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――結論から言えば、証拠は無事に受理され、調査が入ることとなった。
この一件に関わったのは、オアセマーレとリンゼガッドの人間だけでなく、当然、オアセマーレの同盟国にもいて、かなりの人数が捕まり、黒くて暗い部分が明るみに出ることとなった。
オアセマーレ王国だけでなく、複数の国が、国の代表足る女王が代替わりした、というニュースが、連日報道されている。
戦争なんて、裏で何が起きているのか、一般市民には知らされない。こうして表にでたのも、ほんの一部だけかもしれない。
それでも、戦争を煽っていた人間たちが、一斉に排除されたことで――オアセマーレ王国とリンゼガッド王国の終戦締結に向けて、一気に話が進むこととなった。現在は、終戦の条件に向けて擦りあわせを行っているところだが、対立はないという。
もちろん、両者とも二つ返事で条件を受け入れる、ということはしていないが、一番の条件が終戦をすること、という一点に関して、両者とも納得しているので、ギスギスした様子はない、と、会議に護衛として参加していたシオンハイトから教えてもらった。
「終戦が発表されるのも、時間の問題だろうね」
テーブルの上に、たくさんのお菓子を並べて、お茶をしながら、シオンハイトは言った。
連日、オアセマーレとリンゼガッドに行き来して、休む時間もなかなか取れないだろうシオンハイトを横に、どうしてわたしは、リンゼガッドの王城にある、わたしとシオンハイトの部屋のテーブルに並べられた、お菓子を前にしてソファに座っているんだろう……。
このもてなし、なんとなく、来たばかりの頃を思い出す。
あの頃は、シオンハイトを、周りを警戒してケーキ達に手をつけることはしなかったけど――いや、でも、改めて考えると、量が多すぎない? 仮にわたしが何も考えずにパクパク食べていたとしても、食べ切れない量だ。
「……全部、夢が叶いそうだね」
シオンハイトが、ぽつりと呟く。
結婚して、戦争を辞めさせようという、幼い頃の、わたしたちの約束。一緒に両国を仲良くさせる、というのは、これからだけれど、王女様――レギーナ王女が、女王となった今では、それも難しいことではないだろう。
「……ああ、でも、まだ、一つ残ってる」
わたしは思い出したように、声を上げた。
「花。ちゃんとしたもの、見に行こうね」
本物の花を見に行きたい。お花見とか、こちらでは存在する文化なのかな。
今回の一件で、お忍びも難しくなさそうだと思ったし。なにせ、一般市民にまぎれて誘拐されて、国を渡ってしばらくするまでバレなかったのだから。
流石に今、バタバタしているときに行くことは無理だと思うけど。
この一件に関わったのは、オアセマーレとリンゼガッドの人間だけでなく、当然、オアセマーレの同盟国にもいて、かなりの人数が捕まり、黒くて暗い部分が明るみに出ることとなった。
オアセマーレ王国だけでなく、複数の国が、国の代表足る女王が代替わりした、というニュースが、連日報道されている。
戦争なんて、裏で何が起きているのか、一般市民には知らされない。こうして表にでたのも、ほんの一部だけかもしれない。
それでも、戦争を煽っていた人間たちが、一斉に排除されたことで――オアセマーレ王国とリンゼガッド王国の終戦締結に向けて、一気に話が進むこととなった。現在は、終戦の条件に向けて擦りあわせを行っているところだが、対立はないという。
もちろん、両者とも二つ返事で条件を受け入れる、ということはしていないが、一番の条件が終戦をすること、という一点に関して、両者とも納得しているので、ギスギスした様子はない、と、会議に護衛として参加していたシオンハイトから教えてもらった。
「終戦が発表されるのも、時間の問題だろうね」
テーブルの上に、たくさんのお菓子を並べて、お茶をしながら、シオンハイトは言った。
連日、オアセマーレとリンゼガッドに行き来して、休む時間もなかなか取れないだろうシオンハイトを横に、どうしてわたしは、リンゼガッドの王城にある、わたしとシオンハイトの部屋のテーブルに並べられた、お菓子を前にしてソファに座っているんだろう……。
このもてなし、なんとなく、来たばかりの頃を思い出す。
あの頃は、シオンハイトを、周りを警戒してケーキ達に手をつけることはしなかったけど――いや、でも、改めて考えると、量が多すぎない? 仮にわたしが何も考えずにパクパク食べていたとしても、食べ切れない量だ。
「……全部、夢が叶いそうだね」
シオンハイトが、ぽつりと呟く。
結婚して、戦争を辞めさせようという、幼い頃の、わたしたちの約束。一緒に両国を仲良くさせる、というのは、これからだけれど、王女様――レギーナ王女が、女王となった今では、それも難しいことではないだろう。
「……ああ、でも、まだ、一つ残ってる」
わたしは思い出したように、声を上げた。
「花。ちゃんとしたもの、見に行こうね」
本物の花を見に行きたい。お花見とか、こちらでは存在する文化なのかな。
今回の一件で、お忍びも難しくなさそうだと思ったし。なにせ、一般市民にまぎれて誘拐されて、国を渡ってしばらくするまでバレなかったのだから。
流石に今、バタバタしているときに行くことは無理だと思うけど。
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