つ人間が学ぶ分野ではない。
まあとりあえず魔法を使ってどうにかする魔法道具てことで! と簡単にご都合アイテムにしていたツケが今ここでまわってきた。理屈を考えて仕組みを作るとこんな風になるんだぁ……。
オクトール様に教えて貰うだけでなく、予習復習を家でしていたら、完全に自分の時間はなくなった。ライターが逃げたから後よろしく! と馬鹿みたいな短期間でベルデリーンルートを書いたときよりはまだ時間的余裕はあるものの、圧倒的に精神的余裕がない。学べば学ぶほど、勉強が進めば進むほど、自分が理解できていない部分や知識不足が浮彫になって、身についている気がしないのである。
自分の未熟さばかりが目ついて、嫌になる。人の目がなければ、勉強道具を全部放り投げて、ベッドの上でだだっこのように泣きわめきたいくらいの気分だ。
――それでも、わたし自身はもちろん、オクトール様の恥にならないようにと考えたら、ここで辞めるわけにはいかない。
何より、アインアルド王子をぎゃふんと言わせるためには、こんなところで止まっているわけにはいかない。
……と、根性論を持ち出したはいいものの、それで頭が良くなるかは全く別の話である。
今日も折角オクトール様に勉強を見て貰っているのに、全然テキストが進んでいない。
「……少し休憩するか?」
よっぽど険しい表情になってしまっていたのか、気を使うような顔でオクトール様がわたしに声をかけてくれる。
魅力的な話ではあるけれど、今ここで手を止めたら、今日はもう頑張れない気がする。
「……もうちょっとだけやる――りますわ」
お淑やかなお嬢様っぽい口調が崩れていく。本当に駄目なのかもしれない。
わたしは貴族令嬢を思い出す為に、座りながら、トントン、とつま先で床を叩いた。――うん、大丈夫。やれる。
わたしは気を切り替えて、テキストの問題へと戻った。
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