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 そうすれば、あんな檻のような場所で待機しなくても――いや、でも、時と場合によっては必要になるのかな。年齢によっては獣化したら理性より感情が勝るみたいだし。
 そのあたりは難しいよなあ……。
 それに、わたしの後任も欲しいところだけど、あれは獣人を差別し怖がっているわけじゃなくて、猛獣が怖いのが問題なんだし。

 わたしに出来ることはなんだろう、と考えていると――。

「あ、カインくんだ」

 わたしは思わずぽろっと声をこぼしてしまった。慌てて口を閉じる。独り言を聞かれるのはなんだか恥ずかしい。
 席同士が離れているし、他の席の人は、同席している人と雑談しているから、わたしの独り言は聞こえなかったかもしれないけど、すぐ後ろにいる護衛には聞こえたかも。

 まあ、でも、ここで余計に動揺するほうが恥ずかしいか、と、何でもない風を装って、わたしはステージに集中する。

 出てきたのはカインくんで、相手も第二騎士団の人だった。カインくんが「先輩」と呼びかけていたのを見かけたことがあるから、カインくんよりは第二騎士団の歴が長いんだろう。
 でも、やっぱり、わたしとしては、一緒に過ごす時間が長かったカインくんの方を応援したくなるというか。

 両者が礼をし、位置につき、掛け声と共に試合が始まる。カインくんの相手の方が体格はいいように見えるけれど、結構善戦しているようだ。

 わたしは剣術に心得があるわけじゃないから、優勢と劣勢など、戦況をしっかりみることは出来ないけど、少なくとも相手方の攻撃を受けるのに精一杯、という風には見えない。

 相手方が、思い切りカインくんへ剣を振りかぶる。その攻撃をなんとかしのいだカインくんだったが、上段から思い切り振り落とされた剣は重かったようで、少しよろめいている。
 相手方はその隙をついて、次の攻撃を――。

「あっ」

 ――相手方の剣を交わし、カインくんが攻撃をしかける。

 いけるか、と思ったけれど、相手方の剣は手から離れず、そのままカインくんはやられてしまった。純粋な力が足りなくて、剣を手から飛ばすまでに至らなかったようだ。

 もう少しだったのに……!

 でも、カインくんは悔しがる素振りを見せず、素早く立ち上がって終了の挨拶をしていた。
 その後、対戦相手と何か話しながら退場していった。その様子は、悔しがるカインくんとそれをなだめる先輩、という図よりも、互いに健闘をたたえ合う姿のように見えた。

 結構な善戦だったんだろう。少なくとも、ここまで勝ち上がってきたのであれば、中間くらいの成績にはなるだろうし。

 ここから叫ぶわけにもいかないので、わたしは心の中で、カインくんにねぎらいの言葉を送った。
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