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 わたしがルルメラ様に言い返したことが最初は受け入れられなかったのか、きょとんと目を丸くしていたが、だんだんと状況を飲み込めたのか、怒りに染まった表情に変わる。

「地味女の癖に――!」

 ついに姫ですらなくなった。

「貴女たち――ッ」

 ルルメラ様が何か言おうとした、そのとき。

「ルルメラ」

 彼女を呼び捨てにする声があった。
 第一王女を呼び捨てにした、この声は――!

 がたがたと、食堂にいた団員たちが席を立ち、一斉に敬礼をする。
 敬礼をした彼らの視線の先には――第一王子である、ローザス王子がいたのだから。

「ルルメラ、こんなところにいたのかい」

 王子、という言葉がふさわしいと誰もが納得するような、煌びやかな見た目をしていて、柔らかい物腰の第一王子。彼までもがこんな場所に来るなんて……。
 城内は彼の家の敷地内みたいなものだから、そりゃあ、どこにいたって罰せられることはないだろうけれど。

「フィオナから全部聞いたよ。ルルメラ、俺は、第一王女であるなら、思ったことを簡単に口にしていいのかどうかよく考えなさい、と日々教えていたと思うけれど――」

 ゆったりとした声音で、言い聞かせるようにローザス王子はルルメラ様に話しかけていたかと思うと――。

「それは兄の気のせいだったかな」

 ――咎めるような、強い口調に変わる。幼子を叱るような声音。ルルメラ様は、ぐっと言葉に詰まっていた。
 他人をいじめるのが好きな彼女ではあるが、兄のローザス王子とリアン王子は敬愛しているというし、その兄であるローザス王子からとがめられているとなると、反論しにくいのだろう。

「それに、こんな昼食どきにお邪魔して……騎士団の皆に迷惑だろう。ほら、帰るよ」

 ローザス王子の言葉に、ルルメラ様は椅子から立ち上がる。悔しそうにわたしを日と睨みしてから、ローザス王子の後を追う。わたしに謝ることはしないまま。まあ、期待なんかしていなかったけど。
 でも、おとなしく帰ってくれたことには助かった。ありがとうございます、ローザス王子、そして彼を呼んでくれたフィオナ様。

 扉が完全にしまり、少しして、ドッと食堂内がどよめいた。こんなこと、簡単に起きることじゃないから、みんな、緊張していたことだろう。

 ――……。

 わたしは、ざわざわとした食堂の中、アルディさんの服の裾を引っ張った。彼はすぐに振り返ってくれる。
 わたしは深呼吸を一つして――。

「どうして、あんなことを言ったんですか」

 ――彼を、問いただした。
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